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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第四章 ニコさんと魔王
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090 ゴーレム畑

 ベルダンで一日休んだ後、ニコさんたちはエドさんの案内で、ベルダンから南に行った崖までやってきていました。

 話を聞けば、隠し通路は崖の途中にあるそうで、飛び降りても行けますが、流石に危ないので縄を使って降りることにしました。


「いや、昔だったら十分怖かったが……。流石にフラウルのダンジョン後だと、なんていうか……、慣れたなぁ」


 アルガスさんら、空を飛べない面々は木に結んだロープを伝ってゆっくりと降りていきます。そうして降りてみると、確かに洞窟のようなものがぽっかりと大口を開けています。中は暗くてよく見えません。エドさんは、爺ちゃんの言ってた通りだ、とやや興奮気味です。


「なぁ、俺も入ってみていいか?」


 エドさんが言いました。


「私は構わないけれど。……アルガス」

「そうだな、すでに知られている場所だし、問題はないだろう。というか、国を取り返したらこういった通路は一旦見直す必要があるだろうさ」

「サンキュー!いやぁ、実は俺、こういうなんて言うか未知の領域っての?知らないところに行くのが好きなんだよなぁ」


 そう言うと、エドさんは洞窟の奥を覗き込みました。


「では、早速入ってみましょうか」


 アルム君の言葉に頷くレムレスさん。レムレスさんは魔術の明かりを点けると先頭を歩き始めます。

 明かりは無く、真っ暗な洞窟で、時折小さな生き物が地面をカサカサと這いまわるばかり。何となく不気味でしたが、数分歩くとどうやら扉の前に着いたようです。


「うん、間違いない」


 レムレスさんは鉄の扉に触れるとそう言いました。扉は年季を感じさせる外観でしたが、意匠を凝らしたその姿はそれだけでこの先に何かありそうだと思ってしまいます。隠し通路への扉なんだからもう少し大人しく地味にすればいいのに、と思います。

 そして、レムレスさんが何事か唱えると、扉が淡く光りました。


「これで仕掛けは無くなった。後は鍵を開けるか壊せばいい」

「ヒヒ、なら盛大にブチ壊すか。どうせ、鍵はねェんだろう。いいだろ?アルガス」

「まぁ、仕方ないな」


 許可を貰ったフィズィさんは何故か嬉しそうです。破壊衝動でもあるのでしょうか。右腕を大きく広げます。その手は魔素を淡く纏っており、見えるものには黒みを帯びた青い光が見えました。


「試させてもらうぜ。――破壊ノ蛇(ニーズヘッグ)


 瞬間、右腕に青黒い炎が纏わりつき、フィズィさんはそれを更に振りかぶります。


「吹き飛べよ!」


 そして扉に叩きつけると、青い炎が辺りを照らし、彼女の前には荒々しい大穴の開いた鉄の扉が残りました。まったく、どれほどの熱量だったのでしょう。扉に開いた穴の(ふち)はその熱によって赤く輝いています。というか、歴史的価値のありそうな扉を何の躊躇(ためら)いもなく破壊しないでほしいものですが。


「まぁ、こんなもんか」

「アンタねぇ、随分と入りにくそうな穴開けたじゃない。まだ熱そうだし、少しは考えなさいよ」

「ヒヒ、うるせェよ。通れりゃいいんだよ」


 ニコさんの苦情にそう言って、フィズィさんは一人、さっさと中に入っていきました。

 扉の穴を潜って、隠し通路に入っていくと、外とは少し様子が異なる様でした。


「すげぇ……。俺、こういうなんて言うか秘密っぽいの好きなんだよなぁ」


 エドさんはとても楽しそうです。


「流石は王族が使うとあって、中はそれなりに整備されているんですね」

「そうだな、俺も初めて使うが……」


 アルメリアさんの言う通り、中は切られた石でしっかりと整備されており、まさに通路の様相を成していました。また、光源の無かった外ですが、中はどうやら発光する苔が繁殖していたようで、比較的明るさは保たれています。自然の力は偉大ですね。

 ニコさんはへーだとかほーだとか言いながら、辺りをキョロキョロと見回しながら進んでいきます。


「なんだか、結構入り組んでるみたいね」

「なら、嬢ちゃん、先頭は任せたぜ。道案内よろしく頼むわ」

「あら、しょうがないわね」


 ニコさんは周囲を魔法によって強化した反響定位(エコーロケーション)で周囲を探ると、皆を先導して進んでいきます。


「次は右の道かしら。これだけ入り組んでるとよく分からないわね」

「確か、迷路って左側の壁に沿って進んでりゃいつかはゴールに着くんだったっけか」

「それをやるにはここは広すぎるのよ。そもそも普通に歩いてベルダンからイリシオってどれくらい掛かるのかしら……」


 そうして歩いているうちに、ニコさんは洞窟内の異変を感知します。


「ちょっと待って、何かいるわ」

「何かってなんだ?」

「知らないわよ。でも、これは明らかに動いてるみたいだから、恐らく生き物だと思うのだけど、洞窟に住み着いている小動物ってわけでも無さそうね。なんか、そうね、質感的には岩トカゲなんかに似てる気がするけれど……、もっと大きいわね」


 周囲に緊張が走ります。


「魔物か?方角は?」

「この先よ」


 ニコさんが指し示すのは、これから進む方角です。


「順路か……。とにかく慎重に進もう。嬢ちゃんは、とにかくよく警戒してくれ。何かあればすぐに教えてほしい」

「分かってるわ」


 そのままニコさんが先導して進んでいくと、その正体が目視できるところまで来ました。ニコさんたちは壁に隠れながら異変のあった箇所を見てみます。


「ゴーレム?」

「ゴーレム、だな」


 それは、岩のような外皮を持った魔法生命体、ゴーレムでした。そのゴーレムは、ガラガラと音を立てて、周囲を警戒するように歩いています。

 ニコさんたちはとりあえず、そのゴーレムに気付かれないように隠れました。


「隠し通路にゴーレム、ねぇ。レムレス、貴女は何か知らないかしら」

「……あのようなものは私たちの時代には配置していない」


 ニコさんの質問に首を横に振るレムレスさん。


「殿下は何かご存知ですか?」

「いや、分からんな。ただ、そういったものを配置しているって話は聞いたことがない。以前俺が使ったことのある道には、少なくともそんなもの配置されていなかったな」


 アルメリアさんもどうやら知らないようで、アルガスさんも分かりません。 


「まぁ、敵だったら蹴散らせばいいだけだろ」

「おいおい、このネェちゃん物騒だな」


 おどけて見せるエドさんに、フィズィさんはニヤリと一つ。さて、行くか、とやる気満々です。一人立ち上がると、魔素を集めながらゴーレムの方へ歩き出します。


「ちょっと、フィズィ。やり過ごせるならやり過ごした方がいいんじゃない?!」

「そうですね。あのゴーレム、斥候のようなものかもしれませんし」

「うるせェなァ、そういうのは性にあわねェんだよ」


 二人の静止も聞かず、腕をグルグル回し、ゴーレムに歩み寄ります。完全に逃げも隠れもしないスタイルですね。

 すると、ゴーレムの警戒範囲に入ったのでしょうか、ゴーレムの赤い目がギラリと光り、フィズィさんを捉えます。さらに、頭の上のパトランプがクルクル回り、赤い光を放ち、ウィーンウィーン言います。


「侵入者発見。侵入者発見。直チニ排除……ツ!」


 完全に言い終わる前に、フィズィさんはゴーレムの頭に拳を叩き込みます。


「ふん、雑魚じゃねェか」


 ヒヒヒ、とフィズィさん。

 しかし、突如として通路が揺れ始め、ゴゴゴゴ…ッと不穏な音が聞こえ始めます。そして、あちこちの地面や壁に魔法陣が展開され、そこからゴーレムがニューンと出てきます。


「ちょっとちょっと!?」

「おい、マジかよ!?」


 辺り一面魔法陣の輝きで、このままでは完全にゴーレムに囲まれます。しかし、とても逃げ切れるような範囲ではありません。


「完全に罠じゃない!フィズィ!あんた責任取りなさいよ!?」

「ハッハッハ、これはひどいですねぇ」

「ヒャヒャヒャ、楽しくなってきたじゃねェか!コイツら全員叩き潰せば文句はねェだろ!」


 魔法陣から現れたゴーレムは、硬そうな岩のような外皮の物が多く、稀に鉄製のものなども混ざっていました。


「狭いから味方同士の位置にも気を配れよ!?ニコ、お前は魔法禁止だ!」

「何でよ!?」

「俺たちも巻き込まれるからだよ!あと、ここの通路が崩れたらシャレにならん!」


 ニコさんの魔法は派手に爆発するものが多いですからね。


「とにかく各個撃破していくしかないですね!ゴーレムは頭の目、核を破壊すれば行動を停止するはずです、とにかくソコを狙ってください!」


 アルメリアさんの叫びに各々了解の意を表すと、ゴーレムの対処に移ります。

 辺り一面ゴーレム畑。ゴーレム自体の動作は緩慢ですが、数が数で、更にゴーレムはフレンドリファイアも気にしません。侵入者となったニコさんたちの排除が最優先なのです。


「仕方ないわね!」

「ニコ、貴女はエドを。刀を貸してくれれば私がやる」

「あら、じゃあ任せるわ」

「承知した」


 ニコさんはこれはラッキーとばかりに、レムレスさんに八つ裂き丸を渡します。するとレムレスさん、八つ裂き丸を片手にゴーレムを片っ端から両断していきます。

 主に活躍しているのは飛び出していったフィズィさん、レムレスさん。アルガスさんとアルメリアさんは二人が打ち漏らしたものを的確に対応しています。

 奮戦する皆を眺めながら、欠伸を殺すニコさん。


「このネェちゃんと坊やは戦わないのかい?」

「面倒ね」

「僕はまぁ、何というか無駄なことに労力は費やしたくないので」

「なんだ、弱いわけじゃないのか?」


 そう言うエドさんに、ニコさんは微笑みます。


「なら、ここに敵が来たら貴方が守って頂戴」

「そいつは勘弁だな。ゴーレムの一体だって結構面倒なのに、アンタら一体何者なんだ」


 再びニコさんが微笑み、アルム君が答えます。


「さしずめ、魔王をぎゃふんと言わせ隊といったところでしょうか。まぁそれは、僕にとってついでなんですけどね。ぎゃふん」


 そうこう無駄な話をしている間に、ゴーレムの数は随分と減っていきました。


「ヒヒ、いいサンドバッグだぜ」


 フィズィさんは思いっきり体を動かせるようで、とても楽しいようですね。彼女とは別に、アルガスさん、アルメリアさんは堅実に、そして的確に核のみを破壊しています。


「体が動く、これが神の加護か」

「ええ、素晴らしいですね。神フラウルに与えられた実、これ程とは……。これならば、アルバとベインにも対抗できるッ!」


 アルガスさんは片手で悠々とバスタードを振るい、アルメリアさんも人間の膂力とは思えない程の豪槍を振るいます。元々ヒトの身では十分な武を扱えた二人ですから、ヒトの身を超えた今、その力はこの程度相手なら、何の苦労も無さそうでした。

 対して、レムレスさんは独特の剣を振るいます。動と静が一瞬で切り替わり、端から見ると、いつの間にかゴーレムが切り倒されている、そんな剣術でした。


「こいつで、最後だなッと!」


 最後の一体はフィズィさんが片付けます。魔力を纏った腕が鉄のゴーレムを貫き、内側で爆砕します。


「うげ、えげつないわね」


 どのくらい居たでしょうか。全てのゴーレムを撃破すると、彼らは皆、体の感触を確かめながら、その余韻に浸ります。

 しかし、次の瞬間――。


「ッ!――盾よ!」


 ニコさんが吠えます。その声と同時に乾いた発砲音が二つ。丁度フィズィさんの真ん前に展開されたその盾には、二つの銃弾がめり込んでいました。

感想など色々お待ちしております。それはもうお待ちしております。

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