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【短編】

猫と段ボールと傘





河川敷、子猫が段ボールの中で、座っている。



降り出した雨は容赦なく子猫の体温を下げる。



そこに一人の男がやってきた。



男は持っていた傘を子猫に雨がかからないように置いた。



男は去った。



子猫は、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫が段ボールの中で、座っている。



雨は傘に弾かれて子猫にはかからない。



そこに一人の男が小走りにやってきた。



男は傘を見つけると、これは運が良いと手に取り、立ち去った。



子猫に再び雨がかかる。



子猫は、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫が段ボールの中で、座っている。



雨は止んだようだ。



子猫はびしょ濡れで震えている。



そこに一人の女がやってきた。



女は子猫を見つけると哀れに思い、首に巻いたマフラーを子猫にかけてやった。



「ばいばい、ねこちゃん。いい人に拾われるといいわね」



子猫は、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫が段ボールの中で、眠っている。



子猫はマフラーを抱きしめるようにして、暖を取っている。



そこに一人の女が小走りでやってきた。



女は子猫の持つマフラーを見つけると、それを取り上げる。



「これはとても高級なマフラーよ。あなたには似合わないわね」



子猫は、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫が段ボールの中で、眠っている。



子猫は寒さにガタガタと身を震わせていた。



そこに一人のオカマがやってきた。



オカマは着ていたカシミアのコートを地面に置くと、子猫をそこに寝かせた。



そして、代わりに段ボールを脇に抱えるとその場を去った。



子猫は、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫がカシミアのコートの上に包まって、眠っている。



子猫はスヤスヤと気持ちよさそうだ。



そこに一人のオカマが小走りにやってきた。



オカマは子猫からカシミアのコートを取り上げる。



そして、替わりに3万円を子猫の傍に置いて、その場を去った。



子猫はニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫がただその場に座り込んでいる。



子猫の傍には紙切れが3枚転がっているだけだ。



そこに一組の男女がやってきた。



男女は子猫を見かけると嬉しそうに手を振った。



「まだここにいたんだね。僕は君に傘を差してあげたんだよ。覚えてる?」男が言った。



「まだここにいたのね。私は君にマフラーをあげたのよ。覚えてる?」女が言った。



男女は地面に転がった紙切れを見つけると喜んでそれを手に取った。



「なんて優しい子猫だろう。お礼にお金をくれるだなんて」男が言った。



「なんて優しい子猫でしょう。ありがたく貰ってあげるわね」女が言った。



男女は去っていった。



子猫は悲しげに、ニャーと一声鳴いた。











河川敷、子猫がただその場に座り込んでいる。



子猫にはもう何もなかった。段ボールさえ。



そこに一組の男女が小走りでやってきた。



男女は子猫を見かけると残念そうにため息をついた。



「やっぱりまだいやがった。誰かに拾われてたらよかったのに」男が言った。



「やっぱりまだいたのね。いい加減誰かに拾われなさいよ」女が言った。



男は子猫を拾い上げると、胸に抱いた。



女は動物病院に電話をかけた。



「さっきは悪かったな。傘を取っちまって」男が言った。



「さっきはごめんね。マフラー取っちゃって」女が言った。



男女と子猫は河川敷を後にしようとしている。




子猫は嬉し気に、ニャーーと一声鳴いた。






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