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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第四章 ニコさんと魔王
94/100

093 闘

 一方、レムレスさんとダスモルトさんです。

 体格差をモノともしないレムレスさん。まぁ、それはそうなのかもしれませんが、とにかく激しい剣戟が続きます。

 小さい体を魔力で強化し、一撃一撃が重たいレムレスさん。ダスモルトさんの顔には、分かりにくいですが焦りの表情が浮かんでいます。


「うおおおおッ!」


 一度距離を取りたいダスモルトさん。無理矢理レムレスさんを押し返すと、ダスモルトさんも肉体の強化術式を展開します。

 しかし、それを許すレムレスさんではありません。


「光刃」


 八裂丸から伸びた刃がダスモルトさんを貫きます。

 ダスモルトさんの口から迸る絶叫。しかしダスモルトさんは絶叫もそのままに、熱線を吐き出します。レムレスさんはそれを回避しきれず開いた左手で受け止めます。魔力を込めた左手ですが、流石に無傷とはいきません。その痛みにレムレスさんの表情が歪みます。

 ダスモルトさんは光の刃から逃れると、地に膝を着きます。


「ハハ、これでおあいこってやつだ。しかしテメェ……、この俺相手に、一体何もんだ」

「……貴方の爺様の右腕を吹っ飛ばしたのは私」


 キョトンとダスモルトさん。次の瞬間大笑いします。


「テメェが勇者ってか!確か勇者はとっくの昔にくたばっただろうが、そんじゃテメェはその亡霊か、生まれ変わりってか?!」

「そう。でも、今の私はレムレス=ウォーカー。エマは、死んだ」

「ハハ、こいつはたまげた。まさか、彼の御高名な勇者様が生まれ変わっていたとはな!丁度いい、なら、やっぱりテメェを殺して俺が爺よりも強ぇと証明する絶好な機会ってわけだ」


 ダスモルトさんはその縦に避けた瞳孔を開き、目をランランと輝かせます。ダスモルトさんにとって、これは望んでもいない機会、是が非でもレムレスさんを打ち破り、己が力を証明したいという感じでしょうか。

 レムレスさんは八裂丸を構えると、その切っ先をダスモルトさんに向けます。そして、下半身を少し落とすと、いつでも飛び出せる、そんな構えになりました。


「ほぉ……、そいつは光栄だね」


 何かを察したダスモルトさん。ダスモルトさんも曲剣を両手で構え、待ち受ける体制を整えます。

 レムレスさんはゆっくりと息を吐き、吐き切るか否かの瞬間、レムレスさんが消えました。いいえ、消えたように見えるような速さでダスモルトさんに斬りかかったのです。

 ダスモルトさんの敗因は、この一瞬で反応できなかったことでしょう。


「残影。……見切れなかったね」


 まさに影だけ置き去りにするような速さ。ダスモルトさんは微動だに出来ず、ただ受けるしかありませんでした。


「馬鹿、な……。まるで見え…」


 ダスモルトさんはそのまま地に倒れ、昏倒しました。

 レムレスさんは痛む左手の応急処置をすると、もう片方の状況を確認しました。すると、同じくベルモスさんが倒れています。それは良いのですが、なぜかニコさんとフィズィさんが喧嘩しています。

 フィズィさんは今にもニコさんに掴みかからんばかりの勢いです。


「おい、手を出すなって言っただろ?」

「良いじゃない、別にタイマン張る必要はないでしょう?」


 どうやら、フィズィさんの戦いにニコさんが勝手に参戦したようです。しかも状況からすると、トドメまで持っていったようですね。それは戦闘狂のフィズィさんも怒りそうな事案です。


「私はね、フィズィ。貴女が危ないのは見たくないのよ」

「……ッ!フザケるな!テメェはそうやって、俺を守ってるつもりかよ!あの時だって!俺は……ッ!」


 ニコさんとフィズィさんは暫し睨みあうと、最終的にフィズィさんが不貞腐れたように舌打ちをすると、地面を足で凹ませました。完全に八つ当たりですね。


「次フザケたことしてみろ、お前のその足らない頭を凹ませてやるからな」


 フィズィさんはそう言うと、一人歩き出してしまいました。


「フィズィ、そっちじゃないわよ」

「ウルセェ!」


 間違った方向に。


 さて、それから暫く、特に何事もなく進んでいました。

 時折出現するゴーレムなんかは、フィズィさんがストレス解消とばかりに叩き壊しています。


「ねぇアルガス、ベルダンからイリシオって一体どれくらい距離があるのかしら」

「んー、分からんな。だが、まぁ大体二から三十キロってところじゃないか?結構入り組んでるから、大体丸一日歩けば流石につくと思うんだが……」


 すでに一行は半日程度歩いています。

 一番体力のないエドさんなんかはもうクタクタで、足が痛いとか言っていますが、そのたびにフィズィさんに睨まれているので、仕方なく黙って歩いています。

 何となく気まずい中、隠し通路を歩いていると、ニコさんが何者かの気配を感じ取ります。


「……誰かしら」


 その気配は、まるで唐突に表れたかのようで、ニコさんの警戒センサーが凄く反応しています。


「あら、随分と気づくのが早いですわね。驚きましたわ」


 その声は艶やかな女性の声でした。

 通路の奥、まだ姿は見えませんが、何となく男なら期待させられてしまう、むしろこれで容姿が残念なら何だか裏切られた気持ちになってしまうような声です。


「おい、さっさと出て来いよ。どうせ魔王の、アルビオの手のモンだろ?俺は今無性に苛々してんだ、さっさと殴らせろ」

「お前なぁ……」


 フィズィさんが無茶苦茶なことを言います。

 アルガスさんはとても呆れ顔です。


「フィズィ、ここは私に任せてくれませんか?」


 そこで前に出たのはアルメリアさん。

 何だかやる気満々です。フラウさんのところで強化されてから出番もなかったので、自分の力を試したいみたいな感じになっているのでしょうか。


「あら、随分とせっかちな方達ですわね。殿方に嫌われますわよ?阿婆擦(あばず)れ共」


 クスクスと笑う謎の女性。


「別に私はここで事を始めようという訳ではないのですよ。……アルガストロ=A=イリシオ、ニコ=ウォーカーにフィズィ=ウォーカー。貴方方は魔王様がお呼びです。私が魔王様の元までご案内差し上げますわ」


 そう言うと、コツコツと足音を立てて闇から現れた女性。

 何だかとてもセクシーな、けれども刺々しいビキニアーマーを装備した浅黒い肌の美しい、というよりも(なま)めかしい女性。

 そう、ようやく本編に現れた彼女は、キルギス=アスタロトさんでした。

いつもお読みいただきありがとうございます。


ニコさんもようやくここまで来ました。

もうそろそろ本編は終盤でございます。

どうか、最後までお楽しみください。

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