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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第三章 ニコさんと神々の遊び
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076 騎竜戦隊ネッセンジャー

 ドラゴン達の猛攻を退けつつ更に上昇していくと、ニコさん達は遂に雲の海を抜けました。

 擬音を付けるなら、やっぱりボフンでしょうか。


 すると、鯨が言います。


『ここまでだ』


 鯨が言うにはここが彼方の海面です。

 ニコさん達にも、雲の中に薄っすら半透明にユラユラ揺れる海面が見えました。

 それはとても不思議な光景です。


 そして、真っ赤に燃えていた太陽はいつしか黄金に輝いていました。つまり、すっかり月になっていたのです。周りにもいつの間にか濃紺の闇が広がって、オレンジ色の夕景は、すっかり月光輝く夜景に変わっていました。

 黄金の月が降らす明りが、雲の海を照らしています。

 それはとても神秘的な光景。


「ホント、凄い景色ねぇ」


 月の光に目を細めるニコさん。

 鯨の上から見た雲の上の景色は、それはそれは幻想的な光景でした。


 しかし、それに浸っていることもあまりできません。落ち着いて景色など見ていられないヒトの方が多いようです。まぁ、単純に怖いですよね。

 既に襲ってくるドラゴンはほとんどいませんでしたが、風は強く、手すりも何もない生物の上に乗っているだけの状態。鯨は背中に毛が無いので、掴まる所もありません。

 それに、下は雲の海が広がっているとはいえ、隙間からすっかり遠くなった島が見えるのです。


「飛行機乗った時が、確かこんな風に下に雲が広がってたなァ。やっぱ乗り物は周りを囲まれてこそ安心できるってことか」

「しかし、マジで高いな」

「殿下、こういう時は下を見ない方が……」


 つまり攻め込んでくるドラゴンが減ったのは良かったのですが、それ故に周りの景色にまで気が行くようになって、逆に恐怖心が鎌首擡げたということですね。

 彼等の顔が何処か引き攣ったように見えるのも、きっと気のせいではありません。

 フィズィさんも「ひぃぃ」、とでも言いそうな顔で眼下に広がるの景色を眺めています。


「気圧の変化や空気の濃さが下と殆ど変わらないのが救いでしょうか」


 アルム君は冷静に状況を分析していました。その両肩では、いつの間にやら出て来ていた二羽の烏がすやすやと眠っています。何とも呑気な光景です。


「そういや、確かに気圧が変わらねェな。アルガス、アルメリア。体調に変わりはねェか?」

「ああ、これと言って変わった感じはしないが……」

「私も、体調は問題ない」


 アルガスさん、アルメリアさんはその高度にこそ何とも言えない表情をしていますが、特に体に変化は無いようです。どうやら高山病の心配は無いようですね。

 高山病は、低酸素状態を原因とした酸欠によって発生する症状です。山に登らなくても発症します。非常に危険な場合もあるので気を付けましょう。

 それは兎も角、特にそう言った症状が見られないのも、ここが特殊な空間だからでしょうか。それとも、この世界の仕組みか、体の仕組みか。いずれにしても、問題ないのは良い事です。だって問題ないんですから。


「それにしても、まだ上があるのねぇ」


 ニコさんは空に浮かぶ大きな月を、縦にジグザグ割るような影を眺めています。


「ったく、一体何処まで伸びてやがるんだ。まさか、宇宙までとか言わねェよなァ」


 彼女達の言う通り、天に続いていた階段は、まだ上へ上へと延びていました。それが何処まで続いているのかは、辺りが暗くて良く分かりません。絵画のような景色ですが、実際に上を目指すモノとしては、終わりが分からないので、精神的に辛いでしょう。


 するとアルガスさんが訊きます。


「フィズィ、宇宙って何だ?」

「あんだ、宇宙も知らねェのか?宇宙ってのはなァ。……なんて説明すりゃいいんだ?」

「ユニバァァァァァスッ!!」

「うるせェよ」


 フィズィさんとニコさんのしょうもないやり取りは置いておいて、アルム君が答えます。


「この世界は、星という球体の大地であり、その外側、空気の無い空間を宇宙と呼ぶらしいですよ。恐らく誰も行ったことは無いと思いますが」

「へぇ、俄かには信じられないな。どうでも良いが、お前は何でそんなこと知ってんだ?」


 アルム君は珍しく、美少年を駆使したといって良いような笑顔をアルガスさんに向けました。


「さて、ここからどうしましょうか」

「お、おう」


 誤魔化すためだったようですね。

 その笑顔に、アルガスさんは不覚にもドキっとしてしまいます。勿論、彼にそっちの趣味はありません。無実です。横ではフィズィさんが嗤っています。


「まぁ、一先ず宇宙は置いときましょう。あんなもの、ユニバースよ!取り合えず先に進んで、さっさと落ち着けるところでご飯を食べたいわ!」

「……それもそうだな」


 鯨が昇れるのは彼方の海面である此処までです。

 これから先は階段を上るしかありません。


「しかし、まだ周りを飛んでいるモノがいるようだが」

「ああ、数は少ないが……。なんかデカくないか?」


 アルメリアさんの言う通り、残念ながら、まだいくつかの黒い影が階段の周りを飛んでいるのが見えます。

 数はかなり減ったようですが、海面を境に彼らの種がどうやら変わったのか、アルガスさんの言う通り、ここより下を飛んでいたドラゴン達と比べて、随分と大きくなったように見えるのです。


「五頭、かしら?そういえば竜の単位って頭で良いのかしら」

「あぁ?知らねェよ。蜥蜴みたいなもんだし、匹でいいんじゃねェか?」


 ニコさんは「ふーん」と、彼の竜達を神の目で見てみることにしました。

 するとどうでしょう。


「……騎竜戦隊、ネッセンジャー?」


 などと良く分からないことを呟きました。

 フィズィさんも「はァ?」と、何言ってんだコイツみたいな顔をしています。


「いや、あのドラゴン達がネッセンジャーなのよ!レッドにブルー、イエロー、グリーン、ピンクですって!馬鹿にしてるのかしら!?」

「何だそりゃ。やっぱピンクは女、雌なのか?」


 ニコさんはその場で地団太踏みました。

 当然、鯨からは『痛いから辞めてくれ』と抗議されましたが、ニコさんは更に叫びます。


「しかもあいつら、上にエクェスコボルトとかいうの乗っけてるわよ!?なんでコボルトなのよ!」

「コボルトだァ?」


 コボルトと言えば、ニコさんにとってはある意味馴染み深い敵役ですね。

 アビスでは要所に出現しては、ニコさんに噛みつかれたり、食べられたりしていました。


 そんな生物が、ドラゴンの上に乗っているというのです。所謂竜騎士というものでしょうか。

 阿保面のコボルトがドラゴンに乗って空を舞う姿がニコさんの脳裏をチラつきます。


「あいつらも、モッテケだのオイテケだの言うのかねェ」

「知らないわよ!でも言いそうで嫌だわ!」


 どうやらフィズィさんも彼らに出会ったことがある様です。コボルトと聞いた途端に微妙な顔をしています。


「なんだそりゃ」

「コボルトと言えば、犬の頭を持った魔物ですよね?」

「そのはずだが、ドラゴンに騎乗しているなんて、聞いたことが無い」


 他の三人は良く分からないような顔をしてます。

 アビスにいたコボルトはまた特殊だったのでしょうか。一般的なコボルトのイメージとは異なるのかもしれません。あの何とも言えない雰囲気は共有できないようです。


「大体!ネッセンジャーイエローって!大概にしなさいよ!カレーは好きだけど食べたことないって、適当過ぎるでしょ!何よその情報!いらないわよ!誰が決めてるのよ!この設定!」

「しょうもないな。しかし、カレーかァ。久しぶりに喰いたくなってきた」

「良いわねぇ、っていうかお腹空いたわいい加減」


 ニコさんとフィズィさんはあの食欲をそそる独特の香りを思い出して、口の中で涎が溢れていました。


「良く分からんが、つまりどういうことだ?」

「カレーが食べたいということでしょう。アレは私も結構好きですよ、何を入れても大抵美味しくなるところが好きです」


 アルガスさんの呟きには、アルム君がうんうん、と頷いて答えます。

 まぁ、その答えは期待したものではないので、結局アルガスさんも「はぁ」と気の無い返事をするしかありませんでしたが。


 兎にも角にも進むしかありません。

 アルメリアさんがクッコロスの切っ先を月に向けます。


「とにかくだ。どうするもこうするも、もうここまでしか登れない無いなら行くしかないだろう」

「もう少し接近して狙撃してみますか?」

「取りあえず、そうしましょうか。ふふ、ネッセンジャー。どれ程の敵なのかしら」

「相手が戦隊モノならこっちが悪役ってか?」


 何故か不敵な笑みのニコさんは、鯨に念話で『ゆっくり進んでもらえるかしら』と伝えました。

 鯨は『承知した』とゆっくりと階段の方へと進み始めました。

いつもお読みいただきありがとうございます。

感想や評価など、とってもお待ちしております。ブックマークも嬉しいです。


皆さんの好きな話とかを教えてくれたりすると、とっても嬉しいです。

個人的にはキルギスさんの話が描いてて楽しいですが、本編には中々登場しないですね。

そもそもちゃんと彼女を出せるのかどうか……。


そろそろ大規模な見直し祭りも開催したいなぁとか思ってます。

やっぱり挿絵とかイメージとか、あった方が良いのでしょうか、とかも考えています。


何か読んでくださっている皆さまが思ったことがあれば、教えて欲しいなぁ。と思っていますので、気軽に感想などいただけると嬉しいですm(_ _)m

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