092 戦
戦闘シーンが続いております。
レムレスさんに吹き飛ばされたダスモルトさん。彼は地面を削りながらベルモスさんの少し後ろで停止すると、勢いをつけて飛び起きます。
「ハッハー!なんだ、ただの雑魚かと思ってたら、随分と面白いお嬢ちゃんじゃねぇか!」
「あら、まだやる気かしら。うちのレムレスは強いわよ?早くおうちに帰った方がいいんじゃないかしら?」
プークスクスとニコさん。
しかし、レムレスさんはそんな彼を油断なく見据えます。
「ニコ、あまり彼を舐めない方がいい。彼がルムトルの子孫であるなら、彼は竜人。少し厄介」
「竜人?」
「そう。竜の血を引く者」
いまいちピンと来ないニコさんでした。ニコさんの中の竜は、コボルトに乗られて熱線吐きまくるアレです。その姿と目の前の蜥蜴男、ダスモルトさんは全く結び付きません。
「とにかく、ここは私が引き受ける。ここは狭い。乱戦になると逆に面倒。皆は守りを固めて、他に敵が来ないか警戒してほしい。もう一人の方は……」
「ヒヒ、俺がやるさ」
どうやら一対一でやるつもりのようです。確かにこの狭い通路では、共闘と言ってもなかなか難しいかもしれません。フレンドリファイアが怖いところです。ニコさんはそれならそれで楽ができる、と思いました。全くやる気のない主人公です。
「一応聞いておくけど、ここを素直に通すつもりはないのかしら?」
「お前たちは、魔王様直々に抹殺命令が出ている」
「……その魔王様とやらと面識はないのだけれど?」
「それについては我々にとっても与り知らんところだが、命令には従わねばならん」
魔王からの抹殺命令と聞いて、ニコさんが若干挙動不審です。エドさんは「お前ら何やったんだよ……」とビビっています。
「まぁ、そんなことはどうでもいいさ。いいからやろうぜ」
フィズィさんはもううずうずしてしょうがないようです。戦闘狂です。
初めに動いたのは意外にもレムレスさん。彼女は瞬時にダスモルトさんとの間合いを詰めると、八裂丸を振りかぶります。
ダスモルトさんは半ばから折れた曲剣に魔力を流すと、レムレスさんの一撃を受けとめます。
「……ッ」
「二度はねぇぜ、お嬢ちゃん」
そのまま、剣戟の音を数度響かせる二人。もはや振り回す、と言った様相で曲剣を振り回すダスモルトさんですが、同時に周囲の魔素を集め始めます。
「嬢ちゃんが爺のことを知っているなら、これも知ってるんだろう?」
「竜成……」
「ご明察!」
ダスモルトさんの力はどんどん上がり、更に速さまで上がります。
「ドラァ!」
ダスモルトさんは、張り付くように八裂丸を振るうレムレスさんを力任せに吹き飛ばし、間合いを開けます。そして、カパッと口を開けると口内に眩い光りが収束。それを一気に放射しました。
「――盾よ!」
思わずニコさんが盾を展開。もはや条件反射みたいですね。レムレスさんの正面で四散する熱線。通路の壁を焼きながら散っていきます。レムレスさんはそれを掻い潜り、再びダスモルトさんへ接近。
「ッチ!俺のブレスを弾きやがるか!」
「彼女の盾は優秀」
再び剣戟。火花散る競り合いが展開されます。
「おい、あっちは随分と楽しそうだぜ?こっちも始めようぜ。――円環ノ蛇」
「……」
レムレスさんの戦いを見て、フィズィさんはもう居ても立ってもいられません。取り込んだ魔素を魔法とし、自らに強力な強化を施します。
踏み出した一歩は通路を砕き、目にも留まらぬ速さでベルモスさんに飛び込みます。放たれた蹴りはベルモスさんの腹部へ直撃、と思われましたが、蜃気楼のように消えるベルモスさん。
「こっちだ」
突如、今しがたフィズィさんが通り抜けた位置にベルモスさんが現れ、フィズィさんに向かってサーベルを突き出します。超人的な反応速度でフィズィさんはそれを回避。次いで振るわれる剣戦を避け、ナイフで受け、こちらも激しい攻防が繰り広げられます。
「やりづらいな。あそこで仕留められなかったのは、やはり失敗か」
「ハッ!」
フィズィさんはそう笑うと、シュルシュルと纏わりつくようにベルモスさんにナイフを振るいます。決してサーベルの間合いを取らせないようです。
ベルモスさんはそれならと、回転するように一閃。次いで銃撃音。フィズィさんは上空に飛んで回避します。
「その銃、面倒だな。ってか銃口を俺に向けんじゃねェよ、苛々する。――夥蛇天翔!」
天井に着地するなり放った無数の雷撃。ベルモスさんは直感で危機を悟ったか、強引に飛んで避けます。
「あァ、苛々する。思い出しちまうだろうが……ッ!――破壊ノ蛇!」
天井を蹴って再接近。青黒い炎を纏った右腕、それを力任せに振るいます。青く暗い炎は辺りを焼き尽くしながらベルモスさんへ。
「……ッ!」
辛うじてその範囲から逃れるも、左腕を焼かれ、銃を取り落とします。
「さァ、まだやるだろゥ?」
フィズィさんはそう言いましたが、彼女も随分と力を使ったのか、少し息が乱れています。ベルモスさんも右手に持ったサーベルを握りなおしますが、随分と疲弊しているようです。左腕焦げてますし。
「フフ、恐らく勝負は次の一瞬ね」
「ええ、そうでしょう」
ニコさんとアルム君が呟きます。
「でも、これもうフィズィの勝ちで良いわよね?」
ニコさんはそう言うと、突如その場から姿を消しました。
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