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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第三章 ニコさんと神々の遊び
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054 アルム君とダンケルさん

 カチ、コチ、時計の音がする木の部屋。ロッジの一室のような部屋で、部屋の隅に設置されたベッドには銀髪の少年が寝かされていました。ベッドの脇に設置された窓は開け放たれ、秋風がカーテンを優しく揺らします。

 すると、部屋の扉が静かに開けられ、一人の男が入ってきました。

 その男の髪は蜂蜜のような金髪で、瞳は緑。銀髪の少年が浜辺で出会った兄妹と似ています。顔の雰囲気もどことなく似ているので、恐らくこの人が彼らの父親なのでしょう。

 男はその筋肉質で大きな体を椅子へと預けると、銀髪の少年を観察しました。


「アルム=カサバ、ねぇ」


 男の呟きが聞こえたのかどうかは分かりませんが、直後銀髪の少年の目が開きました。窓から差し込む明りに僅かに顔を顰めると、むくりと上体を起こします。

 そして少年は自身の体の状態を確認し、一息ついたのでした。


「おう、起きたか」

「ええ、おはようございます」


 銀髪の少年の言葉に男は一瞬目を丸くしましたが、ついで「カカカッ」と笑うと膝をポンと叩きました。


「随分キモが太いガキだな。俺はここ、クレルのダンケルってモンだ。宜しく頼む」

「ええ、宜しくお願いします。僕は――」

「ああ、アルム=カサバだろう?知っている。失礼かとは思ったが、ドッグタグを見させてもらった」


 今度は銀髪の少年、アルム君が目を丸くする番でした。

 すぐに表情を戻したアルム君は、ニヤリとするダンケルさんを金の瞳で見つめます。その表情は別段どうということのない無表情ですが、見方によれば真剣な表情に見えなくもないです。


「アルム=カサバっていや、橙色の道化師だとかうたってる酔狂なゴールドだろう?まさかこんなガキとは思わなかった。ウチの息子と然程変わらねぇんじゃないか?」

「僕をご存知でしたか。それは光栄なことです」

「見たところ、お前は普通の人間の様だな。一緒にいた女は、ありゃあ何だ?翼人とは羽の形が違う。魔族のように見えるが、首に組合のドッグタグが引っ付いててな。悪いと思ったがこっちも見させてもらった。まぁアイロンの奴なんざ、名前見ても分からんかったが」


 そう言うダンケルは、やっぱり悪びれた様子もなく「カカカッ」と笑います。


「彼女はどうしています?」

「ああ、隣でまだ寝ているさ。んで、何なんだ?ありゃ」

「彼女は……」


 その答えに一安心したアルム君は内心一息つきました。そして、ダンケルさんの問いになんと答えたモノかと思案します。しかしあまり時間をかけても怪しまれます。

 アルム君はイチかバチか、とりあえず思いついた事を言ってみることにしました。


「彼女は、彼女のあの羽はアレです。飾りです」

「流石にウソだろ!!」

「いえ、ほら。彼女、ああ見えて蝙蝠人間コンテストの第一人者で、昔から蝙蝠っぽい羽で夕暮れの空を飛んでみたいという願望が!しかもあの羽、超音波まで再現できる優れものです!」

「んなわけあるか!」


 真剣な眼差しのアルム君。もしかして本当にこの嘘で乗り切ろうというのでしょうか。ある意味男気を感じなくもないですね。


「……一応訊いておくが、嘘だよな?」

「嘘です」

「嘘じゃねぇか!!」

「ハッハ、ほんのジョークですよ」


 はい、乗り切る気は全くなかったのですね。何故か正直に嘘を告白していました。

 ダンケルさんも頭をポリポリ掻くと、「あのなぁ」と呆れ顔ですが、これは仕方ないでしょう。


「あたりめぇだ。何か言いたくない事情があるのは分かるが、こっちもそうも言ってられん。これ以上適当ぶっこくつもりなら、こっちもそれなりに構えないといけねぇ」


 不意に真剣な表情へと変わったダンケルさんの視線がまるで剣のように鋭くアルム君に突き刺さります。

 しかしアルム君も然る者。その視線を飄々と受け流すと「何かあったのですか?」と返しました。


「その口ぶり、知らねぇ振りしてんのかほんとに知らねぇのかわかんねぇが。つい数日前、首都が魔王軍に落とされた。……らしい」

「らしい?」


 ダンケルさんはひどく歯切れ悪く言いました。信じたくない気持ち半分、といったところでしょうか。


「ああ、ここはイリシオでも端の方だ。正確な情報の伝達がまだだが、俺にはちょっと古い伝手があってな。んで、各地で魔族や魔物の反乱も起きてるらしい」

「そういえば最近イリシオで魔族が増えているという情報を聞きましたが、まさか既にそんなことになっているとは思ってもみませんでした」


 いきなり爆弾のような情報が投下されましたが、アルム君は少しばかり驚いただけで然程慌てませんでした。

 こう見えてアルム君はこの大陸の情報をそれなりに持っているのですから、ある程度可能性を考えていたのかもしれません。


「しかしなるほど、これで合点が行きました」

「なんだ、何かあるのか?」

「私と彼女は先日ブリッサから船でベンタロンに向かっていたのですが、突如地獄鳥に襲われまして」

「地獄鳥…、バムバルジロフ鳥か!?」


 ダンケルさんもあの地獄のウンコ鳥を知っているようで、その顔は驚きに染まっています。


「ええ、そうです。それで、それはどうにかしたのですが、その後ブラックワイバーンの攻撃で彼女が海に落ちましてね。私は彼女を助けてこちらの浜辺まで飛んできたというわけです」

「……俄かには信じられんな」


 アルム君の話を聞いて更に表情を険しくするダンケルさん。顎を撫でつつ何か思案していると、突如隣の部屋から慟哭のような女性の叫び声が聞こえてきました。


「なんだ!?メヴィル!」


 慌てて立ち上がると部屋を出たダンケルさん。アルム君もベッドから降りると後を追いました。

 叫び声の発生源は隣の部屋で、ダンケルさんは「メヴィル!大丈夫か!」と叫び、扉を乱暴に開けました。

 そこでダンケルさんとアルム君の目に入ってきた光景は、おろおろと狼狽える金髪の女性の姿と、ベッドから裸の上半身を起こし泣き叫ぶ赤髪の女性、ニコさんの姿でした。


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