表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第一章 ニコさんと初めてのお外
31/100

031 大陸互助組合の憂鬱

閑話です。

「はぁぁぁぁぁぁぁ…」


その日、大陸互助組合テロス支部では何度目かのとても深く長い溜め息が漏れました。

発生源は先日ニコさんの登録を担当した受付の女性です。

彼女の名前はベラ=カイネル。

黒髪をミディアムボブに整えた、鉄壁の営業スマイルが可愛いと評判の「テロス支部:マジの笑顔を見てみたい受付嬢ランキング」第三位の女性です。

そんな女性が周りも気にせず全力のため息など、彼女を知る人からすればいったい何があったのかと気になって仕方無いでしょう。


まぁ、既にこの支部ではかなりの噂になっており、大抵の人は原因を知っているのですが。

周りの男性職員や、依頼を探しに来た男性陣は、「お前ちょっと慰めてこいよ」と、お互いにつつきあっていました。


「もー、いつまで気にしてんのよ。支部長も仕方無いって言ってたじゃない」

「でもエレナァ…」

「私もちょっと見かけたけど、ちょぉっと見ない格好してたけど、普通の女の人にしか見えなかったわよ」


エレナと呼ばれた女性は茶色い髪をポニーテールに括った活発そうな見た目です。

因みに先程のランキングには載りませんでしたが、「テロス支部:依頼失敗時に慰めてほしい受付嬢ランキング」では堂々の一位に輝いています。


「それでも完全無欠に確認漏れだったのよ!?しかも吸血鬼の始祖なんて!!生きる災害(リビングハザード)じゃない!!」

「いや、普通そんなの組合に堂々と登録しに来ないわよ。それにまだ変な男が話しただけの未確認情報なんでしょう?」


「よしよし」と慰めるエレナさん。

周りの男達は「俺もよしよしされてー!」と、遠巻きに盛り上がっています。


事の発端は、太古の迷宮付近で見つかった一人の男でした。

長身痩躯にくすんだ金髪、どこかの誰かさんに良く似た容姿の人物です。

彼はテロスでもそこそこ有名なシルバーランクパーティ、<最果ての風>に連れられこの支部にやって来たのです。

そしてやって来たと同時に、支部長室に連行され、暫くすると現在受付でため息つきまくりの受付嬢、ベラ=カイネルさんも呼び出されたのです。

彼女が登録を受け持った人物と、男が探している人物の名前が一致したので確認をしたいと言われたのです。


探し人の名前はニコ=ウォーカー。

確かに先日彼女が登録処理を行った人でした。

私は男が愉快そうに語る特徴を聞き、ベラさんはまず間違いないと確信を強めたのです。


赤い髪の女性で、金と青のオッドアイ。

赤い髪はともかく、オッドアイと言うのは非常に珍しいので、名前まで一致していればそうそう別人ということは無いでしょう。

しかし、その後の男の言葉で支部長のロッド=マスティンさんとベラさんは一気に顔色を失いました。


「そんな吸血鬼(・・・)の始祖を見かけなかったかァ?」


男はまるで確信犯的に口元を歪めて「ヒヒッ」と小さく笑い声を漏らしました。


吸血鬼の始祖なんて、伝説上の生き物です。

生きる災害です。

そんなモノを何の疑いもなく、笑顔で登録処理までしてしまうなんて。とベラさんは心臓が止まる思いでした。

というかそのまま倒れてしまったのですが。


彼女が医務室で目を覚ますと、隣には支部長のロッドさんがいました。

あの後街を調べてみれば、使っていた宿屋からは既に出立して太古の迷宮へも向かった形跡がないため、恐らくはアクリ村方面へ向かったのではないかと言う事を伝えられたのです。


ベラさんは村に何かあったらと思ったら、いてもたっても居られずパニックを起こしました。

しかし、確認されているニコ=ウォーカーの行動から、アクリ村を襲う可能性は現状極めて低いということで取り急ぎ隣の街マクリアへ事の次第を通達、その後各地の支部へブロードキャストするという方針に固まったようです。

因みに、情報を持っていた男はこの街にいないということを知るや、止める間もなくさっさと出て行ってしまったそうです。


ベラさんはエレナさんに「よしよし」されながら、もう一度盛大に溜め息を吐きました。


「あぁ、私エレナの優しさに溺れそう」

「ええよー、ええよー。私の胸でお泣きなさい」

「うああん、エレナァ。胸が無いよぉ」

「何だと!?ええい!離れろこの不埒ものぉ!!」


ベラさんはグリグリとエレナの胸に顔を(うず)めると、少しだけ安心するのでした。


そんな二人を他所に男たちは全力で盛り上がっていました。

さっきの「胸が無い」発言は火にガソリンを注ぐような言動で、無駄な盛り上がりを見せています。

アレだけ顔を埋めても感じられないのか、それとも若干は感じることが出来るのか。

男たちの議論は紛糾しました。

白熱する議論はやがて本人たちの耳にも入り、顔を赤くした二人に更にヒートアップ。

もはや留まることを知りません。


結局そんなバカ話で盛り上がっていた男たちは、「テロス支部:怒らせたらマジで摘み出してくる受付嬢ランキング」堂々一位のマチルダさんに、漏れなく叩きだされたそうです。

最果ての街テロスは今日も平和です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ