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この不良、超能力は「肉体」のみ  作者: 創場
1章 その不良、超能力に出会う
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第六話 超能力も実力の内ですか?

 もう夜になり、普段なら食卓を囲んでるはずだった二人は、皐月の話を聞くため、もぬけの殻となった滝の部屋に滞在していた。

 大吾はアタッシュケースをベッドの下に置くと、ベッドに横になった。道也はベッドの土台に寄りかかり、皐月はそんな二人に対峙していた。

 大吾と道也に脅され、皐月がしぶしぶ話始めたのだ。


 「まず、道也君が見たものは猿の置物に見えて、実は北の超女ちょうじょっていう人類の敵が作り出した能力者の能力なの」


 最初から突飛すぎた。大吾は悲しいものを見る目で見だし、道也は疑い半分といった感じだ。


 「あんだけ脅したのに思いついたでまかせはそれってわけか?」


 「でまかせじゃないよ!! ほんとだよ!!」


 大吾にでまかせ呼ばわりされた皐月は憤慨し、反論するが、大吾は手を振って適当な挨拶をし、皐月は頬を膨らませた。


 「悪いけど、君の話を整理したらすぐにでも滝を助けに行かなきゃいけないんだ、ちゃんと聞くから全部話してくれないか?」


 「うう、まぁ、お兄さんが信じてくれなくても、道也君が聞いて信じてくれるなら話すよ、でも、焦っても仕方ないからね? そろそろ助っ人も来ると思うし、それを待つ暇つぶしって感じで話すよ」


 道也はその説明に不服そうな顔をしたが、それには反論せずに質問を始めた。

 

 「あの、滝ちゃんはどこに連れていかれたの? その北の超女が連れて行ったの?」

 

 「うん、今は北の超女の残党を本島に呼びよせたやつらのところだと思う」


 「本島? 呼び寄せた? 残党? 何のこと?」


 質問はしたが正直謎だらけだ。更には専門用語まで飛び出てしまい、道也は混乱を極めた。


 「えっと、本島はこの日本、私たちは日本からすごい離れた独立した島、九魔島からやつらを追ってきたの」


 「九魔島……?」


 「知らなくて当然だよ、普段は島の優秀な結界能力者たちによって、観測されないようになっているからね、探しても、まず、次元も少し歪めているから、本島の船が衝突したりすることもないしね」


 道也と大吾にはまったくもってよくわからない話しだったが、あえて聞かずに説明を待った。


 「で、その島は、さっきも話した北の超女という外敵からこの世界を守るためにできた昔からある島なんだけどさ、世界にも世界地図を囲むように点在してるんだ、そこでは、能力者たちが超能力を使い独自の文化で暮らしてる、私たち、日本近くの九魔島は北の超女を相手に日々戦ってるってわけさ」


 真顔で話をする皐月だったが、道也はもちろん、話半分にしか聞いてない大吾には摩訶不思議すぎたのだろう。目を点にしながら次の説明を待った。

 

 「まぁ、九魔島についての細かい説明を省くと君たちの友達は、私たちの敵、北の超女の残党に連れ去られたの」


 「ちょっと待って、どうしてその北の超女の残党が滝ちゃんを狙うの? ていうか北の超女についても説明をくれない?」


 「北の超女は、超能力の生みの親南の超女の後に生まれた邪悪な存在で……あ、南の超女っていうのは島の守り神みたいなもの、実在するけど見たこと一回しかないや、超女はどこから生まれ、何も目的としているかは謎、会話した事があるのなんて島の偉い人だけ、でも、綺麗だったなぁ」


 皐月が少し興奮した顔で物思いに耽りだした。道也はそんな様子では困ると皐月の目の前で手を振った。


 「思い出に浸ってるとこ悪いんだけど、その超女っていうのは何人居るのさ」


 「あ、ごめん、今のとこ、確認されてるだけで、三人、南・北・西の超女、五年前の戦争じゃ、新たに現れた西の魔女のおかげで大勝利だったんだ! そのおかげで失ったものもあったけど、被害は抑えられたよ……」


 「つまり、その九魔島ってとこで、五年前倒したはずの北の超女の残党がこちらに来てるってこと?」


 「超女は五年前の戦争で深い眠りに着いて、彼らは復活させようと躍起になってると思うからね」


 「倒したんじゃないの?」


 「超女は死なない、南の超女も北の超女も、超女の生命力を攻撃を与えて衰えさせるしかないんだ、そして、超女は眠りに着き、また仲間を揃えて攻めてくる、永遠のイタチごっこなんだ、それでも私、ううん、私たちは戦うの、戦いの為に散った人たちの意志を継いでね……」


 皐月は苦しそうな顔をしたが、道也はそれどころじゃなかった。

 道也は驚愕していたのだ。まさか、そんな最近にも自分たちの世界でそんな事が起きてるなんて思ってもみなかったからだ。


 「ちなみに私の考察では、その子が連れ去られたのは北の超女復活に関わるもしくは、残党にとって喉から手が出るほどほしい物を今日運悪く所有したって感じかな」


  その発言に道也は今日の事を思い出した。滝は謎の少女から飴を貰い、その後金縛りにあった等、皐月の話を聞く限り、確かに全てを超能力にこじつけてしまえば可能かもしれない話だ。


 「実は滝ちゃんが大人びてて落ち着いた女の子に会って、黒い包み紙に入った飴を貰ったらしくてさ……」


 「黒い包み……その飴どうしたの!?」


 道也が言い終わる直前、皐月は血相を変えて道也の肩を激しく揺らし始めた。道也は顔を揺らされながらも答える。


 「た、食べましたぁ!」


 「ええ!? 全部!?」

 

 「いや、滝ちゃんと俺が一つずつ、何個貰ってるかはわからないや……」


 「そっか……体調とか大丈夫?」

 

 「滝ちゃんが食べた直後に苦しがってたけど、俺はなんともないよ、さっきまでは少し吐き気もあったけけど、ねえ、あの飴ってなんなんですか?」


 すると皐月は安堵の息を吐くと、呼吸を整えながら道也の肩から手を外すと、元の位置に座りなおした。


 「君たちが食べた飴は北の超女から奪ったある能力から出来た飴でね、端的に言うとそれを食べたら超能力が手に入るの、元々は九魔島の研究所が保有していたんだけど、研究所から北の超女の残党が盗み出して、一週間前、本島に逃れたのよ」


 「でも、次元がどうのって言ってたけど、つまりはその島には入出が難しいってことですよね? どうやってそいつらはここに来たんですか?」


 「手引きした人が居るんだ、そいつが九魔島に来た時、北の超女の残党の逃亡を援助したらしいんだよ、九魔島では、本島の一部の人、つまりは本島のお偉方の誰かなんだけど、そういう人たちが毎週のように、視察や観光に来てて、挙句の果てには九つの島の一つをお偉方専用にしてしまったくらいだからね……」


 皐月は少し悲しそうな顔をしたが、説明を続けた。


 「残党が逃亡したのは長期視察に来たお偉いさんパーティーの翌週だからその中に裏切者のお偉いさんが居るのは確かなんだ、で、私たちが調査に来たの、ここに来て最初、偶然、遭遇した超女の残党に敗走したけどね…、情けないよ、もしかしたら攫われた子に飴を渡した少女も関係してるかもしれない」


 忌々しいと言わんばかりの顔をする皐月は考察を踏まえて話し、道也は適当な相打ちを打っていると、不意に大吾が起き上がった。


 「まぁ、その他諸々は置いといて、つまりその盗まれた飴を食べた道也にも超能力があるってことか? どうなんだよ道也」


 「え、俺は何ともないけど……」


 自身の体を見渡せる範囲で見るが何も変化が無く、疑惑の目を皐月に向けると、皐月は咳ばらいをし、答える。


 「たぶん、道也君は元々、超能力あったと思うの」


 「ふーん、て、え!?」


 衝撃の事実をサラッと言われた道也はひどく焦ったが、皐月は手の平を道也に向け、落ち着いてとなだめた。


 「先天的なものだと思う、まだ実験段階の代物だったからなんとも言えないけど、実験では先天的な能力者には能力が増えたりせず、なんの効果もなかったて聞くし、動物実験では、なんの能力も持たない生物を使って超能力動物を生み出したらしいよ」


 「じゃあ、気分が悪いのは飴のせいじゃなかったのか」


 「飴の影響じゃなくて後悔の念からきた精神的なものだと思うな、私は」


 少し拍子抜けしたが、確かに大吾達と合流し、この家に入ってから気分が良くなったと確認する場面もあった通り、道也の体調は普通に戻っていた。


 「俺の能力……、それで滝ちゃん、見つけられないかな?」


 「何か視覚や聴覚が敏感とかある?」


 「いや、そういうのは……」


 「じゃあ、道也君、あなたはこれまで不思議な事を体験したことは?」?


 幼稚園の頃、ガキ大将を倒す直前に沸いた勇気と自信。今思えば、十分不思議だ。道也は皐月にありのまま伝えようと思った。


 「幼稚園の頃、ガキ大将みたいなやつにいじめられてたんだけど、ある日、急に勇気……? 自信みたいなものが溢れ出て、自分でも知らない力が急に湧いて、ガキ大将を返り討ちにしたことなら……」


 「おい、いじめられてたならなんで俺に言わねえんだよ!」


 話が終わると同時にベッドで寝っ転がっていた大吾が飛び起き、的外れな質問をしてきたため、正気かこいつと思いながら道也は答えた。


 「幼稚園の頃の話だぞ?」


 「あ、じゃあ俺、道也と知り合ってねえわ」


 腑に落ちたような様子で、またも寝っ転がり始める大吾。一応は女子のベッドだが、大吾は気にならないらしい、まるで自分のベッドのようにリラックスしていた。そんな大吾に道也と皐月は疑念の目を向ける。


 「お兄さんは頭がおかしいのかい?」


 「いや、ただのバカなんだよ、気にせずに続けてほしい」


 道也は皐月の疑問に適当に返すと先の話をするように促す。ただでさえ、時間がないのに大吾のとんでも発言に一々指摘していたらキリがない。


 「わかったよ、どこまで話したっけ、あ、そうだ、えっと道也君の能力であり得るのはたぶん、肉体強化かその辺りだと思う、いじめられてたならもちろんそれまでは勝てなかったてことだよね? それにたぶんガキ大将で事は当時、背や体格も違ったんじゃないかな?」


 「ええ、小柄で女の子みたいだっていじめられてました、後、勝てないというよりは勝負を挑んだ事もありませんでした、俺に勇気もありませんでしたしね、幼稚園の頃はよく滝ちゃんに助けてもらってました」


 「うんうん、なるほどね、たまたま勇気が湧いたとしても体格差があって力も道也君の方が少ないなら、コケ脅しが出来たとしても、返り討ちなんて無理だね、つまり、君は肉体強化、腕や足、筋肉が常人の倍になってるはずだよ」


 「そうだったんだ……、俺の実力じゃなかったんですね……」


 幼稚園の頃から急にフッと湧いて出たこの力でこれまで拳でムカつく相手を黙らせてきた道也は信じ切っていた。この力は実力なのだと、だが、蓋を開けてみればどこで手に入れたかわからない超能力て落ちだった。


 「実力だよ、道也君、君がどこで超能力を手に入れたかわからないけど、君の超能力は君だけ君自身の精神や身体が引き出した物だよ、君の身体にあったものを引き出したにすぎないんだ」


 「そうだぜ、道也、お前、すげーじゃねえか、俺も昔からそんな背格好で俺と同じくらいの力、いやそれ以上の力があるのに驚きだったし、確かに全部納得はできねーが、実力の内ていうのはわかるぜ」


 大吾や皐月の言葉を聞きながら、自身の手を見つめた。毎日のように使い込んだ拳は少し黒く、切り傷の跡や幼稚園のころとは比べられないくらいに成長したガッチリとした身体に硬い手。能力があったとは言え、この傷は全部自身が喧嘩し、付けてきた傷だ。道也はすぐさま落ち込むのをやめると、立ち上がり、二人を見下ろした。


 「俺のこの能力があれば滝ちゃんを救えるかな?」


 「私一人が敵の能力者相手に戦うなら危なかったかもしれないし、自信正直なかったけど、道也君の能力で手助けしてくれるなら絶対助け出して見せると断言できるよ」


 皐月も立ち上がり、道也の目を見て勇んだ。すると、大吾も寝っ転がるのをやめ、立ち上がった。


 「俺も居るしな! ていうか俺にもその飴くれよ!」


 「滝ちゃんが何個持ってたかは知らないけど、今はないみたいだ」


 「んだよ!! ていうか、そのアタッシュケースに入ってんじぇねえか?」


 大吾はベッドの下からアタッシュケースを取ると指摘した。


 「え!? 駄目だよ! それ何入ってるかわからないし思いっきり北の超女の気がビンビンに出てるし!」


 「は? ていうかこの家の事もなんか言ってたけど、なんかそういう雰囲気みたいなのでわかんのか?」


 「実は、北の魔女が作った超能力者か、九魔島で生まれ育って遺伝で発言した能力者て全然違うの、遺伝能力者は身体の内から湧き出てる感じなんだけど、北の魔女が作った能力者は、能力者の身体を包み込むように出てるの、そのアタッシュケースは確実に北の魔女の作ったものが入って……いや、待って」


 相も変わらずのドヤ顔で語りだした皐月だったが途中で話すのをやめ、考え込みだした。


 「あ? どした? 罠ならあけねーぜ」


 「いや、やっぱり開けてみてくれない? もしかしたら私の思ってるものかも、私、それが盗まれた飴入ってると思ってたの、でも、敵がアタッシュケースを放置して、飴を貰ったその子を攫ったとするなら、アタッシュケースの中身は飴ではなく、別の物かも」


 皐月の言葉を聞き、大吾は道也を一瞥するも、道也も首を傾げるしかできなかった。大吾は少し考え、思い切ったようにアタッシュケースの開け口に手を入れた。


 「いくぞ、ふん!」


 アタッシュケースは鍵がかかっておらず、大吾の握力で簡単に開いた。そして、中から出たもの。それは……。


 「……おいなんだこれ、パンツか?」


 「やっぱり!」


 中に入っていたのはかわいいデフォルメされた刺繡が入った布だった。大吾がアタッシュケースの中を皐月に見せると、すごい速さで皐月は大吾からひったくり、息切れしながら布を大事そうに握りしめた。


 「もしかしてそれお前のパンツか?」


 「違うよ!! ハンカチ!! パンツじゃないよ!!」


 恥ずかしがりはしなかったが、すごい剣幕で否定する皐月に大吾はわかったわかったと手を振り、ハンカチを見た。


 「で? なんで堂本の野郎はそんなもん後生大事そうに命張って持ってたんだ?」


 聞いていた道也は河川敷でアタッシュケースを大事そうに抱えていた堂本を思い浮かべ、確かに疑問に思った。堂本は極道の兄貴という男に届けるために、部下を引き連れ、わざわざ届けにいっていた。しかも警察に言ったり、開けたりしたら殺されるとまで言っていた。北の魔女の気がついてるとかいってもハンカチがそこまで重要に思えず、皐月の答えを聞いた方が早いと思い、皐月に目線をやる。


 「堂本って人は知らないけど、このハンカチ、お兄さんや道也君が思ってるより重要なカギになるわ、もしかしたら滝ちゃんを見つけられるかも」


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