第二十四話 口づけってことですか?
※見る人によっては不快なシーン・倫理的にアウトなシーンがあるのでご注意ください。
白いガラス張りのショーケースの中に突如として現れた超能力者になったヤクザ達。しかも全員が全員苦しそうな声を上げながら中で殺し合いを始めていた。
「うぎゃああああああああああ!!!!」
炎を巻かれ苦しむ者。切り裂かれ血を大量に飛び散らせる者。中は悲惨な状態だった。
道也には理解が出来なかった。なんでこんな事をしている。こいつらは何をさせられているんだ。道也の脳が理解が出来ないと悲鳴を上げていると、ニーナが突然ショーケースに向かっていった。
「見てられないわ!!」
「ニーナ!!」
ニーナはガラスのショーケース目がけてその小さい身体で突っ込んでいく。
「はぁ!!!!」
ニーナの拳が鋭くショーケースに届こうとした瞬間、ニーナは身体を後退させた。ニーナが後退すると遅れてナイフが6本、ニーナの居た場所を通り過ぎていく。
「さっきのやつか!!」
道也は飛んできた方向を見るがそこは壁と壁に小さい穴のダクトがくっついているだけで、人の影一つ見えやしなかった。
『悪いけれど、邪魔はさせないわ。なりたてでも超女は超女。あなたのパンチなんか食らったらショーケースが粉々よ、見るのがお嫌いならうちの凄腕スナイパーテンパ男が相手なさるわよ』
五野目のスピーチが響き、わざとと分かってはいるが男でテンパの男が犯人だと分かった。きっと倉庫の銃痕はそいつの仕業だろう。だが、ナイフしか使わない以上、もしかしたら他にもスナイパーが居るのかもしれない。道也はそんな事を思いながらショーケースの方を向くとニーナは激しく回避運動を取りつつショーケースに近づこうとしていた。
「姿を出さないなんて男らしくないわね」
ニーナの挑発にはナイフで応えられる。ナイフは速く正確にニーナを貫こうとするが、ニーナの速さには付いていけないのか、虚空を切り裂いて適当な機械に突き刺さっていく。
「ニーナ!! 場所がわからないのか!!」
「分かるけれど、いけないのよ」
「は!?」
「ナイフはあのダクトから飛んできているのよ」
先ほど見つけた小さなダクト。あそこから飛んできているのというニーナに道也は絶句した。
「超能力者にも色々居るけれどあなたたちは能力が稀な方たちの集まりなのかしら?」
『ええ!! なぜならわが女神様、北の超女様は偉大な存在!! 南の超女の量しか取り柄のない量産能力者とは違うのです!!』
五野目は誇らしそうに大声でそう言いのける。ニーナは忌々しい女ねと呟き、ダクトの方に向かっていった。
「でもねダクトを潰せば問題ないわよ!」
ニーナは踵を上げるととてつもない速さで振り下ろし、ダクトの入り口を叩き折れ、入り口は下の方を歪んだ姿で見ていた。
「道也!! ボサッとしてないでショーケースを割りなさい!!」
「ああ!!」
道也は足を踏み込んでショーケースに向かって走り幅跳びの様にギリギリまで走りジャンプをすると、拳を握りこんだ。
「くらえええ!!」
道也の拳がショーケースに当たる。その時、銃声が響いた。
「ガハッ!!!!!」
「道也!!!」
道也は血の塊を吐き出しながら機械で埋め尽くされた地面に落ちていく。道也は何が起こったのか分からず、わき腹を押えると生暖かい物が手に当たる。見ると、それは赤黒かった。
「げほっ!! がはっ!!」
道也は咳を何度も繰り返し、口から飛び出る鮮血が機械に染み込んでいった。
『詰めが甘かったわね、東の超女!!」
五野目に言われ、ニーナはダクトの方を見る。そこには叩き折れたダクトを貫通していった焼け焦げた跡が生々しく残っていた。スナイパーはナイフではなく銃で撃ちぬいてきたのだ。
「み、道也!!」
ニーナが道也の元に行こうと躍起になって飛んでいこうとすると、ニーナの頬を銃弾が掠っていく。銃弾の掠り傷はニーナの治癒能力で治っていくがスナイパーは構わずに次々と弾を送り込んでいく。
弾はニーナの肩、背中に着弾し、ニーナの黒いゴスロリ服から血がこぼれていく。
「くっ!! 邪魔なのよ!!」
ニーナは一旦止まると、手のひらをダクトの方に向けると、ニーナの手に光が宿っていく。銃弾が飛んできてもニーナは動くことは無かった。
『あの女の子の能力はあなたが渡した物と言う事だったのですね!!!』
五野目の興奮した声が部屋全体に響くが、ニーナは気にも留めずに手のひらを掲げ一瞬後ろに腕を下げ勢いよく押し出した。
光はダクトのある壁を包み込み、しばらくして消え、銃弾が飛んでくることも無くなっていた。
「道也!! 今、治してあげるから!!」
道也は意識を朦朧とさせながら目を開いた。そこには必死な形相で道也の腕を必死に掴むニーナが居た。道也は何をしようとしているのか分かると腕を引いてやめさせようとしたが、ニーナは離さないよう両手で握りこんだ。
「や、めろ……すご……い、痛い……よ?」
「放っておいて死なれても困ります」
口調は冷静だったが、顔や表情、行動に明らかに焦りが見られ、道也は初めてニーナの動揺が見れ、少し微笑むが、目を見開き、力を振り絞ってニーナの肩に触れ、横に突き飛ばした。
「な、なにをする……み、ちや?」
ニーナの見た光景。それは、黒い綺麗な髪のかわいい顔をした人形の様な少女。艶やかな明るい赤の着物を着た少女。その少女が道也の身体にとてつなく大きい黒い剣で道也の身体を串刺しにしていた。
「佳苗えええええええ!!!!」
『あはあはははははははははは!!!! 私たちの女神の再臨!! 喜ばしい限りですわ!!!」
ニーナの咆哮が部屋全体に響き、それに応えるように五野目の声も響きだす。
道也はその名前が誰か分からない。だが、目の前に映る少女の顔には見覚えがあった。通路で見た生首の子だ。つまり……。
「お前が……北の超女……どうしてここに……」
『うふふ、あなたたちが暴れている間に蟲毒は成功し、生き残った最強の身体を依り代に復活を成し遂げたのよ!! あなたたちには感謝するわ!!』
五野目の説明を聞き、道也は目線をショーケースに映すとそこには無残な死体の山が転がり、道也は目を思わず閉じてしまった。
「怖がらないで良いのよ。お兄さん。この北の超女、佳苗がさよならをあげる、感謝は断末魔で良いよ」
「ぐはあああああああああああああああああああああ!!!!!」
北の超女は勢いよく黒い大剣を引き抜いた。引き抜かれ、激痛が道也の身体を襲い、道也の身体からは言い表すには残酷すぎるほどの物が体外に散らばっていき、背中から床に崩れ落ちていった。
「貴様ぁ、よくも私のぉ!! 部下を!!」
「あ、これニーナちゃんの部下だったの? ごめんね? ねえ、代わりに誰かあげるよ」
北の超女---佳苗はそう言うと、着物の懐から巾着を取り出した。
「えいえい!!」
佳苗は巾着を下に向け、子どもの様に振ると中から小さな試験管が大量に床に落ちていき、割れる。そして、試験管の中から出てきたものにニーナは絶句し、身体を震わせた。
「ねえ、これ何体かあげるから許して? ね? ニーナちゃんと私お友達だからいいよね?」
あっけらかんとした態度でそう言う佳苗の下では六体の人間の死体が転がっていた。どれもこれも道也と同い年の様だった。
「ほらほら、この子なんかさっきの子にそっくり!」
佳苗はそう言うとおもちゃの様に死体の一つを取り出すとぶんぶん振り回しだす。ニーナは無言で佳苗を睨んだ。
「え? なにその目!! ありえない!! ありえないよ!! そんな目していいと思ってんの!? ねえ!! ニーナちゃん!! あ、分かった。これが気に入らないんでしょ? 良いよ、私も別にこんなの要らないし」
死体が段々と焦げ臭くなり、遂には佳苗の手の中で燃え尽きていった。佳苗はニコニコとしながらしゃがむと死体をあさり始める。
「ニーナちゃんが気に入りそうな死体あるかなぁ……」
「少し黙ってそこを退け」
その言葉はもはや、怒り、憤りを超え、興味が無い様な雰囲気を漂わした冷たい一言だった。佳苗はニーナを見上げ、目を見開いた。
「どうして?」
「あなたの集めた人形に興味なんてないのよ、私の部下はあれともう一人と候補の一人で充分なのよ」
ニーナはそう言い放つと、佳苗を避け、道也の元に向かった。
「ごめんなさい、道也。今、蘇らせてあげるから……!!」
ニーナが手を触れようとした瞬間、ニーナの身体が押し出され、地面に倒れる。見上げるとそこには佳苗が膨れっ面でニーナを見下ろしていた。
「私がやる!! 私が蘇らすの!!」
ムキになって言う佳苗にニーナは眉間に皺を寄せ、立ち上がった。
「それはどういう意味かしら」
「ふん!! もういいもん!! こんなにこの子が良いなら蘇らせてあげるよ!! でもその代わりに私の事を敬って!! かわいがって!! 私が超女で一番て認めてよ!!」
「ふざけるんじゃないわよ!!!」
ニーナは思わず拳を佳苗に振るい、佳苗はその拳が見えていたかのように受け止めると両手で握りしめた。
そして強い力でニーナの手を開かせると片手で握りしめ、握手のような形にした。
「ニーナちゃん!! 握手はこうだよ!!」
「おちょくるのもいい加減にしなさい!!!」
「ええー!! ニーナちゃんが握手知らなさそうだから教えてあげたのにニーナちゃんわがまま!!」
「あんたを殺してやる!!」
「言葉遣いも汚いし、ニーナちゃんわがままだし、もう仲良くしてくれないなら……殺しちゃおうね!!!」
佳苗はそう発言した次の瞬間にはニーナの目の前に現れ、ニーナの頬を手のひらで叩いた。ただの手の平ではなかった。ニーナは吹き飛ばされ、ガラスのショーケースに叩きつけられてしまった。
「あーあ、だからわがままはダメだよ、そうだ!! わがままのニーナちゃんから取り上げちゃお!!!」
佳苗はそう言うと、道也の死体の前に立った。
「や、やめろ!!」
「やだやだ!! ニーナちゃんの物は私の物!! 私がキスをしたらどうなるかわかるよね???」
「やめろ!!! やめてくれ!! そいつは!! そいつは滝の物なんだ!!!」
「誰それ!!! 知らなーい!!!」
佳苗はそう言うと、道也の冷たくなった唇に口づけを落とした。ニーナはその光景に色々な感情が溢れ出た。
続きは明日です!!




