20話 移動する
どういうわけか、さっきと同じだけ集まった。どういう神経してるんだろう。殺されたところを見せられたばかりなのだ。俺なら絶対にやりたくない。
『いろいろあって、1回戦をやり直すことになりましたー』
『これは推薦者の実力がちゃんとわかるかもしれないぞ』
全員もう集まっている。宣言通りなのか、ブーゼは武器を持っていない。なめられるのはいいが、ここまでくると逆に、他人事みたいに感じてきた。
実況は張り切っていた。始める時も、今までで一番勢いがあった気がする。
さっきと一緒で、全員が俺めがけてきた。一応、想像はできていた。
ただそれでも全員が来るとは思わなかった。少なからず俺に恐怖心があるはずだ。それなのに来ている。来るときは、少し戸惑っているようだった。もはや洗脳の域だろう。俺には考えられない。
俺は剣はうまくない。ダガーはこの学校でも一番うまいかもしれない。それぐらいには自信がある。だが、剣は本当にうまくない。
何故か筋力が付きにくく、魔力を纏わせなければまともに扱えない。そして攻撃の時には魔力がかなり動く。どんだけ意識しても、攻撃にも意識を割くので、どうしても剣をまともにふるえない。ただ魔力が多いから、それでも何とかなる。そのせいで剣の腕前は上がらなかった。言い訳ですね。すみません。
そういうわけで剣はあまりうまくない。普通より上手だが、達人とかではない。だから切り倒していく、なんてことはできない。相手がこちらに来て、それを確実に倒すことしかできない。全員を倒すことはできると思う。けど、この人数相手は簡単にはいかない。だから確実に相手を減らして、減ったら、こちらから動く。作戦はこれでいけるはずだ。
最初に飛び出してきたのは、ブーゼよりも魔力が少ない。弱い奴から攻めてきているのだろうか。
だいぶ楽だった。相手が弱かったのだろう。残りは、俺を含めて5人になった。ブーゼ含め、俺のクラスの奴が残っている。誰かまでは覚えていないが。
『一人で次々となぎ倒していくー!』
実況もヒートアップしていたのだろうか。かなり会場も沸いているはずだ。
俺はかなり魔力が残っていた。1割ぐらいしか使わなかっただろうか。1割は聞こえでは少ないが、俺は3割ぐらいまでしか扱えないから、これでもかなり多く使っているのかもしれない。
それに対して、ブーゼたちは戦っていない。完全に仲間?に任せていた。そのおかげで、魔力も全く減っていない。
しばらく膠着状態になった。俺にとっては、休憩になるからどうでもいいが、疲れている相手に動かないのはどうなのだろうか。
「来ないのか。こっちから行くぞ」
そういって、残っている中で一番魔力が少ない奴に向かていった。実際の実力はわからないが、とりあえずそこから狙った。
比べる対象がおかしいが、ユミトよりも剣の腕前は下だった。そのおかげで、あまり苦労せずに倒せた。
ブーゼ以外も同じようになった。ブーゼは腰を抜かしたのか、動く気配がない。どうすればいいかわからない。とりあえず話して諦めさせれれば一番いいか。
「どうだ。諦める気になったか」
「そんなわけないだろ」
声は少し震えていた。始まる前の威勢はどこに行ったのだか。
「じゃあ、かかってこいよ」
「わかってる!」
分かってないな。動く気配がしない。自分でも焦っているのだろうか。もう終わらせるか。
相手の前に立ち、首に剣を突き付ける。ブーゼは粋がって、武器を持っていない。だからこれで終わったも同然だ。
「どうだ。諦める気になったか」
「まだ俺は負けてないぞ」
どっからそのセリフが言えるのか。全く持って理解できない。普通なら殺される一歩手前の状態だ。そんな状態でよくこんなこと言えるな。これがさっきまでずっと戦っていたら、かっこいいセリフだっただろう。だがこいつは、動けないままの状態だ。かっこいいわけがない。ただただダサい。
もうめんどくさいので、気絶させる。
『まさに、圧倒的。1人で残りすべてを倒しました』
『さすが、推薦者ですねー。羨ましいですねー』
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そんなわけで、今日の試合は終わった。次の試合の出場者は、各試合の3位までになった。俺の試合は例外だった。俺1人だけだ。なんだかんだで俺一人に負けたのだ。仕方のないことかもしれない。それに約束があった。文句を言われても俺にはどうにもできない。
「タイシ、なんで2回もやってたんだよ」
「ちゃんと見てなかったのか」
「そうだぞ、ファオス。実況も言っていたじゃないか。1回戦のやり直しだ」
「そういう事じゃねえよ。なんで2回目をやったのかを聞いてるんだよ」
試合が起こった理由をすべて説明した。ブーゼにやったことも話した。
「あいつ、あれでまだ勝てると思ってたのかよ。俺でもさすがに諦めるぞ」
「それがが普通だろ」
「ブーゼは中等部の時はあんなのじゃなかったのだが」
とても気になることが聞こえた。
「ヘルト。その話詳しく」
「ん、ああ。ブーゼはプライドは高かったが、ここまでではなかった」
「……マジで?」
「ああ、本当だ。私も詳しくは知らないが、貴族である自分に対するプライドが非常に高かったのだ。市民に対しても、特に何もなかったのだ」
全く信じられない。ヘルトが嘘を言う理由もないだろうが、もし嘘じゃなかったら、何故こうなった。本当に洗脳なのか。それとも俺だからこうなのか。俺、何もしてないい。
次の試合は来月だ。試合に出れるのは、各試合から3人までだ。合計10人だ。1回目の試合は俺しか出ない。だから10人だ。
試合に出るのは、俺にヘルト、ファオスも出る。さらに、リナ、セレメ、さらにジェメリとツヴィリーも出る。ほとんどが知り合いだ。最後は知り合いと呼べるほどなのか分からないが。
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2週間たった。ほとんどの人が魔法を使えるようになっていた。使えないのが、俺とヘルト、リナだった。俺はまだどんな魔法かもわからない。リナとヘルトは一応使えるが、ほとんど使えていない。使いこなせていない。
「タイシ、まだできねえのかよ」
「しかたねえだろ。わからないんだから」
本当に言ったままの意味だ。まだわからないのだ。使い方もわからない。どんな魔法かもわからない。行き詰ってる状況だ。どうすればいいんだよ。
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「明後日から、合宿にいく」
突然だった。今日の授業が終わったら、そういわれた。
「場所は出発前に言う。準備が必要なものはしとくように」
どこ行くかわからないのに、準備とか言われても困る。
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場所を言われてもわからなかった。知らない住所を教えられて、ピンとくるはずがない。他の人もわかる人と、わからない人の2つに分かれた。知っている人の方が多いだろうか。
持っていくものは、直剣とダガー、あとは保存食だ。保存食は肉を干したものだ。おいしくない。噛み切るには、かなり顎がつかれる。それでも空腹を満たす貴重な食糧だろう。
グループに分かれて出発する。このグループは着いてからも一緒に行動する。そのために準備が必要なら、買い出しをしてから行く。集合は明日の12時だ。それまでにつけばいい。俺たちは夜には着くはずだ。買うものもないが、しばらくは町でぶらぶらしてから出発する。そこには半日ぐらいかかるらしい。ヘルトがそう言った。グループはヘルトとファオスだ。いつものメンバーだ。
「あれ、タイシ君じゃん」
「リナか。まだ行かないのか」
「もうすぐ行くところ。一緒にどう?」
「俺達ももうすぐ行くから、俺は別にいいけど」
「俺もいいぜ」
「私も問題ない」
こんなわけで、俺、ファオス、ヘルト、リナ、セレメ、ジェメリー、ツヴィリーの7人で行動になった。
一緒だからと言っても、結局は最初のメンバーでしゃべってた。俺とリナはちょくちょく喋っていたが、結局は男同士と喋るのが落ち着く。
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山道に入った。場所を聞いたが、わからなかった。ファオスもピンときてなかった。地名を言われても知らないので、聞いたところで意味がなかった。けどここはなんとなく見覚えがある。山道はどれも一緒なのかもしれないが、やっぱり見覚えがある気がした。
「どうしたんだ。何か悩んでるようだが」
「いや、なんとなく見覚えがある気がして」
「山道なんて、どれも似たようなものだろう」
「それもそうか」
気にし過ぎか。山道なんでどれも一緒か。
言われたのは、そこには小屋がある。そして、先生は先に行っているので、山の中の目印として使える。先生はかなり魔力があるから、そこを目指せばいい。
先生がいる場所には、ほかに2人の魔力があった。それも1人は先生より多い。先生より多いのは、俺の知ってる中では、ユミトとユウキ、そしてユズハだけだ。そして、ユミト達はいつも3人でいる。けど、ここにはムートがいない。そうなるとユズハになる。けどここは違う場所じゃないのか?
「本当に大丈夫なのか、タイシ」
「大丈夫なはずだ」
「それならいいのだが」
「おい、タイシ、ヘルト。家が見えたぞ」
「かなり歩いたな」
「そうだ、な、、」
「久しぶりだな、タイシ」
そこには先生はもちろん、お父さんがいた。そしてこの家は、見慣れる前に出て行った俺の家だ。うんなんで道を覚えてないのか、って質問には、一回しか通った事が無いからって答えるぞ、俺は。
面白い、続きが気になると思って頂けてら幸いです。




