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すばらしい世界を楽しむ  作者: ゆきつき
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1話 転生する

 カチャカチャ、カチャカチャ

 俺の部屋にはゲーム音が響いた。ヘッドホンをつけ周りの音もほとんど聞こえないが、いつの間にか夜だ。と言うよりも、真夜中だ。いいところだが、俺はまだ高校生。夜更かししすぎると、ただでさえ聞いていないような授業だが、寝てしまう。そうすると単位が取れない。

 なので、寝ることにする。部活を抜けてからは、ずっとこの調子だ。中学ではそこそこの成績をとれていたが、高校で部活もうまくいかず、勉強もずるずると成績が落ちた。

 自分でもこの生活はダメだとわかっていても、勉強も、運動もやる気が出ず、結局こうなってしまう。まあ現実逃避のゲームを勉強もせずにこんな時間までしてるんだ。そりゃ馬鹿になっても仕方ない。

 もうこんなこと考えても無駄だと思い、寝ることにした。


 ……そういえば、カギ閉めたっけ?まあいっか。盗られるような物なんてないしな。





_________________





「……、おい、起きろ」

「ん、 何?……んんんんんんんん??」


 あれ?誰の声?お父さんだよな。いや俺は一人暮らしのはずだ。? 一人暮らし、いや、妹とお父さんと一緒だったはず。

 あれ、おかしい。頭がこんがらがる。何と言うか、記憶が混ざり合ってると言うか。

 そうだ。俺は昨日ゲームをしていた。いやまあ、毎日してたけどね。とりあえず部屋を見ても、それらしき機械がない。それどころか、昨日いた部屋じゃない。

 いや、いつもいるはずだ。ん?どうゆうことだ。記憶が食い違っている。昨日まで、ゲームをしていた記憶と、ずっとここで暮らしていた記憶がある。

 でも、今いるのは明らかに後者の記憶で、俺がゲームをしていた部屋ではない。つまりあれか、転生したのか?ありえないだろ、現実的に考えれば。でもそうでもないとこの状況が理解できない。いや、転生したって言われても信じれないけど。いや、でも


「いいから早くこい、ご飯冷めるぞ。」


 とりあえず考えるのは後だ。これ以上待たせたら悪い。なんとなくそんな気がした。早くいこう。ご飯があるから、それを食べてから考えよう。


「お前、何かあったのか?叫んでたけど」

「……いや、なんでもない」

「? そうか。まあいいけど」



_______________



 とりあえず、落ち着いた。いや、落ち着くには大分処理することがあったけど、とにかく落ち着いたと自分を騙す。

 感覚的に3、4時間はたった。時計が無いから正確な時間はわからない。うん、太陽の位置で正確な時間を日本人に求めるのは間違ってる。まあこっちでの生活の記憶も多少なりともあるから、全くわからないって訳でも無いけど。


 まず、この体のことだ。まだ5歳。マジで意味が分からない。普通転生って、赤ちゃんか、自分の体がそのままだろ。そもそも普通もなにもないけど。アニメとかだど、だいだいそんな感じだろ。じゃないと、俺みたいに記憶が食い違って発狂をしてもおかしくないぞ。てかなんで俺はこの程度の発狂で済んだんだ?言葉通りに発して狂う事はほとんどなかったし。


 そうそう、俺自身の事だよ。黒髪黒目で、名前はタイシ。日本っぽい名前だけど、苗字はない。苗字があるのは貴族や、一部の裕福層だそうだ。まあ苗字とは言わないそうな。外国的な、ファミリーネームって方が正しい感じがする。

 それに、この世界はゲームや機械がなく、魔力や魔法があるそうだ。魔力ってなんだよ、と思ったが、それ以上はわからなかった。多分だが、ゲームのMPみたいなものだと思う。魔力を使って魔法を使うのだから、きっとあっていると思う。

 ほかにも、話し方は同じだが、書きが違ったり。お金の単位は銅貨、銀貨、金貨みたいな感じだ。それぞれの価値の違いは、ちゃんとは分からないけど。金貨が一番上だそうだ。まあ金が一番高価だから、そういう感じの値段設定だと思うけど。

 さらに、紙が貴重だそうだ。羊皮紙が主流で、まだまだ粘土板も使われてるとかなんとか。紙はそれこそ高級志向の貴族が紙を使うそうだ。こいつ、5歳のくせに、物知りじゃないか?俺が5歳の時は読み書きもちゃんとできるか怪しかったのに、こいつはもうできていた。いや、正確には俺になるのか?褒めてもなにもでないぞ?え、褒めたのは俺じゃない。すみません。




 そんなこんなで、異世界生活が始まった。一応は落ち着いたが、まだ情報が少ない。いや、結構多かったが、この世界の常識は、ほとんどわからなかった。ここが町から遠い山の中というのはわかった。

 というより、情報がなくても、周りは木が生い茂っているし、町特有のガヤガヤした感じが全くしない。だからまあ、町から遠いってのはわかる。町があれば、もっと人の活気と言うか、そういったのが感じ取れると思うし。

 さらに、少し奥のほうでは動物が見えた。普通に怖い。野生の動物を見るのは、うん、初めてだし。動物園の動物は野生の動物判定じゃないだろ?

 で、初の野生動物ががイノシシなので、もう本当に怖い。高校生がそんなんでビビるなって?出会ったらわかるから。この体は5歳児で、逃げ足も戦闘力もないから。仕方ないだろ。まあ幼い体だからって理由が無くても、多分びっくりして腰抜かしただろうけど。


「おい、タイシ。何ビビってんだよ、イノシシぐらいで。そんなんじゃ魔物も倒せるようにはなれねえぞ」


 お父さんが話しかけてきた。ビビってるときに、後ろから声を掛けられるのは、心臓に悪い。後ろからわっ、ってされるぐらいびっくりした。

 っと、今はまだ5歳。話したりするときもそれっぽく、


「しょうがないだろ。見たことないんだから」

「そりゃそうだ」

「てか、魔物ってなんなの?」


 聞き流しそうだったが、魔物がいるらしい。しかも聞いた感じでは、イノシシより恐ろしいか、強いんだろう。……本当にそんなの倒せるのか?


「魔物は普通の動物より魔力が多くて、凶暴な性格な生物だ。そして、身体能力がやたら高い。動物の見た目のやつもいたら、ヒト型のもいるぞ。」

「魔力が多いと、どう違うの?」

「ああ、まだ教えてなかったな。魔力をうまく使えれば身体能力が上がるんだ。だから生半可な攻撃じゃあ倒せない。まあ、俺たちもうまく使えば、同じことができる。というより、魔物より、俺たちのほうがうまく使える。俺たち人間は知能がある。が、魔物はない。攻撃をするなら、防御は捨てる。防御するなら、攻撃はしない、みたいな単調なことしかできない。たまに知能があるやつもいるが、所詮俺達の劣化だ。ただの真似事に過ぎないさ。まあその単調な攻撃でも一発で殺すほどの威力がある奴もいるけど」


 そんな最後だけ小声で言っても、横にいるから聞こえるよ。なんだよ、身体能力が高く、知能もある魔物とか、聞いてるだけだと絶対勝てないじゃん。

 そして最後の奴、メッチャ自分に言い聞かせてる風なんだけど。


「そうだ。忘れるところだった。狩りにいくぞ」

「え?」

「だから狩りにいくぞ。もう5歳だしな」


 もう5歳ってなんだよ。普通はまだ5歳だろ。普通は。いや普通って何?


「まだ5歳だろ、って思ってんだろ。俺も5歳ぐらいから狩りに行ったし、魔力の使い方を覚えたぞ」


 自分がされたようにすればいいわけじゃないぞ、子育てってのは。保護者どころか大人にすらなってない、子供の意見。

 まあ、魔力の使い方とか言う、気になることも言ってたけど。狩りは関係ないだろ。普通に教えてくれてもいいじゃん。


「とりあえず行くぞ。そこで、色々教えるから」


 拒否権はなさそうだったので、とりあえずついていく。ただ、襲われた訳でも無いのにビビっていた俺に狩りなんてできるのだろうか。






 移動している途中に色々おしえてもらった。

 まず、基本的に食料はこの山で取っているそうだ。なので魚はほとんどない。魚は食べないのか聞いたら、めちゃくちゃ馬鹿にされて笑われた。聞いただけなのに。川があるけど、臭いがキツいからあまり食べないそうだ。川魚って結構臭いけどさ?そんな理由で食べないって、良いの?まあ大丈夫だったから、そのままだったんだろうけど。

 次に、近くに貴族の屋敷があるのだそうだ。大きさはとにかく大きいとだけ教えてくれた。この山はその貴族の領地だが、環境も悪く人が寄ってこないだとか。その貴族も別の仕事で滅多にここに来ないと。

 そして、お父さんとその貴族の人は仲がいいそうだ。名前も聞いてみたが、横文字が多く、とても1回聞いただけでは覚えれなかった。多分だけど、これがデフォだから慣れないとなぁ。

 そんな話をしていると、


「ここだな」


 とか言った。見た感じでは特に動物の巣穴らしい場所もなく、ただただ木が生い茂ってるようにしか思えない。専門家の方々の意見からしたら別なのかもしれないけど、言っても俺は初心者だ。わかるはずない。


「なんでここなの?」

「ここから少し離れた場所に動物が群がってるんだよ。魔力をうまく使えると、身体能力の向上だけじゃなく、索敵や武器にも纏わせることもできる。そうだな、見てろよ」


 そう言って、弓を構えた。木に向かって。意味が分からないので、とりあえず見ることにした。


「まずは普通にやるぞ」


 バシュ。

 風を切る音が聞こえたが、矢は何とか目で追えた。ほとんど残像を追うみたいな感じだったけど。まあこれでもゲーム大好きっ子だから、なんとか目で追えた。

 木を見ると、矢が刺さっている。それ以上もそれ以下でもない。ただ刺さってる。


「次は魔力を纏わせてやるぞ」


 そう言うと、雰囲気が変わった気がした。緊張感が増した感じだ。

 弓を構えた時、普通に構えた時はしなかった音が聞こえた。なんというか、弓が今にも折れそうな音がしていた。

 矢を放した瞬間、バギバギっと木のほうから聞こえた。全く目で追えなかった。

 木をみると、矢が刺さった場所がだいぶえぐれていた。当たった時を想像して気分が悪くなった。絶対これ腕が吹き飛ぶぞ。考えなきゃよかった。


「わかったか。これが魔力を纏うかの違いだ。まあ、今回はちょっと込めすぎたけど。魔力をうまく使えるようになれば、弱い魔物なら大した策や人数がいなくても倒せるようになる。この辺にも出る時があるから、早めに身につけろよ。まあ数年に一回出るかどうかだが。そして何より、狩りにも役に立つ」


 さらっと魔物が出る宣言されたんだけど。狩りに役立つってのがおまけにきこえるよ。まあ、死にたくないし、やるけども。


「とりあえず、これくらいはできるようになれよ。威力は落ちてもいいから。じゃないと動物相手でも死ぬからな」


 絶対あんな威力は出せない。

 でも、死にたくないし、死ぬ気でやろう。…あれ、矛盾してね?

面白い、続きが気になると思って頂けたら幸いです。

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