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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第二章 ニコさんと復活の魔王軍
34/100

034 ニコさんとマクリアの街

マクリアの宿の一室。

アルガスさんは悶々とした眠れない夜を過ごしていました。


その日、マクリアに着いた三人は既に日も傾いていた事もあり、適当な宿を探すとダブルベッドの置いてある部屋を選びました。

ニコさんとフィズィさんがベッドで、アルガスさんは椅子で眠るつもりでした。

大変体に悪いですね。


「ベッドよ!!」


部屋に入るなりそう叫んでベッドに思いっきりダイブしたニコさんは、(しばら)くふかふかな布団の感触を楽しんでいましたが、これまた唐突に叫びました。


「血が吸いたい!」


これにはアルガスさんがビクッとなりましたが、フィズィさんはニヤニヤとベッドに腰かけました。


「何でかしら、今まではそんなこと無かったんだけど。アレね、牙が疼くわ!」

「そりゃ、一度体が血の味を覚えたからなぁ」


ニコさんは「ふーん」と舌で牙をペロペロと舐め回しましたり、牙と歯を擦り会わせたりして気をまぎらわせていました。

蝙蝠の時の吸血欲は単なる食欲でしたが、今感じている吸血鬼としての吸血欲はまた異なるようで、ニコさんはなんとなく不思議そうな顔をしています。

ニコさんが牙をカチカチ鳴らしていると、フィズィさんが首筋を晒してニコさんを誘惑します。


「俺の血ぃ吸うか?」

「…いいの?」

「ヒヒ、少しにしとけよ?」


そう言ってフィズィさんがニコさんの隣に転がったので堪りません。

ニコさんはまるで蝙蝠時代のように「キー!」と叫ぶとフィズィさんに覆い被さって、首筋にそっと牙を突き立てました。

するとフィズィさんから「…ん」と吐息が漏れます。

ぴちゃぴちゃと少しずつ溢れる血を味わうように舐めるニコさんに、血を吸われるのが気持ちよいのかベッドの上で身をよじらせるフィズィさん。

普段はしょうもない言い合いばかりしているというのに、いまいち二人の関係性が分かりませんね。


次第にはお互い求める様に体をまさぐり合ってくんずほぐれつ始めるから大変です。

何がってそれは、それを目の前で見せられているアルガスさんがですが。

いきなり始まったアダルトテイストな吸血シーンに困惑している彼でしたが、とうとう耐えきれずに部屋の外へと飛び出しました。


「おいおい、吸血鬼の吸血ってあんな感じなのかよ…。聞いたことねぇぞそんなの!?」


そうして頭を抱えて部屋を飛び出したアルガスさんは一階の酒場でしばらく酒を飲んで時間を潰しました。

そうして暫くした後に部屋へ戻ったのですが、アルガスさんを迎えてくれたのはベッドの上で爆睡している着衣の乱れたニコさんとフィズィさんというこれまた何とも言えない光景でした。


ドアを開けた瞬間そのままそっと閉めてしまいたい衝動に駆られましたが、この二人を放置するという危険はなるべく冒したくありません。

さっきは思いっきり逃げましたが。

仕方なくアルガスさんは椅子に座って腕を組むとそのまま眠ろうとしたのですが、寝息に交じって時折聞こえる吐息や寝返りの時の衣擦れの音が、アルガスさんに先程の光景やら何やらを思い出させてしまいます。


そうして冒頭へと戻るのですが、アルガスさんがそうやって(しばら)く悶々としているとニコさんの様子が少しおかしいことに気づきます。

何やらうなされているようで、うんうんと唸っているのです。

額に汗まで浮かべているので相当嫌な夢でも見ているのでしょうか?


「ううぅッ!」

「…嬢ちゃん?」


勿論アルガスさんの呟き程度では起きなかったのですが、暫くの間うなされていたかと思うと突如ガバッ!と起き上がってキョロキョロと辺りを警戒し出したニコさん。

表情にははっきりと怯えの色が浮かんでいました。


「魔女!魔女は!?」

「…寝ぼけてんのか?」


まぁ寝ぼけている以外の何物でもないでしょうが当のニコさんは真剣です。

アルガスさんを見ると勢いよく捲し立てました。


「ちょっと、魔女見なかった!?なんかでっかいトンガリ帽子被った!」

「いや、見てねぇけど。夢でも見たのか?」

「は?!…夢?」


するとニコさんはアルガスさんの言葉に間抜けな顔を晒しました。


「夢、夢ねぇ」


ニコさんは自分の体をペタペタ触りました。

ついでに口元もゴシゴシ拭います。


「確かに、夢だったのかしら。…夢ならもっといい夢見せなさいよ!!」


そうしてそんな理不尽な事を吐き捨てるとそのままベッドに倒れこみ、ニコさんは再びスースー寝息を立てました。

これにはアルガスさんもキョトンとしてしまうというモノでしょう。

何せ、全く意味が分かりません。


「…あんだってんだ」


しかし、今のしょうもないやり取りのお陰でアルガスさんのやり場のない気持ちもいつの間にやらどこかに行ってしまいました。

お陰で暫くすると、ようやく彼も眠りにつくことが出来たみたいです。

何やらとてもいい夢が見れたらしく、翌日恥ずかしくてニコさんとフィズィさんを暫く直視できなかったというちょっとした事件が発生しましたが、それはまた別のお話です。




さて、一夜明けると三人はのんびりとした朝食を取った後、とりあえずマクリアでの最初の目的をこなしに行きました。

モグ爺さんのお孫さんです。

モグ爺さんから貰った手紙には、お孫さんの名前と住所が書いてありましたので、それを手掛かりにまずはお孫さんを探して誕生日プレゼントを渡すことにしたのです。

渡すと言っても、サイズやらなにやらがあるのでまだ用意もしていないのですが。


「こういう時は街の役場に行くのが一番早い」とアルガスさんが言うので、最初の目的地は役場になりました。

一般常識的な話になると誰よりも役に立つアルガスさんです。

今回もパーティを引っ張る先導役で、欠かせない人材であることは否めないでしょう。


「ベル=モグレストさんですか。えーと、住所は5番地の1ですか。ああ、ここを出て左に真っ直ぐ行ったところにあるモグラディウスという鍛冶屋ですね。ここの近くですし、直ぐに分かると思いますよ」


役場で住所を確認すれば、そんな答えが返ってきました。

ニコさんはモグ爺さんのモグはモグレストのモグなのか。とどうでもいいことを考えていましたが、実はモグ爺さん、モグ=モグレストでモグモグしています。

まぁどうでもいいですね。


役所から出て一分ほどでしょうか。

鍛冶屋モグラディウスは直ぐに見つかりました。

それなりに繁盛しているのでしょうか、お店は結構大きいようです。

カランカランとドアベルを鳴らして中に入れば、色々な種類の武具が整然と並んでいました。


「これは凄いな」


アルガスさんも驚きの品揃えの様です。

フィズィさんも興味を引かれたのか、一人店内を物色し始めました。

ニコさんはというと、二人の事はとりあえず放っておいて取り合えずと会計カウンターにいる男性に声を掛けました。


「ベル=モグレストって人はいるかしら?」

「御用件は何でしょうか?」

「モグ爺さんからちょっと頼まれごとしてるのよ。コレを渡してくれるかしら」


男性は「モグ爺さん?」と首を傾げましたが、封蝋を見て顔色を変えました。


「しょ、少々お待ちください!!」


「チーフ!チーィィフ!!」と叫びながら男性が奥へと引っ込んでいくと、手持無沙汰になったニコさんはカウンター近くに飾ってある一振りの刀を見つけました。

その美しい刀身はどこか八裂丸に似ているなぁ。と腰の八裂丸を抜いて見比べました。

確かに波打つ様な美しい刃文はとても似ているように思えます。


「んー、どっちも綺麗だけどやっぱり八裂丸の方が綺麗に見えるわね。愛着かしら?」


まだ猪料理にしか使ったことのない八裂丸ですが、自分の持ち物というのは愛着の沸くものです。

贔屓目というモノもあるのでしょう。

そうして暫く八裂丸と飾ってある刀を見比べていると、奥からさっきの男性と"ちみっちゃい"外見の女の子が出てきました。


「お爺ちゃん!!」

「誰がお爺ちゃんよ!!」


女の子は出てくるなりあんまりにもあんまりな言葉をニコさんに浴びせました。

普段は可愛いだの綺麗だのと誉めそやされているニコさんですが、まさかお爺ちゃんなんて言われるのは夢にも思っていませんでした。

そんなわけでニコさんは初対面の女の子に全力でツッコむ羽目になったのでした。


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