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1話


___紛う事無き朝だ。




カーテンがシャーッと物凄い勢いで開けられたであろう音と、カーテンから解放された窓から溢れる光でそう感じた。目を開けなくても、お母さんが開けたのだと分かる。

もちろん朝が来たから、学校があるから、という理由では私、神田清夏かんだきよかの体は布団から出ない。そんな理由は、布団の暖かみに包まれる快感には到底勝てるものか。2度寝あるのみだ。

そう私が考えていることを、お母さんはお見通しなのだろう。気づいたら布団ごと体を思いっきり床に落とされた。




「痛った!!」


「アンタは大声で叫ぼうが起きないって分かったからね。痛いの嫌だったら自分で起きてね」




布団に包んだまま落としたのは、生身だとさすがに痛いだろうと配慮したお母さんの気遣いだろうか。

まあどっちにしても、隣に置いてあるテーブルの角に頭をぶつけて、記憶を失くしそうで恐いけど。




「この前、遅刻と無断欠席が多いですって担任の先生から連絡が来たの。私が仕事に行った後に2度寝してるでしょ。もう高校生なんだから、いつまでもこのままじゃいかないの」


「はいはーい。遅刻はしないように頑張る」


「…無断欠席もダメだからね?」


「うーん…そうだね」


「天国のお父さんも悲しむね、これは」




私が生まれる少し前に、お父さんは交通事故で亡くなったらしい。それ以来お母さんは、高校1年生になった私を1人で育ててくれた。

そう思うと、やっぱり私はもっと自立した娘にならないといけない…かもしれない。

それを口に出すのは何となく恥ずかしいから、返事をする代わりに急いで制服に着替えた。




「行ってきまーす」




8時ちょうどに家を出て、エレベーターを待っている間にも既に家に帰りたいとか、録画していたアニメが溜まってる早く見てえとか考えているから、自立できるのは当分先になりそうだ。

エレベーターのドアが開いて、乗って、1階のボタンを押して、『閉』ボタンを押して…と頭が完全に作業モードに入っていた私は、目は開いてはいたものの、あまり機能していなかった。

…当然、エレベーターに乗ろうとしていた人物にも気づくはずなく。




「うわ、ちょっと待ってよ〜。まだ閉めないで〜」


「えっ!…あ、和」


「おはよ、清夏」




無理矢理閉まりかけていたドアをこじ開けて入ってきたのは、幼馴染の白無和しろなしなごだ。

伸びた前髪が目にかかって痒いのか、眠いのか目をこすっていた。ちなみに、おはよって言った時の笑顔が笑窪がピクピクしててめちゃくちゃ可愛かった。




「英語表現の予習やった?1時限目だよね」


「やってないよ。今日昼から行く予定だったもん。和はやった?」


「…俺、してないから清夏に見せてもらうつもりだったのに」


「バ〜カ。私が予習するのはお弁当の中身だけ」


「え〜お弁当のおかず何だった?」


「唐揚げとちくわ」


「茶色いね。俺どっちも好き」




そう言って笑う和は、やっぱり笑窪がピクピクしてて可愛かった。

マンションの同じ階に住んでて、幼稚園から高校1年生になった今までずっと同じ学校に通っている。

昔から面倒くさがり屋で、友達を作るのも面倒くさいとか思っていた私にさえヘラヘラ笑う。

気づけば、もし『漫画とゲームと和くん、無人島にどれか1つだけ持って行けるとしたら?』と聞かれたら、迷わず『和!』と答えるレベルまで好きになっていた。




「清夏のお母さん、清夏にちゃんと学校行かせるために美味しいお弁当作ったんだよ。ちゃんと学校来なきゃダメだよ?」


「…分かってるよーだ」




多分、可愛い女の子なら『和が毎日一緒に学校行ってくれるなら頑張る!』とか言えるんだろうけど、もちろん私はそんなキャラじゃないので言えない。

別に言えなくていいし、この日常が続くだけで充分幸せだと思っていた。




…思っていた。




…思っていた、けど!








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