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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第二章 ニコさんと復活の魔王軍
50/100

050 ニコさんとバムバルジロフ鳥

2018/3/17 インデントの追加と加筆修正を行いました。

 上空で旋回するバムバルジロフ鳥を手で(ひさし)を作り眺めるニコさん。彼の鳥は相変わらず「ピュー」と甲高い声で鳴いています。


「確かに結構大きいけれど、そんなにヤバイ鳥には見えないわよ?」

「バムバルジロフ鳥が問題になるのは体の強さではありません。むしろそれだけなら大して強く無い部類です。彼の鳥が何故恐ろしいのかと言いますと、それは……」

「それは?」


 怪訝(けげん)な顔で(たず)ねたニコさんに対し、アルム君は一度瞑目(めいもく)するとギュッと握りこんだ拳を震わせます。


「糞が燃えるのです!」


 カッ!と音がしそうな程の勢いで開かれた目と共に、力いっぱい叫ばれた台詞。それはあまりにも凶悪で無慈悲なモノでした。


「着弾の衝撃で激しく発火する糞!」

「ひぃぃ!」

「燃焼によって凶悪なにおいを発生させる糞!!」

「いやぁ!!」

「更に腐食(ふしょく)性の有毒ガスで吸い込むと体内が焼けるというおまけ付き!!!」

「やめてぇぇぇ!!!」

「歴史上最悪の糞害(ふんがい)を発生させる恐ろしい鳥なのです!」

「ホント最悪じゃない!?」


 ノリノリで最悪な説明をするアルム君。ニコさんは両手で頬を挟みイヤイヤ叫んでいます。その顔は今や真っ青。この世の終わりを迎えるかのような表情です。確かにそんな爆撃によって滅ぼされる事態はこの世の終わりのような地獄でしょうが。


「まぁ、最後のは大量の煙を吸い込まなければ(ただ)ちに影響ないですが。しかし!」


 そう言って上空のバムバルジロフ鳥をビシッ!と指さすアルム君。


「正に地獄を生み出す凶鳥(きょうちょう)地獄鳥(じごくちょう)と言って差し支えない魔物です。三百年前はバムバルジロフ鳥によって滅ぼされた村や町が相当数あったとか」

「本当に嫌な滅ぼされ方ね!」


 私の村は、鳥の糞で燃えました。こんな事を言われたらどんな顔をすれば良いのでしょうか。


「ええ、とにかく貴女はこの事を船長に伝えてください」

「分かったわ、貴方はどうするの!?」

「僕はあの鳥を撃墜しつつ、これから来る群れに先行して対処します」


 そう言うとアルム君は、何処からともなく取り出した杖に片足を掛けて宙に浮きました。


「それでは、お願いしますよ!」


 そのままブワリと風を巻き起こして上空へと飛翔したアルム君。彼を見送ったニコさんは、急ぎ船内へ向かいました。当然、燃えるウンコがどれほど恐ろしいかについて力説するためです。




 警鐘(けいしょう)の鳴り響く船の上。

 逃げ惑う人々に脱出の準備と乗客の誘導を行う乗組員。

 それから、凶鳥バムバルジロフを迎え撃つ魔術師たちと船上を走り回り火を消して回る勇敢な者達。

 イリシオ行きの船は(おおむ)ねこのような形で分類できるでしょうか。


「クソッ!あのウンコ鳥め、三百年前に絶滅したんじゃねぇのかよ!?」


 船の上空では既にバムバルジロフ鳥の群れがギャーギャーと不気味な叫びを上げながら飛び回っています。時折降ってくる糞はアルム君の説明通り、着弾と共に激しく燃え上がって船を燃やします。


 バムバルジロフ鳥は三百年前に魔王軍が空爆に使っていた魔鳥(まちょう)です。

 その危険性ゆえに魔王が倒されたあと問答無用に根絶させられた魔物の一種で、以降この大陸で確認される事がありませんでした。そのため、船上の人々は、何故今更!と思うのです。


「とにかくウダウダ言わずに撃ち落とすしかねぇんだ!遠距離を狙撃できる魔術師は手を貸せ!他の奴らは糞が燃えたら消化しろ!狙撃できなくても水を使う魔術師がいれば消化を手伝え!」

「「「おおおおお!!!」」」


 幸いなのはこの状況でも動けるヒトがそれなりにいた事でしょうか。全く戦うことが出来ない女子供などを除き、ほとんどのヒトがこの事態を何とかしようと船上を駆け回っています。

 しかし、そんな人々の抵抗を嘲笑うかのように事態は更に深刻化していきます。


「おい!見ろ、アレ!!」

「ふざけんなチクショウ!十どころか五十位はいるじゃねぇか!」

「泣き言言うんじゃねぇ!とにかくやるしかねぇんだよ!やんなきゃ死ぬぞ!」


 初めは十程度の群れだったバムバルジロフ鳥ですが、今や五十を超える数に膨れ上がっていたのです。


「アイツらが飛んでくるのってイリシオの方角じゃねぇか!」

「くそぅ!どうなってんだよ!?ベンタロンは無事なのかよ!?」

「知るか!!今はそっちの心配してる場合じゃねぇだろがよ!」


 そしてバムバルジロフ鳥が飛んでくるのはこの船が目指すイリシオの方角です。

 すでにイリシオ側の港、ベンタロンまで一時間程度という所まで来ています。船へのダメージもある中、ブリッサまで戻るという選択肢はあり得ません。

 どうなっているのかは不明ですが、予定通りベンタロンまで向かうしかないのです。


「また来たぞ!撃てぇ、撃ちまくれぇ!」

「ああ、糞が!糞が落ちてくる!」

「おい、こっち燃えたぞ!消化班、早く来てくれ!」

「ぎゃああああああああああ!クソ!!火が、火が俺の肩に!!誰か消してくれよぉぉぉ!」


 徐々に被害が深刻化していく船の上は正に阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図でした。

 悠々と空を泳ぐバムバルジロフ鳥は醜い鳴き声を上げながら絶え間なく糞を投下し続けます。上空から降ってくる糞はボトボトと船に落ち、衝撃で激しく燃え上がった炎はすぐに船へと燃え移るので、すぐに消火しないといけません。

 しかし、そうして消火中のヒトのかたまりを狙って落としてくる糞もあり、最悪な場合直撃を受け、焼かれてしまう者も出てきていました。そのため海に身を投げるヒトもちらほらといます。


 更に、地上からの魔術の砲撃は精度に欠け、なかなか命中しません。バムバルジロフ鳥の数は思うように減らないのです。唯一空中で応戦しているアルム少年が的確に一羽一羽落としていますが、いっぺんに大きな数に対応できていないため、効率がいいとは言えません。

 そんな時、フィズィさんとアルガスさんに船の上に出てきました。


「あァ?なんだこりゃ」

「こいつぁまさか、バムバルジロフって奴か!?なんだってまた!」

「チッ!とにかく船が燃えたら(まず)いだろうが!」


 フィズィさんとアルガスさんがこの事態に気付くと、直ぐに対応を始めました。フィズィさんは水の大蛇を生み出すと、甲板を這わせて消火を手伝い、アルガスさんもニコさんから貰った銃で空飛ぶ的を狙ったのです。


 ニコさんはと言うと、いつの間にやら羽を広げ、アルム君と一緒にバムバルジロフ鳥の群れの中を飛び交っていました。


「ああもう、鬱陶しいわね!」

「正直糞以外は怖くないので、確実に処理してください!流れウンコに気を付けて!」

「流れウンコ!?」


 アルム君の魔法がバムバルジロフ鳥を焼き、ニコさんの八裂丸がすれ違いざまにバムバルジロフ鳥の首を落としていきます。珍しく八裂丸が戦闘で使われているようですね。


 そうこうしているうちに三十分ほどが経過し、ベンタロン側の岸が見え始めた頃。銃林弾雨ならぬ、鳥雲糞雨と言った状態は大方収まりましたが、船のいたるところが損傷していました。もうボロボロです。

 それでも大火事にまで発展しなかったのは、バムバルジロフ鳥の早期発見と消化班の目覚ましい活躍があったからでしょう。特にフィズィさんの水の大蛇はかなり有効だったようで、消化班全体の士気を上げる結果にもなりました。


「ッチ!ホントにクソな状況だなオイ!」

「お前ら!もう少しだ、もう少しだけ踏ん張るぞ!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」


 そうして収束が見えてきた頃、その希望を打ち砕くかのように、更なる災厄が訪れたのです。

 「おい、アレ…」と一人の男が指をさした先、そこにはひと際大きな影が空を舞ってこちらへ飛んで来るのが見えました。


「お、おい。ふざけんな、ふざけんなよぉ!?」

「アレ、ブラックワイバーンじゃねぇかぁ!!」


 その叫びとブラックワイバーンからレーザーのような熱線が放たれたのは、ほぼ同時でした。

 放電を伴って伸びる白い線。空を斬り裂き奔るその熱線の先には―――。


「おい、避けろ!クソ蝙蝠!!」

「え?」


 上空でバムバルジロフ鳥、最後の一匹を仕留めたニコさんがいたのでした。

 フィズィさんの叫びむなしく熱線の直撃を受けたニコさんは、その身体を真っ黒にして、煙を上げながら海に落ちてしまいました。

バムバルジロフ鳥は、こぺっとの頭に糞が落下してきたことがきっかけです。

あの鳥がいなければ、この鳥はきっと誕生しなかったでしょう。

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