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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第三章 ニコさんと神々の遊び
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075 竜の巣

冬の童話祭りでマッチ売りの少女を書いていました。

面白おかしく書くつもりでしたが、残念ながら面白おかしくならなかったです。無念。


大変お待たせいたしました。

 ニコさん達は鯨に乗って空へ空へと昇ります。

 ゆっくりゆっくり昇っていきます。

 ドラゴン達は相変わらず階段の周りを旋回していました。

 しかし、彼らが飛び交う高さまで昇れば、この大きな鯨に気付いたようです。

 すると、そのうちの一部が熱線や火球を撒き散らしながら接近して来ました。


 迫りくる暴力の権化。

 対抗する術がなければあっと言う間に消し炭だったでしょう。

 しかし、そんな絶望的な状況にもかかわらず、彼女らは割と呑気な雰囲気を醸していました。

 防御という点において、アルメリアさんは優秀でした。そこにアルム君が加わることで、アルメリアさんの張った結界も守られているのです。


「いやぁ、これは素直に階段を登っていたらと思うとゾッとしますねぇ」

「いや、今でもゾッとしてるぞ」

「ハッハッハ」


 確かに、普通に階段を上っていたなら足場の悪い中360度彼らに囲まれ、この熱烈な歓迎を受ける羽目になっていたかもしれません。

 そう考えれば、一方向から迫ってくるだけならまだマシと言えるでしょう。

 ドラゴンが複数体同時にヒャッハーとばかりに迫ってくる状況はどう考えても悪夢でしょうけど。


 アルム君は朗らかに笑いながら、ドラゴンたちが撒き散らすブレスを魔術で相殺しています。

 優雅に杖を振り、的確に処理している様はまるで指揮者のようです。


「……全く、馬鹿げている」


 アルメリアさんはその光景に一言。

 それもそのはず、アルム君はとても簡単そうにしていますが、本当のところ、ドラゴンのブレスを防ぐだけでもかなりの労力が必要です。

 特に、火球ならばともかく熱線というのは上位種のドラゴンにしか吐けません。その威力は人間など一瞬で燃え尽きてしまうでしょう。そう言えばニコさんが直撃を受けて黒焦げになっていましたね。


 彼はそれを絶妙なタイミングで対処しているのです。一際無駄がありません。

 火球はほぼすべて撃ち落としています。


「なんかこんな感じの光景、どっかのTPSゲームみたいね!」


 ニコさんはといえば、ドラゴン達の飛ぶ方向に向かって適当に魔法を放っています。

 対ドラゴンとあって、いつもより気持ち火力強めで提供しており、当たり所が良ければドラゴンでさえ一撃で撃墜する程です。


 その種にもよりますが、大抵の場合ドラゴンは一体でも脅威です。

 硬く強靭な鱗は魔法に強い耐性を持ち、傷を付けるだけでも難しいものです。それを一撃というのは到底見られる光景ではありません。


「ああ、宇宙生命体から星を守る系の奴か。確かに似てるかもなァ。リアルで見たいとは思わなかったが」

「なんだぁそりゃ!それよりフィズィ、お前もぼんやり見てないで手伝ってくれ!」


 アルガスさんもニコさんが作った銃で応戦しています。

 こちらは一撃とはいきませんが、少なくともダメージを与えることに成功しています。

 命中精度の低さは如何ともしがたいですが。


「ンな事言われても、的が遠すぎンだよ。ニコ、俺にも一丁銃くれねェか?」

「アンタねぇ、自分で作りなさいよ!私は今忙しいのよ!」


 忙しいと言いつつ、煙管の煙を燻らせて、片手間にドラゴンの相手ですから、全くその様には見えません。

 今回は防御面に心配がないので余裕そうなニコさんです。極端に接近してくる個体もありませんし、接近してきたら優先的に狙撃しています。


 そんな彼女に、ちょっとバツの悪そうな顔のフィズィさん。


「……俺は物を創るのが苦手なんだよ」


 確かに、フィズィさんが何か物質を創るというのはあまり見ませんね。

 同じ魔法使いの力を持つと言っても、得手不得手もある様です。


 そんなフィズィさんの様子に、ニコさんは煙を吐き出し少しニマニマ。「仕方ないわねぇ」と、以前作ったスナイパーライフル、のようなものを二丁創りました。

 以前と同じく黒いのっぺりとしたボディのモノともう一丁、黒の代わりにシルバーの色違いの物です。

 アルガスさんに渡した物の様に、ちゃんとセーフティも付いており、安全対策もバッチリです。

 銃床の横にはやはり"nico=walker"と彫ってあり、ブランドを強調しています。本当にどうする気なのでしょうか。


「ついでにアルメリアのも創ったわよ」

「わ、私のも!?」


 二丁作ったのは、アルメリアさんの分も含んでいたようです。

 結界を維持しつつ、周りの非現実的な光景を眺めていたアルメリアさん。ニコさんの急な申し出に驚きました。

 アルガスさんが使っているモノは知っていたとはいえ、それを扱うには何か特殊な技能や力、それに膨大な魔力が必要な物だと思っていたからです。


「結界維持だけじゃ手持無沙汰でしょう?それに狙撃兵は多いに越したことは無いわ。使い方はフィズィに聞きくといいわ」

「あ、ああ。」


 因みにドラゴンブレス相手の結界維持は十分大変です。

 一般的に見て、アルメリアさんも非常に優秀です。何せ、一つの騎士団の団長ですからね。


「ヒヒ、サンキュー。俺は黒だな。俺のはノワール、お前のはアージェントでどうだ?」


 アルメリアさんの驚きは他所に、引っ手繰るようにニコさんから黒いライフルを受け取るフィズィさん。

 早速ライフルに名前を付けたようです。しかもアルメリアさんのも勝手に。

 実にマメなヒトです。


「アージェント……」


 未だ目を白黒させているアルメリアさん。

 彼女はニコさんから渡されたライフルを受け取ると、その感触を確かめて戸惑いがちに訊きます。


「……これは、一体どういう物なのか?」

「コイツはなァ、まァ端的に言や、アルガスが今使ってるようなもんさ。唯、あっちよりは狙いを付けやすいと思うぜ?」


 そう言ってフィズィさんはレティクルを覗き込み、魔力を流して引き金を引きます。彼女はちゃんとした構え方を知っているのか、以前のニコさんの様なヘマはしませんでした。まるで実際に使ったことがあるかのように、その構えは自然体です。


 引き金を引き、銃身には光の筋が。

 一瞬のラグと独特の発砲音。

 光弾が尾を引き、遠くにいたドラゴンの翼を直撃し、派手な爆発が起こりました。


「ヒヒ、当たったか」


 直撃を受けた翼はボロボロに引き裂かれ、片翼にダメージを負ったドラゴンは「Gyaaahhhhhhhhh」と悲鳴を上げると落ちていきました。


「……凄い物だな」

「ああ、発射までのラグは致命的だが、威力はまぁまぁだなァ。まァ、調整は後回しだ」


 フィズィさんは、驚いているアルメリアさんに、構え方や照準の付け方、撃ち方などを手取り足取り教えました。

 アルメリアさんは、それをぼんやり聞きながらも、教えられた通りに射撃の構えを取ります。


「魔力は少し流せばいい」

「少し?あんな威力のモノを撃ち出すのにか?」

「ええ、その銃は大気中の魔素を使うから、使用者の魔力はセーフティのアンロックにしか使わないわ」


 目標に照準を合わせ、指先をトリガーに掛け、本当に少しだけ魔力を流すと半信半疑に引き金を引きました。


「ッ!!」


 アルメリアさんの第一射です。

 それは狙いからは外れながらも、雲を引き裂き別のドラゴンに直撃、炸裂すると轟音が響きます。

 その一撃は、今まで何処か夢現(ゆめうつつ)に見ていた光景、つまり(ドラゴン)を一撃で葬るという結果を引き起こしたのです。まさにラッキーストライクですね。


 アルメリアさんは自分が引き起こしたその結果にわなわなと震えました。そして改めて相棒となった銃、アージェントを引きつった顔で見ます。


「こんな物、こんな物があったら。こんなに簡単に作れるのなら……」


 この時アルメリアさんは、自分の中の常識がもう悉く壊れる音を聞いたそうです。

 彼女は何とも言えない表情でニコさんを見詰めました。


「どうかしら?」


 当然ニコさんは得意気です。ドヤ顔です。


「どうかしら?ではない!全く本当にふざけている!貴女は世界を滅ぼす気か!?」

「私は魔王か何かかしら!?」


 確かにこんなものがポンポン量産されたら堪ったものではありません。アルメリアさんの気分は、銃が渡ってきた時の戦国武将みたいなものでしょうか。


「そういや、銃なら魔王軍の奴も持ってやがったな」

「なッ!?」

「まァ、こっちの銃の方が凶悪そうだけどな」


 喜んでいいのか良く分からない補足情報ですね。

 アルメリアさんはその凶報に、ノビリスにいる騎士団の団員達やベルメルさんの無事を願わざるを得ませんでした。

 もし敵がこんなものを持って大挙して来たなら、正に今目の前で起こっている光景がノビリスに降りかかるのです。あっと言う間に焼き払われてしまうでしょう。


「クッ!」

「アルメリア、焦るな。今は目の前の事に集中しろ。あいつらは必ずミラノベルグに逃れる。それに、以前見かけたとき、副長クラスの奴が一個持ってただけだ。量産はされてないだろう」


 アルガスさんは言いますが、それが希望的観測であることくらい本人も自覚していました。


「アルガス。そういう事言うならね、言った本人が暗い顔したら意味無いのよ!だからモテないのよ!」

「うるさいわ!誰がモテないってんだ!」

「とにかく、まずは自分が言った通り、目の前のことに集中しないと、ドラゴンに焼かれちゃうわよ」


 そう言ってニコさんは、魔法を放つと笑います。

 羽織をたなびかせ、悠然とした後ろ姿。その姿はやっぱりどこか無駄な自信に溢れています。


 アルガスさんもアルメリアさんも、そんなニコさんの姿に「ああ、そうだな」と頷きました。


「それじゃあ二人とも、あの無謀な蜥蜴たちを逆に丸焦げにしてやるわよ!」

「普通に考えれば、我らの方が無謀なのだがな」


 そうして、ニコさんが景気付けに放った魔法は、今までで一番眩しく、黄昏の空を切り裂いていきました。



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