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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第二章 ニコさんと復活の魔王軍
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036 ニコさんと今後の予定

鍛冶屋モグラディウスを出た三人は今後の予定を話すために近くにあった適当な料理屋に入りました。

朝ご飯を食べてからはまだ然程時間は経っていませんでしたが、時間的には良い時間です。

木製の丸テーブルと椅子が適当に置かれた大衆食堂の様で、丁度混み始めてきた頃合いなのか既にいた客たちは割と騒がしく、店の中は賑やかな空気となっていました。


「さて、何を食うかね」

「任せるわ!美味しい奴!」

「俺も良く分からねぇからな、同じもので良いぜ」

「んなら、まぁこのオススメって奴でいいか。それと酒、お前らも飲むだろ?」


奥の席へと通された三人はとりあえずメニューを広げましたが、正直ニコさんとフィズィさんはどれがどんな料理なのかいまいち分からないのでアルガスさんが選んだものを三人前頼むことにしました。

まぁアルガスさんも初めてのお店だったので、注文したのはオススメメニューでしたが。


料理を待つ間、アルガスさんとニコさんはそれぞれ煙草に火を着けると煙を燻らせますが、フィズィさんは手をパタパタを振ります。


「よくそんなクセェもん吸えたもんだな。鼻が曲がる」


蛇は煙草が苦手という話がありますが、フィズィさんも煙草の煙が好きではないようです。

するとニコさんが嬉々として煙管の煙をフィズィさんに吹きかけます。

現代日本ではスモハラで訴えられるような迷惑行為ですね。

フィズィさんは「テメェクソ蝙蝠!」とご立腹の様です。

しかしここは日本ではありませんし、スモークハラスメントなどという概念もありません。

ニコさんはケタケタ笑っていました。

アルガスさんはニコさんを半目で見ながら、然り気無くフィズィさんの方に自分の煙が行かないように配慮していました。

これが最低限のマナーというものでしょう。

まぁ、そもそも火を消せよ。という意見はごもっともですが。


それはさておき、暫くすると注文していたお酒と食事が運ばれてきました。

ニコさんとフィズィさんが美味しそうな料理を目の前に我慢などできるはずもなく、とりあえず三人は料理を食べながら話をすることにしました。

グラスを軽く打ち合い、カランと音を鳴らすと琥珀色のお酒で舌を湿らす三人。


「昼間から酒なんて贅沢よね!」

「あー、これぞ至福って奴か。アビスにいた頃じゃ考えらんねぇ、人間様々ってか?」


元魔物の二人はご満悦の様ですが、アルガスさんは苦笑いです。


「まぁ、久しぶりの街だし少し贅沢してみたんだが金はもうほとんど無い。酒はそれ一杯だからな」

「あー?ケチケチすんなよ」

「いや、これにはちょっと理由があってな」


アルガスさんは少し無精ひげの生えた顎をなぞりながら決まりの悪そうな顔をしています。


「俺達が目指すのはセレスティア、フラウの解放になるわけだが。セレスティアはイリシオにある翼人領の山、霊峰シエロにあると言われている。イリシオまで陸路だと海岸沿いを大きく迂回しないといけないが、マクリアから少し西に行った港町ブリッサから船で海路を使えば二、三日くらいで着く。陸路で歩きだと二月くらいは掛かっちまうから、出来れば船を使いたい」

「「船?」」


二人は船という言葉に反応しました。

ニコさんなんかは若干身を乗り出しています。


「いいわね!旅と言えば船!豪華客船ね!?」

「いや、なんだそれ。まぁそれは良いんだが、船に乗るには当然だが金がいる。確か一人金貨3枚は必要だったはずだが、残念ながら今の手持ちはそこまで無いし、船に乗るのだけで全部使っちまう訳にもいかない」


アルガスさんの金無い宣言に対し、フィズィさんは「密航すりゃいいだろ?」と呆れ顔です。

多分呆れたいのはアルガスさんの方でしょう。

ニコさんも「密航イベントね、それもアリだわ」と若干ノリ気なのでアルガスさんの前途は多難です。

そりゃ溜め息の一つも漏れてしまうというものです。


「いや、しねぇから。まぁ、そんなわけでここらでちょっと金を稼ごうと思ってな」

「アテはあんのか?」

「また草でも取りに行くのかしら?」

「いや、もう少し割のいい仕事を探そうとは思っているが、余裕をもって金貨15枚は持っておきたい」

「めんどくせぇからニコの服剥いて売っちまえばいいんじゃねぇか?こないだの商人にはそれなりの値で売れたんだろ?ついでに剥いたニコも売れば一石二鳥だ」

「何であたしの剥くのよ!何でそんな自信満々な顔なのよ!?」


アルガスさんはフィズィさんの提案を首を振って否定しました。

信条的にも心情的にも却下、というのがアルガスさんの気持ちでしょう。


「いや、ソレはちょっと。…やるとしても最後の手段だな。マクリアにはちょっとした金になるものがあってな、依頼ついでにソイツを探せば割と直ぐに目標額には到達するはずだ」

「最後の手段なの!?剥かないでよ!」

「んで、その金になるものってのは何なんだ?」


アルガスさんはフィズィさんの問いかけに少し口の端を吊り上げました。

取り合えずニコさんの叫びは無視されるようで、すっかり拗ねてしまったニコさんはブツブツとメインディッシュのステーキに齧りつきましたが、お肉が美味しかったのかすぐに機嫌が直りました。

実にチョロいです。

それを他所にアルガスさんは一言こう呟いたのでした。


「廃鉱山だよ」





昼食を食べ終えた三人は、とりあえずマクリアの大陸互助組合の支部へと足を運びました。

テロスと同じか、それ以上の広さがあるマクリアの支部は様々な人でごった返していました。

三人の目的は二つ、仕事探しとフィズィさんの登録です。


実はフィズィさん、ニコさん達と合流するまでは街や村に勝手に侵入していたのです。

まぁテロスでは<最果ての風>とかいう良く分からない人たちにドナドナ街まで連れていかれ、ニコさん達と合流してからはアルガスさんが身元を保証し、若干多めの手数料を支払うことで村や街に入っていたので、実際に不法侵入したのはアクリのみですが。


登録で問題になるとしたら、フィズィさんが魔族だとバレることですが、バレたとしても通常ならアルガスさんが身元の保証を請け負えば済む話です。

幸いここに来るまでに指名手配されるようなことはしていないという事なので、まぁ問題は無いだろう。と判断したのです。


「んじゃあ俺はフィズィの登録に付き添うから、嬢ちゃんはこの辺で待っててくれ」

「はいはーい」


二人が行ってしまうと、ニコさんは軽いフードコートみたいになっている休憩所で煙をプカプカ吹かしていました。

すると一人の少年がニコさんに向かって歩いてきたのです。

橙色で合わせたツバ広のトンガリ魔女帽子にゆったりとしたポンチョ。

ポンチョの下には黒を基調としたローブを着ており、何となくハロウィンみたいな印象のを受ける出で立ちです。


帽子のツバを持ってゆっくり歩く姿は何だかとっても気取っています。


「初めまして、レディ」


まだ声変りが済んでいないような高い声で呟かれた台詞はとてもキザったらしくニコさんの耳に届き、帽子の縁を人差し指でクイッと持ち上げた少年の瞳とニコさんのオッドアイが交差しました。

ニコさんが少年を見ると、少年は帽子を取ってニコさんに恭しく流れるような礼を取りました。

綺麗に切り揃えられた灰色の髪がハラリと零れます。

その所作は堂に入っていますが、どこか芝居じみていてニコさんはちょっと面白い子ね!と思いました。


「僕はアルム=カサバ。以後、お見知りおきを」


そして勝手に自己紹介した少年、アルム君は不敵に笑うのでした。

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