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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第四章 ニコさんと魔王
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086 バーベキューとビール

4章は少し展開の速度を意識して進めていこうと思ってますが、どうなるやらです。

毎度更新が遅く、申し訳ないです。

 ニコさんとアルム君が元居た場所まで戻ると、フィズィさんとレムレスさんが見当たりません。彼女たち以外は皆戻って来ているようで、「あの二人、何やってるのかしら」と、お腹の空いたニコさんは待ちきれない様子です。


「とりあえず準備だけでもしてしまいましょうか」

「そうね、本当お腹空いたわ!」


 ニコさんはうにゃうにゃと魔法を使うと、何やら鉄製のテーブルのようなものが出来上がりました。彼女が創ったのはバーベキュー用のミニコンロ。長方形の小さなテーブルみたいな形。四つの足で支えられた鉄の箱には上から網で蓋されています。薄い鉄で出来た箱の側面には丸い穴が開いており……、ってもうミニコンロの説明は良いですかね。


「あ、そういえば炭が無いわね」

「持っておるぞ」


 炭は何故かネロさんが持っていました。流石、頼れる神様です。

 ネロさんがガラガラ炭をコンロに入れると、早速「ふぁいやー」と火を着けるニコさん。炭に火を付けるのは結構面倒なのですが、魔法はやっぱり便利ですね。というか、気が早いです。

 アルム君は何処から取り出したのか、団扇(うちわ)でパタパタ風を送ります。ニコさんはいてもたってもいられません。


「もう焼いちゃいましょうよ!」


 ニコさんは周りの食材たちを眺めて(よだれ)(すす)ります。アルガスさんは「もう少し待ってやろうぜ」と苦笑い。ニコさんは不満気(ふまんげ)です。

 それから少し。ニコさんが空腹のあまり項垂れ始めていると、大きな影がおちました。


「ワリィ、待たせた」


 フィズィさんの声です。大きな鯨が頭上から降りてきました。レムレスさんです。なんと彼女、巨大鯨だった頃の姿に戻ることが出来たのです。大きさは随分目減りしていましたが、異界の海を使わず空を飛ぶことも出来るのでした。実に便利です。

 フィズィさんが上から飛び降りると、レムレスさんもヒト型に戻ります。フィズィさんは何やら担いでいる様子です。


「随分大きいな、何だこりゃ」


 重々しい着地音を立てたフィズィさん。彼女が担いでいるのは随分(ずいぶん)と大きな尻尾に見える何かでした。


「ああ、こいつァな、カオスドラゴンの尻尾だよ」

「まぁ美味しそう!」

「いや、美味しそう!じゃねぇよ!」


 (はしゃ)ぐニコさんにつっこむアルガスさん。

 カオスドラゴンと言えば、ニコさんが蝙蝠時代に全力で無理だと悟ったドラゴンです。たしか、アルバさんが殴り合いをしていたりもしてましたね。レムレスさんもフィズィさんもボロボロでしたが、大きな怪我はなさそうです。流石は元勇者と戦闘狂と言ったところでしょうか。

 レムレスさんは「感覚は掴んだ……」と満足そうです。新しい身体の使い心地はどうだったのでしょうか。悪くなさそうですね。

 とにかく、これで全員揃いました。コンロの他にもテーブルやら椅子やら用意して、全員分の飲み物を用意すれば、すっかり準備も完成です。因みにビールは頼れる神様がビールサーバーを用意してくれました。素晴らしい神様ですね。というか、ネロさんとフラウさんも既にビール片手に待機中です。


「さて、それじゃあ早速食べましょう!カンパーイ!」


 ニコさんはそう叫び、ゴクゴク喉を鳴らしてビールを飲み始めました。「海はビールよ!」と口の周りが泡だらけです。どうでも良いですが、お酒を飲んだ後に海に入るのは止めましょうね。危険が危ないです。

 周りもニコさんに続き、宴会を始めます。網の上で新鮮な食材を焼けば、辺りはとても美味しそうな香りに包まれます。どうでもいいですが、焼き担当はアルガスさんとアルム君、それにアルメリアさんの様です。

 ニコさんが焼き貝に舌鼓を打っていると、フィズィさんがやってきました。


「おい、ニコ。ちょっと八裂丸(やつざきまる)貸せよ」

「何に使うのよ」


 そう言いながらも八裂丸を渡すニコさん。フィズィさんはそれをレムレスさんに渡します。

 ニコさんがはて、と思っているとレムレスさんはドラゴンの尻尾に近づき、おもむろに八裂丸を振り上げました。


断絶(ダンゼツ)


 斬ッ!と一閃。成程、ドラゴンの尻尾は大きいですからね。そのままスパスパと手ごろなサイズに斬っていきました。


「どうだった?」

「有難う、良い刀だった。昔私が使っていた物と同じか、もっと良い」


 フィズィさんが訊くと、レムレスさんは満足気に答えました。八裂丸は元勇者も認める名刀のようです。ニコさんは「凄いわねぇ」と感心しつつ、今度モグ爺さんかベルさんのところに連れて行ってあげようと思いました。

 アルガスさんは思わぬところで見れた勇者の技に団扇を(あお)ぐ手が止まってしまいました。


「レムレス……、いや。何てお呼びすればいいか、貴女が勇者エマであれば、俺はその子孫ですから」

「私はエマであったが、エマではない。今はレムレス=ウォーカー。彼女は既に死んだ。……それに、エマと呼ばれるのは億劫」

「分かりました、レムレス。その、私にもその技、教えてくれませんか?」

「アルガス、貴方何でレムレスには丁寧な話し方なのよ!」

「別にいいだろ、そこは!」


 茶化すニコさん。レムレスさんは「普通に話してくれて構わない」と前置き。実際自分の先祖とか、元勇者とかって、凄く敬語になっちゃいますよねきっと。


「教えるのは苦手、見て盗んでくれればいい。何時でも見せよう」

「……ッ!ありがとうございます!」


 全力で頭を下げるアルガスさん。やっぱりニコさん達への態度とは違いますね。超殊勝です。


 食事を楽しみ、お酒も飲んで、だいぶお腹も苦しくなった頃合い。空に浮かぶ疑似太陽は、夕日のように真っ赤に輝いています。

 アルメリアさんが酔っ払って面白くなった話はまた別の機会にするとして、話は再び魔王のことになりました。ニコさんは「すっかり忘れてたわ!」とか言っていましたが、こっちが本題です。


「残念ながら、主等を魔王の目の前に転送してやることはできん」

「結界があるのでおじゃる」


 二柱の神様が言いました。残念ながら、そこまで楽することはできないようです。


「麿等が送ってやれるのはせいぜい、イリシオの外じゃな。じゃが、いきなり敵中ど真ん中に送られても困るじゃろ?じゃから、この辺り」


 ネロさんが指さしたのは、イリシオから少し離れた場所でした。


「ここならばまだ、奴の手も伸びとらん」


 アルガスさんは「ここか……」と何か納得している様子。何か特殊な場所なのでしょうか。

 いずれにしても、近くまで送ってもらうならそれに越したことはありません。酔い潰れたアルメリアさんを除いて、全員が了承しました。


「さて、行く前に神の加護というものを与えておくかの。そこな男、それとそこで酔い潰れている女。全く神より先に酔い潰れるなど許せんが、仕方あるまい」

「ヒヒ、神より先に酔い潰れるなって、神が酔い潰れるのかよ」


 フィズィさんのツッコミに意地の悪そうな顔で笑うネロさん。彼とフラウさんはアルガスさんとアルメリアさんの額に軽く触れました。すると、アルガスさんの意識がはっきりとし、アルメリアさんも寝苦しさから解放されたようです。


「別に、酔い覚ましではないぞ」

「少しばかりアレじゃ。魔改造した」

「魔改造!?」

「嘘じゃ、まぁ悪いようにはしとらん。楽しみにしとれ」

「何を!?」


 アルガスさんは恐々としていますが、神様たちはホッホッホと笑うばかり。いったい何をされたのか気になりますが、教えてはくれないようです。

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