表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第三章 ニコさんと神々の遊び
79/100

078 空飛ぶ蛇

 吹き飛ばされる様に空を舞うフイズィさん。まぁ実際に吹き飛ばされているのですが。しかし、センスが良いのか、それもすぐにコツを掴んだ様です。何とか吹き飛ばされている、というよりも空で跳んでいるという感じにはなりました。

 二体のドラゴンへグングン迫っていきます。


「ヒャハハ!こりゃいい、もっと早くに試せば良かったぜ!」


 彼女はその身に暴風を纏い、あらゆる角度から推進力を得ることで空を自在に舞っているのです。それはさながら風の化身とでも言いましょうか。辺りに突風やら何やらをまき散らしています。


「……だが、長くは持たねぇか」


 そのため、アルム君の浮遊魔術とは違って非常に燃費が悪そうです。

 その上空中戦をしようというのですから、なおさら短期で決着を付けなければならないでしょう。あまり実用的ではなさそうです。


 フィズィさんを迎え撃つネッセンジャーレッド、ピンクは左右に分かれ、熱線を吐きます。それを巧みに避けるフィズィさん。ライフルで応酬します。


「ヒャヒャヒャヒャ!挟み撃ちってか、小賢しいチワワ野郎だ!」


 実に愉快そうな彼女ですが、いつの間にか追いかけて来たニコさんが叫びます。フィズィさんとは違い、優雅に空を飛んで、直線的に進むフィズィさんに並びます。


「ちょっと、待ちなさいよ!この馬鹿!」

「テメェ、追ってきたのかよ!守りはどうする!?」


 フィズィさんは舌打ちでもしそうな勢いですが、ニコさんは呆れ顔です。


「アンタが飛び出してったから、標的がアンタに変わったみたいよ!それに少年とアルメリアがいるわ!何とかするって!合言葉はいいぞ、もっとやれ!よ!」

「何だよそりゃ!?」


 本当に何の事でしょうね。きっとアルメリアさんがある意味で頑張っているのでしょう。


「アンタこそ、そんな飛び方で良くも出ようと思ったわね!とにかく、私が右をやるわ!」

「ッチ!もう、黒焦げになるんじゃねェぞ!?」


 フィズィさんは舌打ちしつつ叫びました。フィズィさんとしては、ニコさんには後方でうにゃうにゃしてて欲しいのかもしれません。そんなフィズィさんに、ニコさんはふわりと一瞬微笑みます。そして、いつものいい笑顔で言うのです。


「アンタこそね!」


 ニコさんは右のドラゴンへと向かって飛んで行きました。フィズィさんはそれを何とも泣きそうな顔で見送りました。そして、すぐに自分の獲物を見据えると、周囲の魔素を取り込みます。


「だったらすぐにで決めてやるよ!――円環ノ蛇(ヨルムンガンド)!」





 一方ニコさんはというと、高速でドラゴンに接近しつつ、近づいて来るドラゴンを金の瞳で見据えました。そして僅かにげんなりとします。


「私の担当は……、レッドね。左の方が良かったかしら」


 どうでも良いですが、ネッセンジャーもやっぱりレッドがリーダー的存在なのでしょうか。ニコさんはそう呟くと、腰から八裂丸を引き抜きます。

 着物の裾をはためかせ、包丁みたいな刃物を持ってスカイハイ。月光を背に夜闇を切り裂くその姿はまさに、一体なんなんでしょうか。良く分かりませんね。


「ふふ、今宵の八裂丸は血に飢えているのよ!」


 眼前には口を開いた銀色のドラゴンと、それに乗ったエクェスコボルト。

 ドラゴンの口に光が収束します。


「オイテケ!オイテケ!」

「一体何を置いてけっていうのかしら、あんた達は」


 ニコさんはその光に嫌なものを感じながらも、接近を止めません。

 エクェスコボルトは叫びます。チワワなので割と高めの声です。でも身体とはミスマッチです。


「イノチ、タマシイ、ゼンブ!オイテケ!」

「随分と強欲じゃない!でも、そんなのお断りよ!」


 瞬間、ドラゴンの口からカッ!と閃光が迸ります。

 それと同時に、その射線から逃れるニコさん。寸での所で回避すると、「あつッ!」とか言いながらもコボルトの死角へと逃れます。


 ブレスを吐いた直後、一瞬の隙。

 ニコさんはそれを狙っていたのです。


「それよりも、あんたこそ!そのドラゴン!置いてきなさいよ!」


 そして、死角から一気に距離を詰めると、ドラゴンではなく背中に乗っていたコボルトを八裂丸で切り裂きます。


「貰ったわ!」

「キケンガアブナイ!」


 ニコさんが斬り上げる様に振った八裂丸はしかし、コボルトの持っていた無駄に立派な槍に防がれ、硬質な音を響かせます。


「ちょっと!何生意気にも防御してるのよ!?」

「ムダダ!ムダダ!」


 完全に懐に入り込んでいるニコさん。間合いは完全に制していますが、二合三合と振り回した八裂丸を防がれてしまいます。身体スペックは化け物でも、動きが素人ですからね。


「やっぱり腹立つわね!その面は!」

「オロカナ!オロカナ!」

「このッ!アンタなら斬れるでしょ!八裂丸!!」


 しかし、半ば八つ当たり気味に叫びながら袈裟に振り下ろした八裂丸。それは淡く燐光を宿しながらコボルトを槍ごと斬り裂きました。ニコさんの魔法が八裂丸に干渉したのです。コボルトは悲鳴を上げます。


「ギャアアアアアアアア!」


 胸を裂かれもがくコボルト。その結果に驚きながらも、そのままドラゴンの背中から蹴落とすと、ニコさんは入れ替わるようにドラゴンの背に跨りました。

 ご丁寧に鞍までついており、乗り心地は思ったより悪くありません。


「ドラゴンの操縦なんて、どうするのかしらね。念話で行けるのかしら?」


 ニコさんは手綱を握ると、ドラゴンに向かって念話で指示を始めました。

 するとどうでしょう。ドラゴンはニコさんの意思を理解し、それに従うかのように飛行を始めました。全く抵抗する素振りもありません。


「素直じゃない。ドラゴンって飼えるのかしら。とにかく、後はフィズィね!……ふふ、私が一番上手く竜に乗れるのよ!」


 ニコさんは急ぎ、フィズィさんのもとに飛んで行きました。





「オラァ!」


 フィズィさんはと言えば、ドラゴンの熱線を掻い潜って真正面から肉薄すると、ドラゴンを力一杯殴りつけました。実に脳筋です。その感触は、とても生物を殴ったとは思えない程硬質なものです。


「ヒヒ、硬ってェ。流石に物理じゃ一撃とはいかねェか」


 まぁ、ドラゴンと言えば下手な金属よりも全然硬そうなので、あまり不思議ではないかもしれませんが。円環の蛇(ヨルムンガンド)を展開しているフィズィさんでも、流石にこのドラゴンは硬いようです。

 しかし、殴られたドラゴンはしっかり変形しており、悲鳴を上げて暴れました。背中のコボルトは「オチツケ!オチツケ!」と必死に宥めています。


「だったら、もう一発くれてやるよォ!」


 フィズィさんは一層笑みを深めると、暴風を引き連れ飛び回り、下から突き上げる様にドラゴンの腹に足を突き刺します。


「ついでに取っとけ。――夥蛇天翔(カジャテンショウ)!」


 更に容赦のない魔法による追撃。轟音と共に青白い光がドラゴンとコボルトを焦がします。

 その一撃は、ドラゴンには然程有効ではなかったようですが、騎乗していたコボルトには有効だったようで完全に絶命しており、ドラゴンはやはり鳴き声を上げながら墜落していくのでした。

 呆気ない幕切れでしたが、それでもフィズィさんも燃費の悪い魔法を連発していて、かなりギリギリでした。顔にはありありと安堵の色が浮かんでいます。


「やっぱちょっと無茶だっだなァ。ギリギリじゃねェか」


 流石にこれ以上はキツいかと思った矢先、ニコさんが乗ったドラゴンが飛んでくるのが見えました。


「ヒャヒャヒャ!あいつ、ドラゴン奪ってやンの。マジかよ」


 フィズィさんはそう笑うと、展開していた魔法を全て解除しました。重力に引かれて落ち始めるフィズィさんは夜に吸い込まれるような錯覚を覚えました。


「フィズィ!馬鹿!」


 ニコさんは慌ててドラゴンを飛ばすと、フィズィさんを受け止めます。


「ヒヒ、ナイスキャッチ。いやァ、空飛ぶのは大変だなァ」

「アンタの飛び方が強引なのよ!飛んでるというより、吹っ飛んでるって言った方が良いじゃない!」

「違いねェな!」


 そうして二人は笑い合うと、鯨の元へとドラゴンを駆って行くのでした。

 因みに、この後めっちゃ狙撃されました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ