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すばらしい世界を楽しむ  作者: ゆきつき
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3話 覚悟する

 結論から言う。全然逃げれない。というよりも、瞬殺だった。

 いつもと感覚が違うとわかってたはずだが、走ってる感覚がもう全く違う。

 それもそうだ。日本では180㎝ぐらいあったのに、今は100㎝ぐらいしかないはずだ。80㎝も違う。日本の俺、高身長じゃね?

 そりゃいつも通りに走ろうとしても走れない。姿勢を崩してもおかしくない。

 その時に、もうトラは背中を捕まえてた。こりゃダメだ。 

 とりあえず防御したいけど、どこに攻撃してくるかもわからないのにできない。できるはずがない。


 ……ああやばい。もう振りかぶってる。猫パンチならぬ、トラパンチがくる。狙いは顔なのか?顔に来い。そこに腕を持って行って、魔力をありったけ集める。うまくできないだろうけど。ほら、異世界主人公補正的なのでできるようになるかもしれないだろ。万が一顔以外が来ても対応できるように、腕とかは腹に添える。

 とりあえず、叫ぶか。びっくりして外すかもしれないし。


「うわぁあああ!……っ痛った!!」

「ニ゛?」


 全然攻撃外れてくれない。?いやでも、どちらかというとトラパンチはかすった感じだったか?

 いや、それでも結構深くまで来てるぞ。1㎝ぐらいはえぐられてるんじゃないか。いやこれは浅い傷って扱いになるのか?まあとにかく、日本にいた時じゃ絶対経験しないであろう出血量だぞ。

 よくは見えないが、トラの近くに俺の肉?(皮かもしれないが)と思われる物まで落ちてる。グロい。

 しかも、もう少し上に来てたら目をえぐられてたぞ。これに関しては、不幸中の幸いなのか?いや、そんなこと考えてる場合じゃない。トラはまだここにいる。

 これはシャレにならん。痛くて走れる気がしない。ついでに腰を抜かしてる。立てない。これはやばい。


「ニ゛ャア゛」


 どうしたんだ。急に苦しそうにしだした。わからん。

 ……っは!まさか特別な力が俺には秘められてたのか。可能性はある。じゃないと急に苦しみだした理由がわからん。つまりこれからは、俺TUEEEができるのか。でもどんなとんでも能力なんだ?動物を苦しませる程度の能力?弱くない?いやもしかしたら重力を弄ったり、空気濃度を弄ったりできるのかもしれ


「大丈夫か?叫び声が聞こえてきたけど」


 お父さんの声がすると、トラは逃げた。つまりトラは本能的に危険を感じたのか?とりあえず助かった。ほんとによかった。せっかくの異世界なんだ。どうせなら楽しみつくしたかったからな。

 けど俺の、俺TUEEEムーブができないので、やっぱりよくない。いやまだ可能性は残ってるから、生きてるし全然良い。


「おまえ、血でてるぞ。大丈夫なのか?」

「わからない。トラに引っかかれたんだ」

「おいおい、よくそれで無事だったな」

「無事じゃないだろ」

「いやトラに出会ったんだ。この辺にトラなんてほとんどいないんだぞ。もしかしたら魔物かもしれなかったしな。そんな中タイシ、お前は生き残ったんだ。普通なら死んでてもおかしくねえしな」


 そう考えると、本当に切り傷だけでよかったと思う。けど、これは痛すぎる。もう絶対こんな怪我はしない。そのぐらい強くなろう。そうじゃないと、楽しめるものも楽しめなくなる。それはもったいなすぎる。そしてあいつには絶対に借りを返す。じゃないと気が済まない。

 なんで動物にムキになってるのかはわからない。


「とりあえず家で治療するぞ。早く来い」

「ちょ、まって」


 今は無事を喜んでおこう。特訓とか強くなるとかは今は気にしない。きっと、妹も心配してるはずだ。いや、あいつならずっと寝てるか。そんな気がするわ。寝てるってのを忘れて、普通に大声出したじゃないか。恥ずかし。



__________




 とりあえず、朝を迎えた。濃すぎる1日だった。しかも、傷口も大した治療もできていないのも重なってめちゃくちゃ痛かった。

 そのせいで全然寝れなかった。まあ、だからと言って何もない。たまにオールすることもあったし。それのおかげで今も眠いとは思わない。傷はまだまだ痛いけど。いやまあ、あの恐怖のせいでなんかぐったりはしてるけど。

 それと、結局トラを追い払ったのはお父さんが弓を使ったからだ。助かったから文句なんてない。……俺に特別な力なんてなかったんや。

 朝食、妹のユズハは今怪我に気が付いたのかめちゃくちゃ心配してくれた。うれしいよ。怪我を心配してくれるのは。でも


「お兄ちゃん。どうしたんですか、その怪我は。昨日なにかあったんですか?」


 これはちょっと、なんというか、許せない。まあ、自分でもわかってたし、俺より1個下だからぐっすり眠っていてもおかしくないけど。あの時結構大きい声で叫んでた気がするんだが。それでも起きないってなんだよ。きっと大物になるな。絶対そうだよ。


「俺は何ともないよ」


 そもそも心配してるとも思えないけど、安心させるために頭を撫でる。


「くすぶったいです。えへへ」

「心配してくれてありがとな」

「えへへ」



______________




 とりあえず、特訓だな。魔力の扱い方。仮説だが、あのトラパンチ(仮)がかすっただけで済んだのは、魔力を集めれたからじゃないのか。あの場面でトラが意図的に外す理由もないし、ミスるのも考えずらい。まあじわじわといたぶる趣味のトラだったかもしれないけど、流石に野生の動物がそんな事は無いだろ。

 となると、やっぱりこれしかない気がする。違うかもしれないけど。いやでもあの時トラも困惑していた気がする。まあこれ以上考えても埒が明かない。


 つまり練習じゃできなかったのに、実戦でできたということになる。そこの差は何がある?緊張感か?なんとなくだが違う気がする。練習でも緊張感はあったはずだ。知らない力だしな。

 じゃあ何が違ったんだ。緊迫感か。ミスったら死ぬ状況で成功したんだ。これかもしれないな。でもこれは常にできることじゃないよな。結局振り出しだな。行き詰ったかな。

 ……いや待てよ。別に1人で考える必要なんかないじゃん。こうゆう時こそお父さんに聞いてみよう。





「は?そんなこと知らねえよ。自分の感覚でこう、ギュと集めて、バッて感じでやるもんだろ」


 何言ってるか急にわからなくなった。同じ言語使ってるよね?重要な場所は擬音でわからんし、なにより説明が雑だ。1行で説明がつくのかよ。そんなんで本当にできたのかよ。それだけでできたらこんなに苦労しないんだよ。

 くそ、本当にもうどうすればいいかわからん。


「そうだ、そこにある薪を割っといてくれ」

「わかったよ」


 いい感じの気分転換にはなるだろ。力が足りるかは知らんけど。5歳児に薪割ができるのかどうか、そんなのは考えない。







 30分ぐらいたっただろうか。まず斧が重い。とにかく重たい。やっぱり5歳児。力が無い。

 さらに、薪が思ってるように割れない。よくある画像みたいには全然割れない。そのせいか、効率がとにかく悪い。割れた数も片手でも数えられるぐらいしかない。そもそもこの斧、子供が使うサイズじゃないと思う。いやまあ、子供が使うサイズの斧なんて、まともに使えない物になるんだろうけどさ。

 このままだと、夕方までかかりそうだ。この時間も特訓に使いたかったが仕方ない。引き受けると、そう決めたのは俺だからな。ちゃんと最後までやるぞ。

 ……そうだ。これ自体を特訓にすればいいんだ。腕に魔力を集めればそれなりに楽になるかもしれない。しかも、お父さんは弓にも魔力を纏わせていた。できないって訳ではないはず。

 つまり、斧にも纏わせることはできるはずで、特訓にはちょうどいいじゃないか。つまりこれは、魔力を自然に流しながら、武器にも魔力を纏わさる訓練といっても過言ではない。いや過言か。

 そうとなれば、俄然やる気が出できた。しかし、魔力を自然に流す方法がわからん。とりあえずはイメージをしっかり作りながらやってみるか。






「ああ、わからん!」


 それからもう30分だろうか。

 体の動かし方はわかってきた気がするが、魔力の方が全く進展しない。自然と体の動かし方はできたんだけどな。無意識的に。まあ流石に、一時間程度も同じ作業してれば、それらしい動きは出来るようになる。

 まあ自分の体なんだし?自然と出来ちゃってもおかしくはないよね?だって自分の体なんだし。


 あれ、つまり魔力ももっと自然なものと思うものなのか?そうだよな。魔力だって体の一部なんだよな。

 つまり、今までは意識しすぎてたのかもしれない。めちゃくちゃ意識しながら歩こうとする感覚なのかもしれない。無意識のうちに、魔力は自分の力じゃないと思い込んでいたのか?

 イメージは大切だと思うが、それを意識しすぎたらダメなのか。これ、言うのはめっちゃ簡単だけど、やるのはとてつもなく難しいだろ。



 案の定、難しかった。けど、今までよりも、1か所に集まりやすくなった、気がする。けど、斧に纏わせるのは全くできない。

 当然のことかもしれない。自分でもちゃんと扱えていないのに、武器とかに纏わせれるわけがないか。

 とにかく、これでどうすればいいかがわかった。早く身に着けてトラに借りを返すんだ。

面白い、続きが気になると思って頂けたら幸いです。

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