#23 隠れ村
「現在、モン・フェイロン山の東20キロを速力300で航行中!」
訓練を終えて帰投中の駆逐艦2680号艦。1か月前とは異なり、今度は山地からオルバーニュ軍港に向かっている。
前回はイカの化け物と戦う羽目になった。今度は山からのアプローチだ。しかも高度4500。さすがにこんな場所で、あんな巨大なモンスターに出会うことはないだろう。
目の前には、標高3600メートルのモン・フェイロン山が見える。オラーフ王国で3番目に高い山で、比較的平地が多い王都から最もよく見える山である。
もう秋から冬になったばかりの季節、山頂には雪がかかっている。山の周囲は少し雲が多い。
その雲を突っ切ると、軍港までもうすぐだ。駆逐艦2680号艦は順調に航行中。あと20分ほどで、1週間ぶりの地上に戻れる。
モン・フェイロン山を越えたので、着陸態勢に入るため駆逐艦が高度を下げ、雲に潜ろうとした、その時だった。
突然、レーダー担当が叫ぶ。
「レーダーに感!進路上に飛行物体!距離5000メートル!至近です!」
「ニアミスか!相手はなんだ、民間機か!?」
「応答なし!識別信号なし!軍用機でもありません!正体不明!このままでは衝突します!」
「両舷減速!赤20!回避運動!面舵いっぱい!」
駆逐艦の進路上、突如正体不明の飛行物体が現れた。相手は雲の中。姿は見えない。
艦長が回避を指示する。艦橋内には、駆逐艦が逆噴射をする音が響く。衝突回避は右に回頭するのがルールであるため、ルールに従って回避運動をする本艦。艦首が右に向き始める。
「飛行物体、さらに接近!本艦左側を通過します!」
ついに正体不明機が迫ってきた。艦橋内の緊張が高まる。
窓の外に、その飛行物体が見えた。
我々は、その姿に驚愕する。
幅は30メートルほど、黒い鱗に覆われた身体、真っ黒な羽根、そして長く鋭利な尻尾。
鋭い目に大きな口、長い首を持つその姿を持つそれを、我々はこう呼んでいる。
「ドラゴン」と。
モンスターあふれるこの星にあって、その姿を見たものがほとんどいないとされる伝説のモンスターであるドラゴンに、我々は遭遇してしまった。
前回のクラーケンとは違う何かを感じる。強大な存在感、いや、圧倒的威圧感というべきか、そういうものをほんの一瞬すれ違っただけで感じた。
「目標、レーダーより消滅……進路クリア……」
どういうわけか、すれ違った直後にドラゴンをロストした。我が艦の高性能レーダーをかいくぐって、そのドラゴンはいずこかに消えてしまった。
その翌日。
「すまない。こんな任務を頼んでしまって。」
「いえ、光栄です。私もそのドラゴンを直接見たいと思ってますし。」
私は昨日ニヤミスしたドラゴン探索のため、哨戒機に乗って飛んでいる。操縦はマリアンヌ中尉、後席にはレーダー担当のブルクハルト少尉、そしてジャンヌが乗っている。いつもの3人の居候達は、司令部にて留守番だ。
ジャンヌを乗せたのは、モンスター関連の知識が豊富だからだ。今回の探索は、この手の知識を少しでも多く持つ者が同行しないと無理だと判断した。それほどまでに、ドラゴンに関する情報は少ない。
モンスター退治専門の騎士団を持つジャンヌといえども、持っているドラゴンの知識は少ない。オラーフ王国開闢以来350年、その間にドラゴン遭遇の記録はたったの3つ。いずれも、このモン・フェイロン山の周辺で目撃されている。
ドラゴンが現れるのは、天変地異や大戦さの直後だという。人界が乱れると、ドラゴンが目覚めると言われている。
その記録の中には、ドラゴンと実際に会い、会話した者がいるとされている。今から230年前、当時この山の向こうはオラーフ王国ではなく、別の国家が存在した。その名も、ポントロワール王国。当時オラーフ王国と対等に渡り合った強大な王国だ。
そのポントロワール王国とオラーフ王国は、ちょうどこのモン・フェイロン山の付近で衝突する。
当初はポントロワール王国が優勢だった。山を越えて攻めて来たオラーフ王国12万の軍勢を、15万で迎え撃ったポントロワール王国軍。敗走するオラーフ王国軍を追って、ポントロワール軍はこのモン・フェイロン山を越えて追撃をする。
が、それがオラーフ王国軍の作戦だった。山を越えて、補給線が伸びきったところを背後から攻め、ポントロワール軍は壊滅する。主力軍を失ったポントロワール王国はあっという間に王都を攻められ、ついに滅亡した。今、ポントロワール王国という国は存在しない。
ドラゴンが現れたのは、その直後のこと。ポントロワールの残党狩りをしていたオラーフ王国の将軍が、ドラゴンに遭遇する。
その時、ドラゴンが将軍に向かって言ったそうだ。
『この山は我が縄張り。近づくものには、容赦はしない』と。
以来230年、オラーフ王国はモン・フェイロン山への入山をいまだに禁じている。
これが、ドラゴンとの遭遇で、ドラゴンが唯一発せられた言葉とされている。
あとの2回は、天変地異の後のこと。王都を揺るがす大地震の後、モン・フェイロン山の大噴火ののちに現れたと言われているが、この時はただ空を舞うドラゴンの姿が目撃されただけだそうだ。
「ふーん、ドラゴンっていうのは基本的に人と話さないんだな。」
「そうなんですよね。なんででしょうね。恥ずかしがり屋なんでしょうか?」
いや、恥ずかしがり屋すぎるだろう。350年の歴史の中で、人前に現れたのはたったの3回。今回でようやく4回目だ。
ところで、ドラゴンの出現には天変地異や大きな戦さがトリガーになっていると言っていたが、ここ最近王国周辺で天変地異や戦さなど起こったか?ああ、考えてみれば我々がここに現れたことが、そもそも天変地異のようなものだ。この半年で、オラーフ王国は大きく変わった。我々が4回目を誘発したのかもしれないな。
王国の中でも口伝の伝説として語り継がれているドラゴン目撃記だが、私はこの目で見た。映像も残っているし、レーダーの記録にもはっきりと残されている。単なる伝説などではない。
ということは、この広大な山のどこかにあの黒いドラゴンが今も潜んでいるはずだ。なんとかしてそいつを見つけ出したい。特に深い理由はないが、あの日ドラゴンの姿を目にして以来、なぜか私はドラゴンとの再会にこだわった。
上空からドラゴンのいそうな場所を探すマリアンヌ中尉操縦の哨戒機の乗員達。
「この辺りなんですね。」
「ああ、モン・フェイロン山の山頂から南西800メートルの地点。昨日は雲がかかっていて、突然目の前に飛び出してきたんだ。」
ジャンヌに昨日のドラゴンとのニアミスした時の映像を見せながら、私はその時の様子を話す。
この星始まって以来、初めて映像で捉えられたドラゴンの姿だ。なお、オラーフ王国以外にも、ドラゴンの伝承というのはあるらしい。
「私が聞いたことがあるのは、ここから北にあるルージャンブルグ公国の話ですね。今から70年くらい前に現れたらしいですよ。」
「へえ、比較的最近じゃないか。」
「その時現れたドラゴンも、真っ黒で大きな身体をしてて、南に向かって飛んで行ったと言われてます。」
「そうなのか?じゃあもしかして、我々が見たドラゴンと同一の……いや、でも70年も前だよな。」
「ドラゴンは数千年、数万年は生きると申します。そんなドラゴンから見れば、70年前なんてつい先週くらいの感覚ですよ、きっと。」
そんなに長く生きると言われたところで、あまり信用できないなぁ……オラーフ王国に歴史でさえ350年。それ以前の歴史をたどったところで、せいぜい1千年ほどの記録しかない。その程度ほどの歴史しかない人類に、ドラゴンの寿命は数千年だと言われても根拠に乏しい。
しかし、数が恐ろしく少ないのは確かだ。あれだけ大きな生命体が、我々の管制塔や駆逐艦のレーダーに引っかからないわけがない。だが、これまで未確認の飛行物体が確認されたのは3回。1つ目は昨日のドラゴン遭遇時のもの、2つ目は先日のあの敵の偵察艦のもの、残りの一つは不明だ。
生命体である以上、この地上のどこかに潜んでいる。あれだけ大きな体だ、ドラゴンそのものか、その巣穴がすぐに見つかることだろう。そう思って上空を飛んでいた。
が、それが全く見つからない。モン・フェイロン山の中腹から上は草木がほとんど生えていない。岩肌がむき出しだというのに、それらしい場所がまるでないのである。
まあ、いくらドラゴンとはいえ、岩しかない場所に住むわけがないか。いるとすれば、その麓の森林の中だろう。
哨戒機を森林の上空に向ける。低空を飛行し、木々の間からドラゴンの形跡をくまなく探した。
それにしても、この辺りの木々は大きくて高い。少なくとも数百年は続く森で、度々起こるモン・フェイロン山の噴火による溶岩流や火砕流からも逃れてきたらしい。おかげで、深く鬱蒼とした森が広がっている。
こんな木々に囲まれては、ドラゴンの巣どころか、地面を見る事も出来ない。しばらく上空から森を探索するが、この広大な森林からは何も見つからない。
が、一箇所だけ、森のただ中に木々がない場所が見えた。もしかしたら、あれがドラゴンの住処かもしれない。そう考えた我々は、早速その場所に飛ぶ。
だが、そこは明らかにドラゴンの住処ではなかった。木々のない狭い平地に、集落らしきものが見える。そこには木造の小さな家がいくつもあり、畑も所狭しと作られている。
こんな場所に人が住んでいるのか?だが、森を見る限り、外に繋がる道が確認できない。森林の中にポツンと存在する、陸の孤島のような場所だ。
「なあ、ジャンヌ。こんなところに、王国の村があるのか?」
「さあ……聞いたことありませんね。だいたいここはあの将軍が足を踏み入れるなとドラゴンに警告されて以来、誰も踏み込んだことのない場所。集落なんて、あろうはずがありません。」
「では、この下に広がるものはなんだ!?」
「ううーん……なんでしょう?」
ジャンヌも知らない村のようだ。しかも、230年まえより禁断の場所として踏み入れた者のいないはずの地。モン・フェイロン山近くを通る街道からも大きく外れている。だがどう見てもそこには、明らかに人が暮らす痕跡がある。
ドラゴンのこともあるが、この集落も気になる。私はその村を調査することにした。
哨戒機は、その小さな森のただ中にある集落へと降りる。中央付近が広場となっているため、そこに着陸した。
「中尉と少尉は機内で待機。ジャンヌと私だけで行く。」
「しかし閣下。大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。いざという時には、銃もバリアもある。心配ない。」
私はジャンヌだけをともない、哨戒機を降りることにした。ここの住人に警戒心を与えないため、敢えて民間人であるジャンヌが同行した方がいいと判断した。
ハッチを開く。地上に降りて辺りを見る。おかしいな、上空から見たときは人がいたように見えたが、ここには人っ子一人いない。
スマホを取り出し、カメラアプリを立ち上げる。サーモグラフィーモードにして建物の方を映す。
やはり、わずかだが熱源を感知した。誰かがいるのは間違いない。
私は正面にある大きな建物に向かう。ここは役場か、それとも支配層の者が住む屋敷のようだ。私はその建物に向かって叫ぶ。
「すいませーん!誰かいませんか!?」
返事がない。私はその建物の扉の前に行き、ノックしようとした。
その時だ。突然、扉が開いて中から誰かが飛び出してきた。
女だ。召使い風の服を着た女が、何かを持って私に突進してくる。
手にあるのは、短刀だ。それを私に突き立てて突進してくる。まずい、やられる。そう思った時、私の背後から何かが飛び出してきた。
ジャンヌだ。手には短い棒のようなものを持っている。それを使って相手の短刀を払いのけ、腕を掴んで引き倒した。
一瞬の出来事だった。短刀は地面に落ち、私に襲いかかってきた女も倒れる。そのすぐ横にはジャンヌが立っている。
この機に乗るとき、金属探知機で武器を持っていないか確認したのだが、ジャンヌめ、どうやら木刀を忍ばせていたらしい。つくづく剣のようなものを持っていないと気が済まないようだ。
「いきなりエルンスト様に何をするの!!」
ジャンヌがその女に叫ぶ。女は応える。
「お前ら……オラーフの者か?」
「そうよ!」
「や、やはり、ついに嗅ぎつけてきたか……」
見たところ、ジャンヌと同じくらいの娘だ。おそらくはここで働いているメイドか何かだろう。それにしても、妙なことを口走る。私は尋ねる。
「嗅ぎつけたとはどういうことだ?我々は上空からこの集落を見つけ、降り立ったところだ。」
「なんだ、こ、この村のこと、知らずにきたというのか?」
ジャンヌに叩かれた際に痛めた手首を握ったまま、その娘は立ち上がる。そして、我々に向かって言う。
「ならば、直ちに立ち去れ!ここはガルグイユ様に守られた地!外者が立ち入って良い場所ではない!」
ガルグイユ?なんだそれは。よくは分からないが、文脈からしてどうやらオラーフ王国に従属する者ではなさそうだ。むしろ、敵対する雰囲気がある。私は言った。
「私は地球294の遠征艦隊所属、第9小艦隊司令のエルンスト准将という者だ。昨日、この辺りでドラゴンを目撃し、その調査のためにここに来た。あなた方と敵対する者ではない。」
「あ、アース294……?いや、ちょっと待った、ドラゴンだって!?」
ドラゴンという言葉に特に反応した。もしかして、ドラゴンについて何か知っているのか?
「我々は昨日、高度4200、モン・フェイロン山南西800メートルの地点で、全身が真っ黒なドラゴンに遭遇した。これがその時の映像だ。」
私はスマホを取り出し、彼女にドラゴンと遭遇した際の映像を見せる。それを見たこの娘は、こう呟く。
「が……ガルグイユ様だ……間違いない!言い伝え通りの鋭い目つきに真っ黒な身体……これはガルグイユ様の姿だ!」
なんだと?ガルグイユというのは、ドラゴンのことだったのか。そういえばさっき、この娘はガルグイユ様に守られたとかなんとか言ってたな。私は問い詰める。
「おい!このドラゴンについて、何か知っているのか!?」
「ガルグイユ様は、我々をこの地にかくまって下さったお方だ!230年前、我々ポントロワールの民がオラーフの奴らに追われていた時、我らをこの森の奥深くに導いて下さった!以来230年、我らはここで平和に暮らしていたのだ!」
彼女の言葉から、新たな事実が判明した。ポントロワールというのは、あの230年前にオラーフ王国に滅ぼされた、ポントロワール王国のことか?私はさらに問う。
「おい!ポントロワールとは、230年前にオラーフ王国に滅ぼされたという、あの王国のことか!?」
ここでその娘は黙り込んでしまった。明らかに「しまった」という顔をしている。それはそうだろう。バラしてはならない相手に、思わず自分達の正体を明かしてしまったのだから。
そのやり取りを聞いていたのか、周囲からぞろぞろと人が出てきた。
皆、剣や鎌など、武器のようなものを持って現れた。私とジャンヌの周りをぐるりと取り囲む。
「ジャンヌ。」
「はい!」
「私の左腕にしがみつき、何があってもじっとするんだ。いいな!?」
「はい!仰せのままに!」
こうなったら、こちらのテクノロジーで圧倒するしかない。相手を傷つけず、この場を乗り切るためだ。私は、腰にあるスイッチに手をかけた。
「この村のことを知られた以上、生かして返すわけにはいかん!可哀想だが、死んでもらう!」
1人の中年風の男が斬りつけてきた。私はバリアのスイッチを押す。
火花とともに、その男は剣もろとも弾き飛ばされる。それを見た他の男が、今度は鍬で襲いかかる。だが、剣だろうが鍬だろうが、結果は同じだ。火花とともに鍬はへし折れ、その男も弾き飛ばされる。
「無駄だ!あなた方の持つ武器では、我々は倒せない。せめてこれくらいの武器がないと相手にはならない。」
そう言って私は銃を取り出す。それを1発、森の木に向かって放った。
中出力程度だが、細い幹を吹き飛ばすくらいの威力はある。バンッという乾いた音で発せられたビームは一本の木の真ん中に当たり、その木の半分をなぎ倒した。
これを使ったのは、あの魔女狩りの時以来だ。あまり脅しは好きではないが、交渉にあたっては、こちらの力を示さなくてはならない時がある。
「私には、この村を滅びせるほどの力がある。だが、そんなことは我々は望まない。我々はこの地上に住む全ての住人と同盟関係を結び、この星で安全安心に暮らせることを目指すために行動している組織である。どうか、話を聞いてはもらえないか?」
私の言葉に、黙り込んだ住人達。それを見て、私はさらに続ける。
「230年もこんな閉鎖された場所で暮らしているようだが、この先も続けるつもりか!?」
それを聞いた住人の1人が、つぶやくように言った。
「いや……もう無理かもしれんな……」
そう応えたのは、1人の老人だった。その老人はさらに続けて言う。
「この村の人口は減り、それを担う若者もわずかしかおらぬ。あと100年もすれば、我らは滅ぶしかないだろう。ガルグイユ様に導かれ、オラーフから逃れた我らはこの地でポントロワール王国の復興を目指し暮らしてきたが、もはや王国の復活など叶わず、ただ滅びを待つだけの集落となってしまった。このままここで暮らすのは、わしらにとって本意ではない。」
「ならば、この村の将来を考えるべきではないか。我々とともに歩み、開けた世界へ飛び出すべきだと思うが。」
それを聞いていたさっきの娘が、猛然と反論し始めた。
「駄目だ、セドリック様!こいつらは我々をたぶらかし、奴隷としてオラーフの都に連れて行くつもりだ!私は騙されないぞ!せっかくガルグイユ様が導いて下さったこの地を、手放しては駄目だ!」
よほど我々を信用できないらしい。私は思わずその娘にこう言った。
「なんだ、ドラゴンの言うことなら信頼するのに、人間の言うことは信用できないと言うのか?」
「うるさい!ガルグイユ様はお前らと違って、神聖なお方だ!空から舞い降りて、我々の先祖の前に現れたのだぞ!」
「私も空から舞い降りて現れた。お前も見ていただろう?」
「うっ……」
この一言であっさり論破されてしまったのか、ここから急に相手が歩み寄りが始まった。
包囲を解き、村の集会場に案内された。そこには3、40人ほどの人が集まってくる。
彼らに向かってまず、私が地球294という遠くの星から来たこと、オラーフ王国とは同盟関係となりすでに交易を始めていること、オラーフ王国に限らず他の国や集団とも同盟を結び、最終的にはこの星の統一政府を樹立してもらい、我が宇宙統一連合の一翼を担う星になってもらうつもりだということを話した。
途中、ブルクハルト少尉を呼んで、機内にあるモニターなどを持ってきてもらう。映像を見せれば、理解が早い。この王国から逃れて森の中に隠れ住む村の住人達は、見たことのない世界をモニター越しに見る。
地上をも飛び越え、星空の彼方でそんな世界が広がっていることを知った住人達。森の外のことすらほとんど知らないこの住人達にとっては、我々の見せる世界はかなりショッキングだったようだ。
最後に、私はこの村の長であるセドリック殿に、正式な交渉を始めるため明日再び訪れることを約束する。そして私は、哨戒機に戻る。
「あの!」
哨戒機に乗り込む寸前、私は呼び止められた。振り向くとそこには、私に飛びかかってきたあの娘がいた。
「なんだ?」
「いや、あの、その……話も聞かず、いきなり飛びかかって、申し訳ありませんでした……」
もじもじしながら、私に謝罪するその娘。私は応える。
「済んだことだ。それに、結果としては良い方向に向かった。気にしなくていい。」
「あ、ありがとうございます……私の名は、リュシールと言います。」
「そうか、リュシールか。明日また来る。では。」
私は敬礼し、哨戒機に乗り込む。リュシールという娘は、深々と頭を下げたまま、我々を見送った。
哨戒機は発進する。この小さな隠れ集落を離陸し、オルバーニュ軍港へ帰投する。
帰りの機内で、私は少し考えていた。
あの村の住人は、ドラゴンにより230年前に導かれたと言っていた。その時同時に、ドラゴンはオラーフ王国の人間には近寄るなと言った。これは、明らかにポントロワール王国の残党達を逃すためだろう。
だが思えば今回あの村を見つけたのも、そのドラゴンのがきっかけだ。ドラゴンが現れなければ、我々はこの辺りを探索などせず、この村の存在に気づけなかっただろう。
もしかしたら、あのドラゴンは我々にあの村を敢えて見つけさせるために現れたのではないか?滅びゆく村の現状と、宇宙から飛来した我々の登場で大きく変わる王国を鑑みて、この村の将来を我々に託したのではないだろうか?そうとしか思えない今回の一件、その真意は、ドラゴンのみぞ知る、だ。




