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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
プロローグ 吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記
6/100

006 ニコさんと野球王国

2022/08/25 諸々修正しました。ストーリーに大きな影響はありません。

 どうも皆様ごきげんよう。私は今、原初の迷宮アビスの五層に来ているの!四層は霧の森だったけど、五層はなんていうか密林?ジャングル?そんな感じ。

 しかもしかも、ここにはなんと疑似太陽があるの!青空は無いんだけど、ドーム状に広がる天井の中心には燦々と輝く太陽的な何かがあるのよ!

 暗闇とか霧の中とか、そんなところにずっといた身としては、この環境とても眩しいです。眩しすぎます。

 今はさすがに慣れてきて、森の様子を楽しめる程度には目が慣れたけれど、五層についた瞬間は思わず叫んだわよ。「目が、目がぁ!」って。


 しかし、疑似とはいえお日様の下って新鮮ね。よく分からないけど、なんだか懐かしいような気もする。

 青々とした森は、生命力を感じさせる植物たちが生い茂っていて、木々は枝をこれでもかと伸ばし、疑似太陽の光にその葉を煌めかせている。なんというか、木漏れ日チュンチュンみたいな、いや、よく分からないわね。でも、光と影のコントラストは素直に綺麗だと思う。


 これだけなら、なんだか一見良さげな環境かなって思うじゃない?でもね、この素敵なジャングルには少し困ったことがあるの。

 それは、例えば今も私に石を投げまくっている大きなネズミとか?うん、凄い良いフォームで投げてくるのよ。投石というか、もはや投球。


 で、更に困ったことにね?そのデッドボール狙いのピッチャー、一匹じゃないの。集団なの。そこかしこから現れるネズミが私目掛けてプロ野球選手も斯くやって感じで投げてくるの。拳大の石を。

 いや、普通に死ぬわよこんなもの!景色を楽しんでる風に現実逃避してみたけど、そんな余裕一切ないわよ!


 私はとにかくランダムに動きながら森の中を飛び回る。体が小さいのが幸いして、今のところ何とか直撃は回避しているけれど、時折耳元で風切り音が、風切り音が、ヒィィィィ!さっさと安全な場所に逃げ込まないと絶対無理、死んじゃう死んじゃう。

 そうして私はしばらくの間、木々の間を縫いながら命がけの逃走劇に興じて(?)いた。


 どれくらい飛び回ったかしら。ようやくネズミの投球が収まったころ、私は小さな泉のあるところについた。随分と奥まで来てしまったみたい。

 泉の水は透き通っていて、金色に輝く小さな魚が日の光を反射して水面の景色を賑やかしている。


 この泉の水は奇跡の水。飲めばあらゆる病や毒、呪いなんかも体から抜けるらしい。

 今の私にはあまり意味のない効能だけれど、喉も乾いたことだし飲んでみようかしら。


 泉に口をつけるとヒヤリとした感覚が心地よい。

 コクコクと喉を鳴らして飲んでみたが、やっぱり何か起こるわけでもなし、つまり私は健康だったということね。


 喉も潤ったことだし、あとは何か食べられるものが欲しいわね。そう思った私は、いったん周囲に危険がないこと――主にネズミがいないことを確認してから近場に食べ物がないか探すことにした。

 幸いにもここは森の中で、私にはニャナの実の恩恵がある。そこらへんにはキノコが生えてて、毒の有無だって一目瞭然。外敵さえいなければサバイバルがイージーモードなのよ!

 ふふ、気分は森の賢者。もしくは森の魔女かしら。


 まぁでも、世の中そんなにうまいことばかりじゃないわよね。

 知ってたわよ。ここは森で、私は火喰蝙蝠。私が触った植物やキノコはあっという間に燃えちゃうの。私は焦げたキノコを齧りながら、この想定外の事象に頭を抱えた。


 でも私、よくよく考えてごらんなさい?私は元は吸血蝙蝠。日和ってキノコ喰ってる場合じゃないの。

 もちろんあのネズミ集団に飛び込むつもりはないけれど、他に良い感じの生き物いないかしら。みんな、私に栄養を分けてくれ!


 私は泉を離れて再び森をパタパタ飛んだ。視覚も聴覚も全開に周囲を探り探り飛んだ。

 ネズミはもちろんのこと、なんかヤバげな生き物を感知したらすぐさま離れるようにしていたんだけど、この五層、どうやら危険生物がかなりたくさんいるみたい。


 折角なので、少し紹介していきましょう。ニコさんの迷宮危険なモンスター紹介五層編、張り切っていくのだわ!


 はい、まずトップバッターはあのネズミ。バッターじゃなくてピッチャーだけど。

 やつら、トレビュシェットマウスっていうらしいんだけど、私がやられた通り集団で投石してくるの。私は幸い的が小さいから当たりづらいけど、当たったらひとたまりもないわよ。


 お次はトレビュシェットモンキー。モンキーと言いつつその体格はゴリラ的で、手頃な岩を投げつけてくるわ。

 ネズミたちとは仲が悪いのか、時折互いに石やら岩やら投げ合っている光景が見られるけど、軽く戦争よね。絶対に関わりたくないわ。

 因みに数的にはネズミの方が多いのだけれど、猿共はその頑強な肉体でネズミたちの投石に耐えながら岩を投げつけている。だから、意外にも互角の戦いが繰り広げられているのよね。


 次に紹介するのはバイオレンスゴリラ。いや、本当にバイオレンスゴリラって呼ばれているらしいのだけど、ネズミと猿が投手だったのにかわり、奴はバッターだったわ。

 体格も凄いの。ネズミのサイズが1メートル程度だとすると、猿たちは2メートルくらいかしら。ゴリラはさらに大きくて、3メートルは優にありそう。超デカい。

 それでね?ちょっと意味がわからないかもしれないけれど、バイオレンスゴリラはその怪力で手頃な木を引っこ抜いて、それをバットにしちゃうのよ。あらん限りの怪力で数メートルもある木を振り回す様は、もはや自然災害としか思えなかったわ。

 ちなみに個体数は少ないみたいで、私も一度しか見かけなかった。というか、あんなものが早々いてたまりますか!


 そして最後はスライリースライム。スライム的なのは以前も洞窟内で見かけたけれど、洞窟内にいたモノと比べてこっちのスライムは危険極まりないわ。

 まず第一に、透明な体なのであまり目立たないのよね。私はエコーロケーションを使うから音の反射具合で感知できるけど、ここの魔物たちはそうでもないみたい。

 一度猿が捕まってゆっくり取り込まれるのを見たわ。あの猿だって大概腕力があるのに、暴れる猿をものともせずに体内に取り込んでいく様は普通にホラーだったわよ。絶対にお近づきになりたくないわ。


 はい。さて、そんな感じで紹介してきたけれども、どうかしら?私、もう次に行っていいわよね?

 いや、別に誰に許可を取るわけでもないんだけれど、ヤバいのはいるし、森は火事にしそうだし。私はここにいちゃいけないのよ。はい、さっさと進みましょう。


 私は一人頷くと次の階層を目指すことにした。

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