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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第一章 ニコさんと初めてのお外
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025 ニコさんとアクリ村

ニコさんとアルガスさんの保存食分として確保した分を差し引いても魔猪の肉はかなり残りました。

コレだけお肉があれば、村人全員に行き渡ってもまだお釣りが来るほどでしょう。

こんなにいっぱいあるのならと、夜は村全体で猪料理を楽しむ計画がなされました。

そうと決まるや村の女性たちは料理の準備を、男たちは宴会の準備をそれぞれ始めました。

村中皆大慌てです。


ここアクリ村の中心はちょっとした広場になっており、村のお祭り等はそこで行われるのが常でした。

今夜の宴会もそこで行うようです。

その辺りにガラスの提灯みたいな不思議な照明をたくさん吊るしていく村人たちの姿があります。

中心に球体があってそれが光るのです。

透明なものから少し色の入った物もあって、夜に灯りを(とも)せばさぞかし綺麗でしょう。


子供たちもある程度の年齢の子たちは皆手伝いに駆り出され、皆で石拾いやら草むしりやらお手伝いをしています。

小さな子供はお兄さんやお姉さんの周りをチョコチョコ動き回り、手伝ってるのか邪魔しているのか分かりませんが、とても賑やかな光景です。


アルガスさんとニコさんも手伝いを申し出たのですが、「客人にやらせるわけにはいかねぇよぉ」と断られてしまいました。

ですがせめて後学のためにお肉の加工の方を手伝いたいと言えば、それならばと手伝わせてくれたのでした。

そんなわけで二人は村の女衆に紛れて猪のお肉に塩をすり込んだり、タレに漬け込んだりとお手伝いに(いそ)しんだのでした。

お肉の切り分けには八裂丸も大活躍しました。

ニコさんはあまりの切れ味に「これなら蒟蒻(こんにゃく)も切れそうね!」と意味不明なことを言っていました。

勿論ですが蒟蒻は普通の包丁でも切れます。


そうこうしているうちに日は暮れて、ニコさんは「一日って早いわね!」と、今度は料理運びを手伝いました。

夜になれば外でも両手が使えるのでお鍋も持てます。

力持ちの吸血鬼(ニコさん)は重たい大鍋も片手で楽々運べますので女衆たちはとってもビックリしていましたが「とっても助かるわぁ」と大活躍の様子でした。

ついでに着物も可愛い、綺麗と褒められてニコさんはとても上機嫌です。

八裂丸のお礼でモグ爺さんのお孫さんに一着譲ると言ったら、特に若い娘は羨ましそうにしてたので、調子に乗ったニコさんは「しょうがないわねぇ」ととっても嬉しそうに皆には髪飾りプレゼントしてみました。

するとこれも可愛い可愛いと喜ばれたのでもう有頂天。

今なら空も飛べそうというくらい舞い上がっています。

まぁニコさんは元々飛べますけどね!


「もう、この村最高ね!住もうかしら!」

「おいおい、目的を忘れんなよ!?」


とっても居心地が良いようですね。

そうして全ての料理を宴会場へと運び出せば、いよいよ宴会の始まりです。


「このたびは、旅のお方が村に恵みをもたらされた。深く感謝すると共に、少しでもそのご恩に報いるため、また、喜びを分かち合うため、こうした席を設けさせてもらった。それでは旅人と恵みに感謝し、乾杯といこうではないか」


村長が挨拶をすると、老若男女、杯を掲げてから一気に中身を飲み干しました。


「ぷへーッ!美味しいわねこのお酒!!」

「なんじゃ、お主イケる口かの?イケイケかの?」

「イケイケよ!」


ニコさんの隣にはモグ爺さんとアルガスさんが座っていました。

モグ爺さんはグイグイ飲むニコさんにガンガンお酒を注いでます。

もうガンガングイグイです。


「どうじゃ、この酒はこの村の地酒での。ホレ、あそこの親父が作っとるんじゃと」

「アラ、それは凄いわ。それはちょっと挨拶してこないといけないわね!!おーい、おじさーん!!」


ニコさんが酒を造っているおじさんの方へ行くと、アルガスさんは呆れた顔でため息を一つ。


「アイツ酔っ払うと直ぐに寝ちまうんで、あんまり飲ませないでくださいよ」


とモグ爺さんに愚痴を溢しました。

しかしそんなことはお構い無しとばかりに、モグ爺さんはお酒をグイッと飲み干すとニヤニヤしながらアルガスさんに話し掛けました。


「お前さん、あの娘とはどのような関係かの?」

「…爺さん」


アルガスはジト目でモグ爺さんを見ました。

モグ爺さんはとってもニヤニヤしています。


「ホレ、(ジジイ)はカワユイ女子が大好きでの。じゃがの、こんな老いぼれが相手にされるなんてことが無いこと位は(わきま)えとる。じゃから若者のカポーのムフフな営みを聞きたいんじゃぁ。そして妄想に浸りたいんじゃぁ。というわけでネタプリーズじゃ、ホレホレェ!」

「下世話なジジイだな!?」


アルガスさんは頭をガシガシやると、煙草(シガレット)一本取り出し火を着けました。

そしてため息と共に煙を吐き出すと、「別に、そんなんじゃないんですけどね」と話をしました。


「テロスで見かけたのを捕まえたんですわ。俺も可愛い女が好きですからっというのは冗談で、たまたま目的が同じでしたから。他に面白いことは無いですよ」

「なんじゃ、ラッキースケベで着替えをうっかりイベントとかは無いんかい」

「ハハハ。てかホント下世話!このジジイホント下世話!」


アルガスさんはニコさんの白い背中を思いだし、一瞬ドキリとしてしまいました。

そんなアルガスさんを見るやモグ爺さんはもっさり眉毛の奥でギラリと目を光らせました。


「むふふ、何か心当たりがあるようじゃの?ええからジジィに聞かせんかい!!」

「ええい!別に何もないわ!」

「男女の二人旅で何も起こらんはずないじゃろが!どうせムフフでうらやまけしからんことがあったんじゃろ、お主の眼がそう言うておるわぁ!!」

「ちょっ!ええい離せ!!」


ギャーギャーと喧しい二人の話に周りの男衆も興味津々です。

特に10台半ば程度の若い男衆は、悪いとは思いつつ向こうに行ってしまったニコさんの方を見ながらモグ爺さんの妄想☆男女の二人旅あるある話を聞いて、妄想を膨らませていました。

思春期というやつですね。


「あー!ええのぉー!儂がもう100歳若かったらのぉー!!」

「勝手に妄想して羨ましがってるんじゃねぇよ!!てか想像力豊かだな!?」


アルガスさんの叫びを他所(よそ)にモグ爺さんは足を投げ出してバタバタします。

気持ちだけはまだまだ若いのかもしれません。

そんなしょうもない空気を破るようにニコさんの周りではドッと笑いが起こりました。

あちらも何やら楽しそうです。


モグ爺さんは膝をポンと叩くと「ほっほ」と笑いました。

アルガスさんは渋い顔で頭をガシガシやっています。


「さて、ジジイは男と長話する趣味は無いからカワウィ子ちゃんの元へ行くぞ!あの酒屋めっちゃズルい、何酒注がせとるんじゃ!!にょほほ、あの注ぎ方儂もやってほしいのぉ」


そう言うとモグ爺さんはさっさかニコさんの方へ行ってしまいました。

因みにニコさんは「これがあざといお酒の注ぎ方よ!」と、少し肩を出して酒屋のおじさんにしなだれ掛かる様に侍りお酒を注ぐという高等テクニックを見せて場を沸かせていました。

一体どこでそんなことを覚えたのでしょうか。

酒屋のおじさんも「まいったなぁ」と顔を赤くしています。


その後も宴会は続き、ニコさんはたらふく猪肉を喰ってお酒を飲みました。

途中モグ爺が始めた飲み比べ大会では、今年酒が飲めるようになったという村の娘のネヴマさんがひたすら淡々と飲み続けて一位を掻っ攫うと共に"アイツを嫁に貰うと酒代嵩んでヤバイで賞"を受賞しました。


「お酒って美味しいのね。結婚するのは私と一緒にお酒を飲める人がいいわ」


このネヴマさんの一言は村の男共の闘争心に火を着け、ネヴマさん狙いの男達は再び飲み比べを初めて皆潰れるまで飲み続けましたのでした。

いつの間にか優勝すれば、ネヴマさんにニコさんがやっていたようにお酌して貰えるという本人の了承していないご褒美が提案され、更に盛り上がったのです。


ニコさんはと言えば、早々に観戦側に回って煽っていたうちの一人です。

流石逃げることには定評のあるニコさん、無駄な争いはいたしません。

その後もアルガスさんが村の女性たちに囲まれてニコさんとの関係を聞かれたり、ニコさんが子供たちと遊び始めたりと賑やかに楽しい時間が過ぎていきました。


そうして宴もたけなわという時、ソレは唐突に表れたのです。


「よう、旨そうな匂いがするな。俺も混ぜてくれよ」


その一言と共に。

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