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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
プロローグ 吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記
5/100

005 ニコさんと知識の木の実

2022/08/25 諸々修正しました。ストーリーに大きな影響はありません。知識の実はニャナの実という名前が付きました。

 うにゃうにゃ言って火の玉を飛ばしてくる杖を持った犬面!アレは一体何なのかしら。

 そういえば、人面犬ならぬ犬面人ってコボルトとか言うんだっけ?よし、アイツはうにゃうにゃコボルトと呼びましょう。

 益体もないことを考えつつ、私は火の玉を空中でアクロバットに避け、衝撃波で応戦する。パウパウ言っちゃう。


 でも少し困ったわ。衝撃波は距離が離れているだけ威力が下がる。かといって、あんまり近くに行く火の玉が当たっちゃうし……。

 うーん、ここはやっぱり大人しく逃げようかしら?ちょっとめんどくさくなってきちゃった。でも、もしかしたらあの杖を奪ったらうにゃうにゃできなくなるのかしら?


 私はうにゃうにゃコボルトの右手――つまり、杖を持つ手を狙って衝撃波を放つ。決死の急降下爆撃よ。

 狙い違わず放たれた衝撃波はコボルトの右手に直撃。耐えられなかったコボルトは私の狙い通りに杖を取り落した。

 私はそのままの勢いで、誰よりも早く床を転がる杖を奪った。


「アアアアア!」


 うにゃうにゃコボルトが悲し気な叫びを上げた。ふふ、ざまぁだわ!

 よし、このまま逃走よ!遠距離攻撃がなければ怖くないもの!


「オイテケ!オイテケ!」


 うにゃうにゃ言ってた奴も他の奴と同じ、「オイテケ」になっちゃったわね。あぁおかしい。


 奪った杖は私の体には大きかった。しばらくは咥えて飛べたんだけど、長い時間は辛いわね。

 杖の重みでいつも以上にフラフラ飛んでいくと、私は一層霧の深い場所に迷い込んだ。一寸先も見えないわ。

 でも、私には視覚以外の優れたセンサーがある。そう、エコーロケーション!目が良くなってからは視覚をメインに使ってたけど、こういう時は凄く役に立つのよね。

 周囲の状況を確認してみると、どうやら付近にとっても大きな木があるということがわかった。樹齢何年かしら。


 霧が濃いせいか、この付近にはあまり他の生き物は寄り付いていないみたいだけど、私は安全を考慮してその大きな木の上で休むことにした。

 その木は幹も枝も何もかも大きくて、ちょうどいいから杖も一旦置かせてもらった。

 

 ああ、頑張って飛んできたから結構疲れたみたい。

 丁度休んでいた枝に青く大きい木の実が一つ成っている。瑞々しい果実だわ。今はこれで喉を潤そうかしら。

 私はその青い木の実をもぐと、「あーん」と口を開けて齧りつく。シャクリと小気味の良い音を立てた実は甘みと酸味がほど良い感じのそれは美味しい木の実だった。

 うん、これは当たりね。これ、なんていう木の実なのかしら?そう思ってマジマジと見ると、不意にこれが何か分かった。分かってしまった。


 ニャナの木に宿るニャナの実。通称、知識の木の実?


 ああ、これを食べてしまうとこの世界の集合意識にアクセスできるようになるらしい。自分が知らないものの情報でも集合意識から情報を引っ張り出すことができるようになるとのことで、え?何それ、凄くない?つまり、知らないことは何もないってことでしょ?

 しかも、このニャナの木は世界に一本だけしかないらしい。つまり、私が今羽を休めているこの木だけ。ニャナの木があるのは原初の迷宮アビスの四層。あら?なんと、現在地が分かってしまったわ。

 うわー、チートよチート。小心者の私はなんだかいけないことをしてしまったみたいで冷や汗が止まらない。

 えー、これ、食べて良かったやつ?大丈夫?後で命狙われたりしない?


 あ、でもよくよく考えれば私ってば常に命狙われてるじゃない!色んな生き物に!ってことは別に何も変わらないかしら?うんうん、ひとまず安心だわ。全然大丈夫じゃないけど謎の納得感に包まれたので良しとしよう。


 次いで私はうにゃうにゃコボルトから奪った杖を見た。これは一応魔法の杖になるようで、魔力を流すと誰でも火球を生み出すことができるらしいわ。

 そんなことができるのは、先端に付いた火の魔石のお陰らしい。でも、それ以上のことは知ってるけど分からないみたいなよくわからない状態になったので、細かいことは分からなかった。あれね、教科書丸暗記したけど理解はしてない的な。なるほど、情報を引っ張り出すといっても理解するだけの素地がないと結局上っ面しか分からないようね。


 で、この魔石っていうのは実は今まで私が食べてきた光る石のことみたい。

 魔石は魔物の力の根源、生命の石、混沌の塊。魔物は魔石を取り込むと、魔石に凝縮された魔力を取り込み、自らの力として得ることができるらしい。なるほど分からん。でも、だから私は魔石を食べると調子が良くなったのかしら。


 どうやら、私が今まで食べてきたのは属性に偏りのない魔石だったようだけど、今手元にあるのは火の属性に寄ったもの。つまり、これを食べると火の属性の恩恵を得ることができるということ。

 私は杖の先端から魔石を外すと迷わずそれを飲み込んだ。そうすると、キラキラした石を食べた時と同じ様に体が熱くなって、力が湧いてきて、ああ、熱いわ、とても熱い。まるで体が燃えるようよ!!


「キー!!」


 私は雄叫びを上げて両手を振り上げた。すると、何と両の羽から火の粉が散って、あら綺麗。まるで体が燃えるようだなんて、本当に燃えてやがりますわ。

 ああ、なるほど。火の魔石を取り込んだ私は火の力を得たのね。ふふ、私は危険な女、気安く近づくと火傷するわよ。というか私は何で火傷しない?ああ、そういう生態だから?火喰蝙蝠っていうんですって。へー、ふーん、ほー。


 火喰蝙蝠は体を構成する魔素の属性が極端に火に偏っている。だから、体が常に燃えてる感じになるらしい。

 ちなみに魔素って言うのはよくわからない。わかるけどわかんない。まだうまく理解できないってことね。なんかとにかく小難しいわ。


 でも、この体は結構面白いの。さっきも言ったとおり、体の一部が燃えたりするけど火傷もしないし熱くて堪らないわけでもない。ほら、火だって吹けちゃう。

 でも火喰蝙蝠って名前は少し変。別に火は食べないし、逆に吐いてる。なんだかとっても変よ変!


 とりあえず私は少しばかり新しい体に慣れるために運動して、以前とそんなに変わらないことを確認すると、しばらくここで休憩することにした。さすがに少し疲れたわ。


 でも、休憩したら迷宮を進むのよ。これはもう決定事項。もっと先に進むのよ。

 集合意識からアビスのことを知れる今、私には新しい目的ができた。どうやらここにはまだ、ニャナの実以外にも面白いものがあるのだわ。折角の知識、折角の一人旅、やりたいことをやりましょう。


 私はワクワクとした気分のまま、ニャナの木の上で眠りについた。

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