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この不良、超能力は「肉体」のみ  作者: 創場
1章 その不良、超能力に出会う
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第二十五話 死んで生きて死んで生きてを繰り返すんですか?

 口の中に暖かい物が入ってくる。下を絡めとられ、息が苦しい。唾液が吸い取られてるような。そんな感覚が心地よくも味わったことが無い感覚に道也は流されそうになるが、道也は思い出す。北の超女に殺された事を。道也はパッと目を見開いた。


 「んんんんんん!?」


 道也が目を覚ますとそこには綺麗な黒髪の少女の顔が映り込み、道也は声にもならない声で驚くが更に驚いたのが、その少女が自身に跨り、キスをしている事だ。


 「ぷはぁ!! あ! おはよう!! えーと……名前! 名前なんだっけ!!」


 「み、道也……じゃなくて!! 何すんのさ!!」


 跨る少女を押し退け、道也は逃げるように後ろに這っていった。機械の破片に腕が当たろうがお構いなしだ。すると少女は顎に人差し指を当てて笑う。


 「道也君!! 私は君の恩人! つまり君は私に恩がある! わかる? 私がキスしたら、私はその人の生き死にを自由にできるの!! すごいでしょ!!」


 「はぁ? 何言って……って! 北の超女じゃないか!! お前に俺は殺されかけ……ニーナは?」


 今はどうして北の超女が自分にキスしていたなどはどうでもいい。ニーナは? ニーナはどうした? 道也が周りを見渡すとショーケースに叩きつけれ、機械の山でこちらを呆然と見ているニーナが居た。


 「ニーナ!! どうした!!」


 「えー! ちょっと待ってよ!!」


 ニーナの場所に行こうとする道也の前に北の超女が立ちはだかる。道也は一歩後ろに後退し、両腕を構え、力を入れる。


 「邪魔だ! 俺はニーナの元に行かなきゃならないんだ!!」


 「それはダメだよ! もう君は私のモノなのに!」


 「は!? 何言ってんだよ! 俺は君のモノじゃない!」


 「ううん、君は私のモノ、証拠は君の胸元」


 北の超女は自身の胸元の着物の襟を肌蹴て、胸元に指を指した。

 道也はすぐさま、ボロボロになったメイド服を脱ぎ捨てると視線を胸元に移した。

 自分の見慣れた体に見慣れないマークが刻まれていた。黒く円形で円の中は変な文字が書き込まれていた。


 「な、なにこれ…」


 「奴隷の印! 当たり前だよね! 私が生き返らせてあげたんだから!!」


 「ふざけんな!! お前が殺したんだろうが!!」


 この少女の言うことはめちゃくちゃだ。殺しておいて蘇らせ、挙句の果てには奴隷とのたまう。道也は声を荒らげて非難するが北の超女はほっぺをふくらませ出す。


 「むう! 道也くんもわがまま!! ニーナちゃんもわがままだし!!」


 「めちゃくちゃいってんじゃねえぞ!」


 道也は溜めた拳で北の超女の顔面を捉えた。鋭い拳は北の超女に当たる。道也はそう確信したが、そんなに甘くなかった。


 「んぐっ!? があ!?」


 北の超女は軽々と人差し指で拳を止め、受け流し、体制が前のめりになっていた道也は前の方に倒れかけると、両手で首を締め付けた。


 「んぐ!! がっ!!」


 道也は必死に腕を取り払おうと、両手で北の超女の腕を動かそうとするが、腕は微動だにせず、首をこれでもかと言うほど締め付けていった。


 「ほらほら、わがままだからこんな目に会うんだよ? わがままな子はお仕置きされちゃうの。だから私はわがままを言わずに自分で手に入れる事にしたの。だからあなたは私のモノ。分かった? 道也くん?」


 苦しみながら道也は、北の超女をなんとか薄目を開け、見るが北の超女の目は死んだ魚の目のようになっており、言葉も合わせ、道也は恐怖してしまう。


 「あはっ! 今、私のこと怖いと思ったでしょ? でもそれが当然だよ! 奴隷は主人を恐れるものだからね」


 「んっ!! んぐっ! がはっ!!」


 「1回死んでよ」


 「ん……!!!!????」


 北の超女の腕は道也の首から不気味な音を立てさせながら、歪な形に変形させてしまう。道也は泡を吹き、腕を垂らした。


 「はい、ご褒美」


 そう言うと、北の超女は道也にまたも口付けをする。恋人とするような深く甘ったるいキスだ。だんだんと首の歪みが正常に戻っていく。まるで巻き戻し映像だ。


 「んぐっ! ゲホッゲホッ!!」


 北の超女は口を離し、腕から道也を解き放つと、道也は機械の地面に膝から崩れ落ち、むせるように咳を出した。


 「な、何をした!?」


 「殺して蘇らせたの!」


 道也はすぐさま北の超女の身体を見渡す。だが、道也が求めいた物が現れていなかった。


 「なんでお前にはハンデがない!?」


 東の超女、ニーナでさえ、超能力発動にはハンデがある。だが、北の超女にはそれが見えない。


 「私は最強なの! ハンデなんか無いの! ニーナちゃんとは次元が違うのよ!!」


 北の超女は嬉しそうに腕を振りながら喜ぶ。そして、道也の顔を見つめる。


 「君は私の奴隷……アハッ! 君をどうしてやろうかって考えるととても胸が躍るよ!! アハハ! アハハ!! アハッ!!」


 北の超女は笑い狂う。北の超女が笑う度、道也の顔色が悪くなっていく。これでは生殺与奪を相手に握られているも同じだからだ。


 「ま、待ってくれ! 俺を奴隷にしてどうするんだ!!」


 「え? そうだね! まずはその可愛い顔を傷つけてみたい!!」


 「な……!?」


 「良いよね? 良いよね? 殺されるよりは全然いいよね! むしろお願いしてほしい!! ねえ! おねが……!」


 もう道也の我慢は限界だった。道也は足に力を入れ踏み込んだ。姿勢を低くし、北の超女の腹部に拳をまっすぐ振りぬいた。

 

 「うっ!」


 驚くべきことに道也の拳は北の超女の腹部を強打した。北の超女の小さな身体は斜め上に浮いていった。道也は当たった事に喜び、少女のように細い足を容赦なく掴むと、地面に叩きつけた。追い打ちをしようと頭に足蹴りをしようとしたが、少女の見た目に判断を鈍らされ、足を地面につけた。


 「どうだ!! 人をおちょくった罰だ!!」


 「罰?」


 「え?」


 道也は見ている光景をにわかに信じられなかった。北の超女は平然と立ち上がると、死んだ魚の目の様な目をこちらに向けていた。口元は口を閉じたまま微笑んでいた。


 「罰? ねえ、罰って今のが? ねえ、ちゃんちゃらおかしいよ? ねえ、道也くん、今度は私の番ね?」


 「簡単にくらっ!?」


 言い終わる前に道也の腹部は抉れ、内臓が弾けとんでいく。道也は先ほどの北の超女の様に斜め上に飛ばされ、足を掴まれ、そして道也の威力とは段違いの威力で地面に叩きつけられた。


 「この程度で死んじゃう道也君には罰だったね!って聞こえてないか!」


 死んだ魚の様な目からキラキラと少女の様な目をして言う北の超女は道也の唇をまたも奪った。


 「げほっげほっ!!」


 道也は短時間の間に生き死にを三度も繰り返す。道也の精神はズタボロだった。北の超女の顔が映ると道也の身体がビクンッと揺れた。


 「あはっ! 道也君かわいい! ねえ、私の事も佳苗って呼んでよ!」


 「佳苗……」


 「うふふ! 嬉しい! ねえ!! ニーナちゃん!! 道也君こんなだしもらって良いよね!!」


 道也は更に身体を震わせ、北の超女---佳苗の向こう側。ガラスのショーケースで呆然としているゴスロリの服を着た黒髪の少女を見つめた。


 「ねえ、いつまでそこで呆然としているの! ニーナちゃん! もう君の大事な元部下は3度目の死を迎えたよ! そしたらもう私に服従しかけちゃってるよ!!」


 「……」


 「そんなにキスされたのが嫌だったの? ねえねえ、滝って子にあげたかったの?」


 「滝……」


 そうだ、滝ちゃんを助けないと。俺はなにをしているんだ。これでは滝ちゃんの部屋での出来事と一緒だ。

 道也は身体に力を入れる。そしてニーナを見ると、気のせいだろうか、目が合った気がする。何かを伝えたいのだろうか、それとも……違っても良い、ニーナを信じて、道也はよろよろと立ち上がる。


 「……」


 「ねえ! 無視しないで!!」


 「……」


 佳苗の言葉にもニーナはピクリとも動かない。まるで抜け殻のようだ。だが、道也は見たのだ。ニーナの目が、一瞬力強くなっていたのが。

 道也は今出せる限界ギリギリの力で佳苗の頭を小突いた。佳苗はゆっくりと道也を見る。


 「道也君て学習出来ないのかなぁ!!!」


 佳苗は目を見開き、心底怒ったのだろう。ニコニコするのをやめ、鬼の形相で道也の首に両手を付けると思いっきり絞めつけた。


 「んぐぐ!!」


 「ねえ!! 道也君!! そんなにバカだと死体のまま持ち運んで捨てちゃうよ!! 他の子みたいにさぁ!!! ねえ!! みち……!?」


 佳苗は言葉を発するのを止め、後ろを振り返る。そこにはとてつもない眼光で睨むニーナがそして右腕が先ほどのダクトの時よりも鮮やかに綺麗な光が宿っていた。


 「ニーナちゃん!」


 「もう一度、眠ってなさい!!!」


 佳苗の言葉を待たず、ニーナは光っている右手で拳を作ると、佳苗の顔に振るった。


 「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!! にいいいいいいいいいなああああああああああああ!!!!!」


 佳苗は道也を放り出すと、ニーナを睨みながらその場に倒れこんでいった。だが、ニーナは不満げな顔をし、自身の横に目を向けた。


 「なんとか間に合いましたわ……」


 「五野目……」


 佳苗を愛おしそうに見つめながら五野目は息切れをしながら立っていた。佳苗の倒れた場所をよく見ると砕けた猿の置物が散らばり、中に入っていたであろう人物が放り出されていた。あれは陸聖だ。

 道也は陸聖の元に駆け寄り、胸に手を当てた。


 「心臓は動いている……!」


 道也は嬉しそうに言うが、ニーナにとってはどうでもいいことなのだろう。五野目を憎たらしく見ながら微動だにしていない。


 「ほんとに邪魔な女ね、でも手駒を一つ失ったようね」


 「いえいえ、わたしにとって女神を救えるならすべての作品を差し出しますわ……」


 五野目は佳苗を奪還する気なのだろう、覚悟を決めたように意外な事に佳苗の手には彫刻刀を握りこんでいた。


 「返してもらうわ!!!」


 「私に勝てると思っているのかしら」


 ニーナと五野目は対峙し、緊迫した空気が流れだした。






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