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この不良、超能力は「肉体」のみ  作者: 創場
1章 その不良、超能力に出会う
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第九話 この助っ人予想外すぎないですか?

 道也と大吾、そして推は中年警官と女性警官に促され、道也たちが来た逆方向の道に進んでいった道路に駐車してある一台のパトカーの前に連れていかれていた。


 「さ、乗りなさい、一台しかないので後ろ少し狭いでしょうけど我慢してくださいね?」


 女性警官の注意に推が手を上げた。女性警官はどうしました? と首を捻る。


 「私は女の子だからこんな男二人と隣はやだなー?」


 「え? あ、女性の方でしたんですね! すみません! 気を遣えなくて!」


 女性警官は推を男の子だと勘違いしてたんだろう、そんな恰好をしていれば当たり前だが。


 「は? おめえになんかするわけねえだろ」


 すかさず大吾が文句を言うと、推が大吾の腹をどつき、ふくれっ面になる。


 「お兄さんはデリカシーを学んだ方が良いと思うな!」


 「てめえは気にしすぎなんだよ!」


 口喧嘩を始めそうな勢いの二人に中年警官が落ち着いてと低い声で言うと、大吾は中年警官に標的を変えた。


 「俺はあんたに負けたなんて思ってねえからな! 暗くて戦況分析?ってのが出来なかっただけだ!」


 「大吾、そんなのしたことないくせに…」


 「うるせえぞ道也! とにかく今度やれば俺が勝つ!」


 大吾が吼えると中年警官は少し口角を上げ、大吾の肩を叩いた。


 「挑戦ならいつでも受けてやる。だが、今回はおとなしく着いて来い」


 「…わーったよ」


 大吾は不機嫌そうに言うとおとなしく後部座席に座り込もうとした。


 「あ、じゃあ、私が運転するので、女性の方は助手席、井伊さんと男性二人は後部で大丈夫ですかね?」


 「事故るなよ」


 「事故りません!」


 女性警官は急いで配置を言うと、中年警官---井伊の軽口に答えながら運転席に座る。

 

 「初パトカーだね」


 「いつかは乗るとは思ってたが、まさか、卒業前日とわな」


 「そういえば明日卒業式だったね」


 大吾と道也は駄弁りながら、後部座席に乗ろうとしたその時。


 「あ、私たちは車があるんでいいです!」


 「は? どういうことだ?」


 推のその言葉に井伊は疑問に満ちた顔で聞くと同時に、道也たちが来た方の道路の方から勢いよく黒のミニバンが走ってきたのだ。


 「な、仲間が居たのか!?」


 「うん! とても頼りになる仲間がね!!」


 黒のミニバンはスピードを落とす様子を見せず、猛スピードでこちらに向かってくる。


 「あ、あれ? なんかこっちに衝突しようとしてない?」


 「やべえだろ、あれ、早く離れねえと!!」


 推の言葉と目の前に勢いよく突っ込んできそうな黒いミニバンを見た大吾と道也はすぐさま後部座席に扉から離れる。

 

 「横川!!」


 「井伊さん!」


 そんな二人と対称的に井伊がパトカーに勢いよく近づき、運転席のドアを開き、女性警官---横川ををパトカーから引っ張りだした。

 

 「あ、危ない!!」


 推が叫ぶ。井伊はすぐさま視線を黒いミニバンの方にやると目と鼻の先に近づいていたのだ。


 「くそっ!!」


 間に合わないと判断した井伊は横川を覆うように抱きしめる。黒いミニバンがぶつかる誰もがそう思う瞬間、突然、ブレーキの音が響き渡った。

 黒いミニバンは、衝突せず、パトカーの車体に当たる直前で止まっていた。黒いミニバンが通った跡にブレーキ痕が濃く残されており、ギリギリであった事がうかがえた。


 『ごめん! ごめん! 超女のやつらかと思ったからよぉ! 車体ごとひき殺そうとしちまったぜ!!』


 黒いミニバンから発っせられる大きな機械音を聞き、井伊が横川を庇うのをやめ、黒いミニバンを見ると、酷く驚いた顔をしていた。だが、そうなるのも無理はないだろう。なぜなら運転席に誰も居ない車が突っ込んできて、喋りだしたのだから。


 「さ、二人とも! 今のうちにリットに乗り込もう!」


 二人が呆けているうちに乗ってしまおうという魂胆だろう。推は助手席に乗り込み、大吾と道也に呼びかけると、二人は急いで、リットの後部座席に乗り込んだ。


 『俺のシートが恋しかったかい!? おかえり! 三人とも!」


 「頭おかしい事言ってないで早く出てくれ!!」


 リットの冗談に道也は切羽詰まった様子で怒ると、リットはすぐさま急発進をした。


 「ま、待て!!」


 「井伊さん! 今すぐ追いかけましょう!」


 「ああ! 運転は任せろ!!」

 

 井伊と横川は呆けるのをやめ、逃げた三人を追うため、パトカーに向かい、井伊が運転席、横川が助手席とそれぞれ乗り込むと井伊は勢いよくアクセルを踏んだ。



 リットはスピードを上げ続け、港から街灯がぽつぽつとあるだけの一般道路に抜けた。


 「そろそろ一般道路だし、スピード下げようか、後、追ってくるかもしれないから注意ね」


 『了解だぜえ!! いやーでも、危なかったな! 俺が居なきゃあ今頃、超女探すどころじゃなかったな!』


 誇らしげという感情を表現したいのか車体を大きく揺らしながら言うリット。


 「ハハッ!! 助かったぜ、最初はなんだこの車!?って思ったけどよ、案外役に立つじゃねえか!」


 「でも揺らすのはやめてほしい……酔う……」


 大吾が豪快に笑い飛ばす中、吐きそうになってる道也。リットは車体を揺らすのをやめ、『こらからも頼りにしてくれやぁ!』と音を響かせた。


 「そういえば気になったけどよ、リットの声って外に響いてねえのか?」


 「うん、リットは普通の車と違って優秀だし、そういう機能が組み込まれてるから防音にしたりも出来るんだよ!」


 大吾の問いに推が答えると、大吾は興味深そうにリットの車内を見渡す。最初は、気味が悪くて現実逃避をしていたが、慣れてくるととても快適な環境だった。

 車内温度もちょうどよく、座席もふかふか。確かにこれは優秀だ。


 「俺も一台ほしいなこれ……」


 「まじかよ、大吾…こんなうるさいの要らないよ…」


 『おいおい! 道也、うるさいは余計だし、俺はこの世で一人だからな! 欲しけりゃ落としてみなよ! イエー!!』


 大吾の言葉にうるさく反応するリット。音が大きかったせいか道也と大吾は、耳を抑える。耳がびりびりとするのだろう、大吾が耳をほじりながら、苦笑いをした。


 「やっぱ要らねえかもな……」


 『ええ!? おいおいそりゃないぜ!!』


 リットと後部座席二人組はその後ものんきに話していたが、街がビルの明かりなどが煌めく、道也と大吾が今日遊んでいた歓楽街に着いた瞬間、不意にリットの声がしなくなる。


 「どうしたの? リット?」


 道也が疑問をぶつける。リットは答えず、少しばかりスピードが速くなる。


 「リット? まだ一般道よ? 探知もまだ済んでないし、そんな急がなくても…」


 『…俺、気づいちまったよ、後ろからずっとつけられてるのをよ!』


 推の問いにリットは語尾を強めに言うと、少し狭い路地に無理無理ねじ込んでいった。


 「リット!? 大丈夫なの!?」


 狭い路地に車体の大きさがあっていないせいだろう、側面からガリガリと音が鳴り響く。

 ガラスは幸いな事に無事だったが、普通の車なら、降りた後に運転手が絶望する場面だ。


 『安心! 安心!! 俺は自己修復機能が付いてっから!! それより早く逃げねえとよ!!』


 「ちょっと待ってよ!! 一体何に追われてるの!? 車一台付いてきちゃ居ないわよ!」


 『大吾! 道也! 後ろ窓から車体下を見てみてくれや!』


 道也と大吾は言われるがまま下を見ると、確かに何かが居た。

 

 「おい、なんだあれ!? なんで影だけが追ってきてんだ!?」


 大吾の声で車内に緊張が満ちた。大吾が見たもの…それは、リットを追いかけるように人型の影がリットに負けないスピードで迫ってきていたのだ。


 『あのやろう! この暗闇の中、紛れて付いてきてたつもりだろうがさすがにあの光の中じゃあ隠れきれなかった見てえだな!!』

 

 「影…」


 「何か知ってるんですか?」


 推がぽつりと言った一言に道也が反応するが、推は押し黙ってしまう。


 「おい! 知ってるなら教えろよ!」


 そんな推に怒鳴る大吾だったが、推は肩をビクンとさせて後部座席に振り返る。


 「いや、本当に何もないよ、早く逃げないと…」


 「そんな様子で言われて信じるわけねえだろ! おい! 言えよ!」


 「違うって言ってるの!!!」


 すっとぼけようとする推に大吾はますます怒鳴ると、推は大きな声で怒鳴り返した。


 「違うってなんだよ……」


 「ごめん、ほんとに知らないんだ…リット、猛スピードで出して振り切ろう」


 『オーケー、後ろの二人! 口開いたら舌がきれるぜぇ! イエー!! 猛スピード!!』


 そう言うと、有無を言わさず、リットはエンジンを全開まで開き、発信させる。

 

 「んんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」


 道也と大吾は声にもならない声を出していたがリットはお構いなしだ。

 普通の一般道路が近くなってもスピードが落ちることなく、突き進んでいく。


 「……!?」


 そして、通路から出ようとしたその瞬間、大吾と道也は絶句した。

 車体の下から大きいバネのようなものが飛び出し、車体を宙に浮かべたのだ。


 『ヒャッハー!! 最高のドライブだぜええ!! イエー!!』


 車体は斜めに落ちていく、そう誰もが考えた瞬間、大きいバネが引っ込み、代わりにロケットのエンジンのような物が飛び出した。

 そして、そのエンジンから熱が噴出し、リットは上空に飛んだ。

 道也は絶句しながらも窓の外を見ると通行人の目が一斉にこちらに向いていた。当たり前だが、少し派手すぎないかと思う。


 「もうなんでもありだな、この車……どうなってんだよ……」


 『うちの島は超能力者のおかげでテクノロジーがすごい進化してるからよ! ロケットエンジンを制御して空を飛ぶなんて楽々なんだよ!』


 道也が呆れたように呟くと、それに反応したリットは説明しながら追い打ちの様に車は下のエンジンを巧みに微調整しながらついに自由に飛べるようになってしまった。


 『さて、ここまでは追ってこれねえだろうし! 羽根も出すか!』


 「もう好きにしてくれ」


 道也は思考を投げ捨てて、適当に流しながら上空からの景色を横目で眺めた。

 確かに黒い影は消え去っていた。


 「まぁ、うちの島の風景はここより…まぁいいや、さて、追手からも逃げられたし、適当に人目のないところに降りて探知した場所に行こう!」


 推の言葉に道也は顔を上げて反応した。やっと滝を助けに行ける。


 「待っててくれ……滝!」


 道也は静かに覚悟を決めると、夜の歓楽街を再度眺めた。


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