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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
第一章 ニコさんと初めてのお外
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021 暗躍する魔王軍

そこは古い館でした。

下には海が広がる切り立った崖の上に立っており、地震でも起きようものなら館ごと海へダイビングする羽目になりそう。

そんな立地条件最悪な館です。

その館のエントランスの奥には、拳くらいの大きさの魔石が赤黒く輝いていました。

左右対称に広がった階段の丁度真ん中に、ソレはオブジェの様に飾られているのです。


「魔王様…」


ぽつりそう呟いたのは、浅黒い肌の女性でした。

身に着けている衣服は、その引き締まったマッソーなバディを見せる付けるかの如く最小限で、まるで胸元から左右に分かれるタイプのベビードール(セクシーランジェリー)の様です。

因みに色は黒でした。

超個人的な感想を言わせてもらえば、色気と筋肉の比率は多分6:4位でギリギリセクシーさが勝っているといったところでしょうか。

これがただのビキニアーマーなら多分筋肉が勝ると思います。


緩やかなウェーブの掛かった赤褐色の髪に、角が二本。

背中からニコさんよりも大きくしっかりした悪魔のような羽が生えており、彼女が人間ではない事を示しています。

更に虹彩は黒く、瞳は真っ赤。

きっと笑顔(マジキチスマイル)が似合う美人さんだと思います。


そんな彼女は魔族でした。

悪魔公爵(デモンロード)のキルギス=アスタロトです。


「魔王様、魔王様、魔王様!!」


キルギスさんはズンズンと黒い魔石に歩み寄ると、静かに手を添えてゆっくりとなぞりました。

とっても淫靡な手つきです。


「ああ、魔王様…」


このキルギスさん、さっきから「魔王様」しか言っていませんが、その響きにも色々あって、様々な感情で呼びかけていることが伺い知れます。

因みにさっきのは若干頬が上気しているので、つまりは愛情表現的な感じなのでしょう。


これは彼女の日課でした。

朝起きたらまず魔王様にご挨拶。

次に「早く復活してくれないかなー」という気持ちを込めて三度呼びかけ、最後に「お慕いしております」という意味を込めて優しく魔石を愛撫しつつ煽情的に呼びかけます。


因みに彼女の後ろでは二人の魔族(デーモン)がこの神聖なる朝のご挨拶が終わるのを、(ひざまず)いて待機しています。

これも毎日の事でした。


「魔王様、今日で丁度魔王様が死して300年が経ちまする。どうか、どうか疾くご復活して下さいませ。妾はもう待てませぬ。魔王様が復活しないのであれば、妾がその魔石(心臓)、取って喰ってしまいますぞえ?」


その時、心臓がまるでドクンと脈打つように一際輝きました。

流石に魔王様も食べられちゃうのは困ったのでしょうか。

それとも肉食系女子の愛にドキッとしてしまったのでしょうか。

しかし、その輝きはキルギスさん的には「もうちょっと待って!」と魔王様が応えた様にも見えて、一気にテンションが上がりました。


「ああ!魔王様!!もう間もなくなのですね!?もう間もなく魔王様が目覚められる!!フフ、ウフフフフ…、アハハハハハハハ!!!!」


エントランスにキルギスさんの哄笑が響き渡しました。

後ろの二人はちょっとビクッ!ってなりましたが、そんな些末なことに気付きません。

キルギスさんのテンションはもう最高潮です。


「オグロ!!デモニオ!!…新生四天王に伝えなさい、魔王様がもう間もなく目覚められる!!軍備を整えておけと!!」


オグロさんとデモニオさん、後ろで控えていたお二人です。

彼らはとてもいい返事をして、速やかに館から出て行きました。

日頃の教育が垣間見えます。


「…プロドティス、いるのでしょう?」

「ええ、此処に」


プロドティスと呼ばれて何処からともなく現れたのは、金の仮面で顔の上半分を隠した男でした。

ゆったりとしたローブを着ている長身の男性で、そのローブには仮面と同じく金色で複雑な刺繍が施されていました。

両手の指には赤、青、緑、茶、黒、白、合計六色の宝石を指輪として付けています。

どの石も大きく、ただの宝石ではないのかもしれません。

とりあえず、どこもかしこも高価そうな出で立ちということには間違いありません。


「お前も魔王様復活に合わせ、いつでも事を起こせるようになさい」

「御意に」


プロドティスさんは恭しく礼を取ると、何事か呟くとまるで霞の様に消えていきました。


「フン、生意気な人間(・・)、精々魔王様のお役に立つがいいわ」


キルギスさんはそう呟くと、再び魔石に向き直り、頬を染めました。

目は潤んで、頬は少し赤く染まっています。


「…あぁん、魔王様ぁ。うふふ、ふふ。…んッ!!」


キルギスさんは誰も居なくなった館で、朝の日課パート2を開始しました。

この日課は誰にも見られてはいけません。

もし見られたら、ちょっぴり恥ずかしいですからね。


さて、何をしているって?

それは皆様のご想像にお任せします。


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