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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第二章 ニコさんと復活の魔王軍
45/100

045 ニコさんとカレー

金属を打ち鳴らすキンとした甲高い音。

それが散発的に不規則に響きます。

フィズィさんのナイフとアルガスさんのバスタードがぶつかり合う音です。


「ヒヒッ!!」

「シッ!!」


フィズィさんの笑い声とアルガスさんの鋭い呼気。

その間にも数合。

バスタードとナイフでは間合いも異なれば扱いも違いますが、フィズィさんは敢えてアルガスさんの間合いで剣を受けます。

コレだけでフィズィさんがどれだけ馬鹿げた力か分かると思いますが、加えてアルガスさんは魔術で体を強化しています。

流れるようにアルガスさんの剣を逸らし、躱し。時折反撃するフィズィさん。

開いた間合いはすぐにシュルリと埋めて、つかず離れずジャレるようにアルガスさんとの攻防を演じています。

アルガスさんは割と真剣な面持ちですが、フィズィさんはとても楽しそうです。


そんな二人を柔らかな草の上に座って眺めるニコさん。

煙を燻らせている顔は興味があるんだか無いんだかわかりませんが、特に退屈している様には見えません。

煙管を吸うとジジジッと小さく音を立てて橙色に染まる火種。

吸うのを止めると火種と口からポッと漏れる紫煙は広がる様に空に消えて。


「ふぅー…」


ゆっくり吐き出された煙は涼やかな風に攫われてすぐに空気に溶けてしまいました。


「いい天気ねぇ」


ニコさんが言うように空はまさに秋晴れと言った様相で、イワシの群れのような巻積雲がふわふわ空を泳いでいます。


三人は話し合いの結果ニコさんを後衛としてフィズィさんが前衛。

アルガスさんは基本的にフィズィさんのサポートで状況に応じて臨機応変に、サッカーで言うとミッドフィルター的なポジションという結論になりました。

そこで、基本前衛となる二人はお互いの動きと癖を知るためにと軽く打ち合いをしているわけです。

フィズィさんもアルガスさんも防御と言うよりは回避、守りよりも攻めというタイプです。

どちらかが引き付けて、という事ではなくお互いの攻撃の隙を補い合うような連携が理想でしょう。

そして性格上、フィズィさんが自由に動いている間を縫ってアルガスさんが陰から刺すようにというパターンが最有力です。

そう思ってアルガスさんはフィズィさんの一挙手一投足を魔術で強化された視覚で追って、的確に対処し反撃します。


「ヒャハハ!!お前、やっぱりやるじゃねぇか!もう少しギア上げても良さそうだなァ!?」

「ちょっと待ってくれ!」


アルガスさんが付いてこれることを良い事にフィズィさんはどんどんそのスピードを上げていきます。

フィズィさん自身も自分がどの程度動けるのか把握しきれていないようで「この体はスゲェなァ!?」と大興奮です。


ニコさんは二人のジャレ合いを眺めながらベルモスさんの持っていた銃と魔法について考えていました。


「ああいうのがあるといいわよねぇ。支援火器って言うのかしら…」


魔法は万能ですが、個人の資質が問われます。

資質とは想像する力。

自分が想像できないモノや現象は魔法で造ったり起こしたりすることができません。

それにただ想像するのではなく、強力な意志を持って魔素に干渉する必要があります。

つまり魔法を使うよりも決められた術式や作法で決められた効果を生み出せる魔術を使う方が遥かに簡単なのです。


ぼんやりと魔法について考えているとニコさんのお腹がクルクルと鳴りました。


「お腹空いたわぇ。…魔法が料理だとすると、魔術はレトルトよねぇ」


ニコさんはより激しさを増した剣戟の音をBGMに何か良いアイデアは無いかと考えました。

伸ばした足がふらふら揺れています。


「何だかカレーが食べたくなってきたわ」


ご飯を炊いて。

野菜を切って、お肉を切って。

炒めて煮て。

ルーを溶かしてまた煮込んで。

ご飯にかけたら出来上がり。

もしくはレトルトパックをあっためて、ご飯にかけたら出来上がり。


ニコさんのお腹が更にクルクルと空腹を訴えます。


「どっちでもいいけど、やっぱりレトルトのが楽よねぇ。あー、カレー食べたーい。魔法でカレー召喚できないかしら。今度やってみよう」


そんな事を呟くと煙管から火の消えた灰を落としてそのままゴロンと草の上に仰向けに倒れました。

煙の代わりに草の香りを胸いっぱいに吸い込むと少し噎せ返りそうになる程濃い香り鼻孔と肺を刺激しました。

空を仰ぐと真上を通るいわし雲。

「海鮮カレーも良いわよねぇ」と呟きが漏れます。

完全に思考がカレー色に染まっていますね。


「ふんふ~、お家に帰ろ~…」


サァァと吹き抜けていく風と虫の声。

何となくノスタルジックな気分に浸りながら良く分からない歌を口遊んでいたニコさんですが、突然何かに気付いたのかハッとした表情になりました。


「魔法を魔術にしちゃえばいいんじゃない!?」


ガバッと起き上がるとそんな事を叫びました。


「そうよ、魔法の発動に毎回力を使う必要ないじゃない!『こういう効果を発揮する魔術』って、効果と発動方法の紐づけを魔法で定義しちゃえば良いんじゃない!?天才か!?」


まるで賢すぎる自分が怖いとばかりに体を抱きしめ震えるニコさん。

暫くそうして自分の賢さに打ち震えていたニコさんでしたが「ふっふっふ…。車輪の再発明なんて馬鹿らしいわ」と呟くと、早速検証を始めるのでした。


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