014 ニコさんと大陸互助組合
2022/08/30 諸々修正しました。全体のストーリーには大きな影響はありません。ないはずです多分。
「はい、照合終わったのでさっさと入ってー。はい、入ってー。次ー」
テロスの街は外壁に囲まれた大きな街でした。
街の入り口には門があり、そこには数人の兵士が待ち構えていました。
街に入るには金が必要でした。もちろんそんなものを持たないニコさんは、迷宮で作った刀――試し切りをしたらナマクラだった――を商人に売りつけ、何とか街に入る分のお金を得ました。
しかし、それだけで入れるものではありません。身分を証明するもののないニコさんは、更に手配書との照合が行わなければなりませんでした。これがまた非常に時間が掛かるもので、二時間近くは待たされました。今ではすっかり夕方です。
ニコさんは街に入ると、大陸互助組合を探しました。
この組合は、ニコさんが森ですれ違った三人組が所属していた組織です。
何故そんなものを探していたかといえば、この組合が相互補助の精神で大陸に展開する超国家的組織であり、入るのは楽だし身分も証明できるしで、流民でも難民でも、とりあえずここに所属しておけば最低限何とかなるというものだったからです。要はよくある冒険者ギルドみたいなものか、とニコさんは理解しました。ちなみに情報源は刀を売った商人さんです。
テロスの街は夕方になっても人通りが多く賑わっていました。
露天商もまだ店を出していましたし、迷宮が近くにあるからか、いわゆる冒険者的な恰好をした人たちもそういった露店を覗いていたりします。
むしろ、外からそういった人たちが帰ってくる時間だからか、下手な時間よりも余程賑わっているのかもしれません。
ニコさんはなんだかお祭りのような雰囲気に浮かされ、辺りを興味深く眺めていました。
「おう、ネエちゃん。そんなにキョロキョロしてどうした。この街がそんなに珍しいかよ」
途中、こうして何度か声を掛けられることがあり、そのたびにニコさんは組合の場所を尋ねました。そうして探せば組合の建物は割とすぐに見つかりました。
建物の中に入ると、酒場のような丸テーブルが並んでおり、奥にはいくつかのカウンターがあります。実際、軽い飲み物くらいは提供しているのか、話し合いをしている人たちのテーブルには飲み物の入ったジョッキや軽食などが目につきます。
ニコさんは意気揚々と奥のカウンターに進み、受付のお姉さんに「たのもー!」と身分証の発行をお願いしました。
「まずはあちらで魔紋をお取りください」
どうやら魔紋――魔力の特徴を登録する必要があるようです。
お姉さんに案内されたニコさんは謎の装置で魔紋を取りました。
身分証の発行には少し時間が掛かるようです。ニコさんは番号の書かれた木札を渡されたので、その辺の椅子でプラプラ周りを眺めて待ちました。
本格的に日が落ちてくると、暗くなって来たこともあってか仕事の報告などで建物を出入りする人が増えてきました。彼らはみな冒険者といったような出で立ちです。屈強そうな男に、目つきの鋭い女。みんな剣やら弓やらメイスやらを引っ提げて武力を誇示しています。
ニコさんはといえば、ここでは見かけない和服な挙句、武器の一つも持っていません。なんだか非常に場違いな感じでソワソワしてしまいます。実際、あちこちから視線も感じ、ナマクラで使えないとはいっても刀をもう一本くらい用意しておけば良かったかしら、なんてニコさんは後悔しました。
そうしていい加減持て余してきたころ、ニコさんの番号が呼ばれました。
ようやくか、と思いニコさんが再度受付へ向かえばお姉さんが笑顔で迎えてくれます。
「はい、ニコ=ウォーカーさんですね。こちら、認識表になります。見たらわかると思いますが、こちらには名前とランク、発行した支部と日付が書いてあります。コレを持っていれば、組合の者として身分を証明できますので無くさないでくださいねー」
お姉さんに渡されたのは鉄製のドッグタグ。森で出会った鎧の男が見せてきたものと同じ形です。
ドッグタグを受け取ったニコさんはその後、組合に関する説明をざっくりと受けました。仕事の受け方からランクについて、禁止事項や罰則など。諸々の説明を受ければ、もうすっかり日は落ちて真っ暗な夜が訪れていました。
ようやく全ての手続きを終え、冒険者ギルドから出たニコさんは、完全にペッタンコになったお腹をさすります。
「さてと、そろそろ本当に何か食べ物を食べたいのだけれどお金がないのよねぇ。いくらお腹が空いたからって、血を吸うのは抵抗あるし」
ナマクラを売ったお金は正直もうほとんど残っていません。
このままでは宿無し風呂無しご飯なしです。
宿無し風呂無しに関しては、蝙蝠の時は日常でしたが、ご飯無しはそろそろ辛いのです。実のところ、もう数日は水と塩しか口にしていません。今のニコさんは断食修行僧状態です。
「手持ちは……、これだけかしら」
何とかギリギリ、つまみを一品頼める程度の手持ちです。溜息が出てしまいます。
ニコさんは独り夜の街を歩きました。
夜の街は家やお店から漏れる明りで夕暮れ時とはまた違う姿を見せています。昼間はどんな景色になるのかなぁと、そんなことをぼんやり思いつつ、ペコペコのお腹に手を当てます。
「うぅ、ご飯……。少しでも多く食べれるところがいいのだけれど」
そうこうしているうちにもニコさんのお腹がグゥゥと鳴りました。ニコさんが「もうこれ以上へこまないわよ」と悪態をつくと、すぐ近くのお店から豪快な笑い声が聞こえてきました。
ああ、もうここでいいか。ニコさんはその声に引き寄せられるようにフラフラとお店に入っていきました。




