067 アルガスさんの独り言
随分と遅くなってしまって申し訳ないです。
この話自体はほとんど書けていたのですが、ちょっと時間泥棒が現れたので、投稿が遅くなってしまいました。
緑の少ない、地肌の多い美しい山肌。「ギャヒャヒャヒャ」とか、「ケーケケケ」という、美しい鳥の鳴き声、自然の息吹を感じる強い風。煙草に火が全然着かない。
「なんかアレね、仙人でも居そうな山ね」
ニコは何故かわざわざちょっと切り立った岩の上に立って腕を組んでおり、バサバサと羽織が靡いている。
「そりゃいいんだがよ、あとどの位進みゃいいんだ?いい加減この鳥共、鬱陶しいぞ」
そう言って上空から美しい鳴き声もとい不気味な嗤い声を上げながら襲ってくる鳥、というかハーピー。それに何故か良く狙われるフィズィ。
ハーピーは面食いで、イケメンを優先的に狙うって都市伝説があるが、まさかな。というか、それなら俺を狙っても良い物だが……。
そんなしょうもない事を考えていると、ハーピーの嗤い声が俺への嘲笑に聞こえ、ちょっと凹んだ。そんな事を考えてしまうほど余裕がある。
「――!」
「ギャヒャーヒャ!」
「ケー!ヒヒヒ!」
「ッざってぇ!空ごと喰らえ、――夥蛇天翔!」
本当にいい加減に鬱陶しかったのか、魔法を使ったらしいフィズィ。彼女の周りから数多の光の筋が天へ昇り、轟音と共にハーピーを焦がす。目と耳が痛いので、そういった大技を使う時は一言欲しいところだ。
因みに周りにいたハーピーは全て一瞬で丸焦げだ。ドサドサ音を立てて地に落ちてその屍を晒している。
「ヒヒ、魔法ってのは全く便利なモンだな」
実際のところ、ハーピーはそれ程舐めて掛かれる魔物ではない。空から襲ってくるので対処しづらい上、その鳴き声には魔術が掛かっているからだ。
特に厄介なのはその鳴き声で、何も対処せずにただ無視して進めば、いつの間にか魔術にやられて幻覚に惑わされて崖を落ちたり、眠ってしまい他の魔物に襲われたりと、最悪命に係わる事態にもなりかねない。
本来ならこの山を登るうえで最も警戒すべき魔物の一つなのだが、フィズィにしてみればただの鬱陶しい鳥。ニコは気にも留めていない。初めて目にした時は何やら「ホントにいるのね!」とか興奮していたが、それっきりだ。
主に物理的に襲われているフィズィは蠅でも払うように対処しているし、魔術に関してはアルムが気にしなくていいと言っている。どうやら結界のようなものでその影響を抑えているようだ。
初めの内は奴らが出るたびに警戒していた俺とアルメリアだが、そのうち俺達も阿保らしくなってしまった。
もはや緊張感が全くない、いわゆるピクニック気分になりつつある。
勿論ハーピー以外にも警戒すべき魔物、例えばデッドツリーや通称岩トカゲ、ペトラサウラなどもいるのだが、それらはあまり動かずにいるため、見かけると嬉々として狙撃している。
一度山が崩れると困るので、火力を抑える様に言ったら、何やら細い光で狙撃していた。確か「超高温レーザー!……まんまね!」とか叫んでいた気がする。意味が分からない。
それでも、何とか警戒心を維持しつつ、周りを警戒している俺を誰か褒めてはくれまいか。
「フィズィ。アンタ、いちいち魔法に中二チックな名前付けてんの?マメな奴ね」
「ハッハッハ!僕は好きですよ、良く近所のポルタナ君(10)が自分でカッコいい技を考えて一人公園で叫びながら練習していたのを思い出します」
「うるせェぞクソ蝙蝠!アルム、テメェも焦げてみるか!?」
俺が人知れず溜め息をついていると、今度は呑気な会話が聞こえてくる。ニコの言う中二チックとは一体何を指すのかは分からないが、まぁ馬鹿にする類の言葉なんだろう。
フィズィの周りは青白い光がパチチ、と放電している。ある意味全然必要の無い方向性で緊張した空気が出ているのかもしれない。もうどうにでもしてくれ。
「アハハハ!フィズィ、アンタ髪逆立ってるわよ!?静電気!?」
「あ?ッチ、うるせぇなぁ。ってかテメェもんなとこでポーズ取ってねェで手伝えや!マジで焼くぞ?!」
「いやよ、メンドクサイ。それよりも写真撮ってSNSに上げるわ、超絶景!いいね!」
「阿保か!SNSなんてねェだろ!?」
「ねぇアルガス、ちょっと写真撮ってくれるかしら!?」
「聞けよ!もう勝手にやってろ、このクソ蝙蝠!アルメリア、干し肉寄こせ!」
「フィズィ、貴方どれだけ非常食を消費するつもりですか?」
全く、こいつらは二人揃うと本当に騒がしくなる。俺はついつい苦笑を漏らしてしまった。
アルメリアも呆れた顔で干し肉を取り出してフィズィに一つ放った。
「殿下、私の記憶が正しければ、この山はこんなピクニック気分で登れるような山では無かったのですが。というか、何だか想像していた道程とまるで違うのですが」
「……気にしたら負けだ。楽ならそれでいいじゃないか」
ここはイリシオの南、鳥人達の集落から更に先、ボーゴン山という禿山。この頂上に、セレスティアの入り口がある。その道のりは、険しい……はずだ。
「とりあえず、先に進もう。置いて行かれたら、それこそアルメリアが想像していた様な道のりになる」
俺がそういうと、アルメリアも溜め息交じりに「そうですね」と頷いた。
この調子なら、思ったよりも早く着きそうだ。その事に、喜びと少しの緊張が去来する。
「もう少し、もう少しだ」
人知れず呟いた俺に、アルメリアはやはり、「そうですね」と呟いた。




