表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

新たな一歩


改めて自己紹介を…と言いたいんだけど、事故のせいか自分のこと一切覚えてないんだよなぁ。

性別が男ってゆーことだけは覚えてる。

あの事故の瞬間は思い出せたんだけどなぁ……

あと何で俺ふわふわしてんだろう、もしかしてこれが魂とかゆーやつ?でも何だか心地いい、まさか此処天国なのか?真っ白な空間しかないけど。


そう思案していると。

「……………?」何だかそよ風が吹いてきた。

魂って体感あるのか、ビックリだ。

でも、なんか風強くなってないか?

さっきまではそよそよと吹いていた風が徐々に強くなっていく。

飛ばされないように踏ん張りたいけど、足がないから踏ん張れない……。え?やばくないか?段々魂が流されてるんですけど!


しかもよく見ると流されてる先に亀裂がある!

これどうすんの!?

誰か居ませんかーー!!

助けてーー!!


魂の叫びも虚しく亀裂は段々と近づいている。

しかも以外とでかい亀裂だ、そして向こう側は真っ暗……。

天国から地獄に堕ちるとはまさにこの事か。

ショックの余りまたもやブラックアウト…………。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー白の空間にてー


「彼ノ転生ガ完了シマシタ」そう空間に声が響く。


「そうか御苦労様、それにしても転生とは何年ぶりだろうかねぇ」少ししゃがれた声が次いで響く。


「1206年振リデス。」


「そうかぃ、よく覚えてるねぇ、…にしても彼には申し訳ない事をしたねぇ。なんの説明も出来ずに行かせてしまった。」


「ドウセ以前ノ記憶モ、此処ノ記憶モ忘レマスカラ」


「そりゃそうだけどねぇ、せめて少しでも幸せになれるようにしてあげないとねぇ」


彼の者に幸多き事を……そう呟いた声のあと白の空間は消滅した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


森海の村カイナ:その名の通り森と海に囲まれた自然豊かな村。

そんな村の一角に住む一人の少年“ヴィンセント”彼は今、絶賛日向ぼっこ中である。


孤児院の庭の大きな木の根本に腰を下ろしボーッとする時間は最高である。時に昼寝をし、時に無心で草をむしる。

なんて贅沢な時間だろうか…そう幸せに浸っていると。


「ヴィンセント‼先生が呼んでるぞ‼」遠くから自分を呼ぶ声がする。


「……………なにも聞こえない」さぁ幸せのお昼ねタイムだ。

体を大木に預け目を瞑る。太陽の暖かさ、風がそよぐ心地よさ全てが俺を夢の世界へと導いている。この導きに逆らうなんて万死に値する。いざ行かん夢の世界へ…………だがそう簡単には行けなかった。


「ヴィンセント!!!」まさかこんなに近くに万死に値する奴が居るとは。

俺の幸せを遮ったコイツは同じ院に住むハワード。

「アンタ、今日の夕食にはせいぜい気を付けな」そう心で呟く。


「何だよ、俺の仕事は終わらせたぞ」

俺の仕事とは畑の管理、雑草駆除、害虫駆除、収穫、水やりなどその他諸々だ。


「だから、先生が呼んでるって早く行けよ‼お前はいつもぐうたらし過ぎだ!何度言えば分かるんだ!ノロマ‼」ハワードはプンスカ怒りながら先生が居るであろう部屋を指差した。


幸せお昼ねタイムは後回しだな……。

まだ此方を睨み付けてるハワードに「今行くよ」と声をかけ重たい腰をあげる。

最近何故かハワードの機嫌が悪い、八つ当たりはやめて欲しいよ全く。


他の院生に狙いを定めたハワードを睨みながら先生が居る部屋へと向かう。


“先生”とはこのマリアナ孤児院の創設者であり現院長先生の事。

あとは数人のお手伝いさんが居る。

小さい孤児院ではあるが正直、他の孤児院よりは恵まれてると思う。仕事をしたら少ないけどお小遣いは貰えるし、読み書きも教えてもらえる。まぁ他の孤児院をよく知らないけど。


あっと言う間に先生の部屋に到着だ。俺は全然ノロマなんかじゃないぞ。


「先生、ヴィンセントです」扉の向こうに居るであろう先生に声をかける。


すぐに「入りなさい」と返された。


「失礼します」と言って院長室に入る。

先生は机に座り書類に目を通していた。チラリと此方に視線を向けると、そこに座りなさいとソファーを指差す。


言われた通りソファーに座りボーッと窓の外を見る。


「ふぅ…」ため息が聞こえたため、窓の外から先生へと視線を向ける。


先生は机から立ち上がり俺の正面に座る。

真っ白な髪に皺だらけの顔、確か62歳位だったかな?

元々穏やかな人だからか、なんとなく雰囲気がほんわかしてる。

怒ると怖いけど……。


「ヴィンス待たせてすまないね」


「いえ大丈夫です!ボーッとしてたので」そう答えると、先生は皺だらけの顔を更に皺くちゃにして微笑んだ。


「そうかい、そりゃ良かったよ。其にしてもヴィンスは本当にボーッとするのが好きだねぇ何を見てたんだい?」


「鳥を…俺もあんな風に飛べたらなって」


「なるほどの~儂も空を飛んでみたいわい、そうじゃヴィンス、もし飛べるようになったらどっちが早いか競争しよう」この人は俺の大したこと無い話にも本当に楽しそうに聞いてくれるし話に乗ってくれる。優しい人だ。


「ところで…」と先生が話を続ける。

「ヴィンスは今年で幾つになったかな?」


「16です」


「早いの~あんなに小さかった子がもう16歳かい」

そうかい、そうかいとまたもや楽しそうに頷いてる先生。


「ヴィンス、君も知っとると思うが子供は15歳になると教会でステータス解除を行う、残念なことに君は去年体調を壊してまだステータス解除を出来とらんかったの」


“ステータス解除”

子供が15歳になると受けることが出来る儀式だ。

その名の通り解除を行うことで自分のステータスを見ることが出来る。義務では無いから受けなくても問題はないが、ほとんどの人がこの儀式を行う。


だが俺は去年の15歳を迎えた日に運悪く体調を壊し2週間近くもベッドに臥せていた。


回復した後に行けたら良かったけど、ステータス解除は15歳を迎えた日から1週間以内と決まりがあった。

其を逃すと次は一年後、つまり16歳を迎える日まで待たなくてはならなかった。


そして今日がその日、俺は今日で16歳になった。

正直、その事をすっかり忘れてた…。


「君もこの時を楽しみにしてたであろう、儂も自分のステータスを見たときにはそれはもう嬉しかったもんじゃ、特にスキルは特別じゃ!今日の仕事は終わったようだし、教会に行っておいで」


「とても楽しみにしてました!先生ありがとうございます、俺行ってきます!」俺より楽しそうにしている先生を前に忘れてたなんて言えない。だから、全力で表情筋を動かす。ニコニコと。


ニコニコ顔のまま院長室を出る、勿論部屋を出る時もニコニコ顔のまま挨拶をした。先生はもっとニコニコしてた。


そのまま玄関に向かって歩いてると、たまたま通りかかったハワードがキッと目を吊り上げて此方に来たが、俺の顔を見ると一瞬ギョッとして目を逸らしながら通りすぎていった。


どうしたんだろう…?いつもならお小言がとんでくるのに。

まぁいっか難は逃れた。


教会か…孤児院からはそう遠くないけど、今からだと往復20分位かな?儀式がどれくらいかかるか先生に聞いとけば良かった。

夕食は間に合うかな?大事な仕事が残ってるからな。


そう思いながらスタスタと教会に向けて足を進める。

あっ、顔は疲れたからいつも通り。

それにしても久々に孤児院の外に出たな…。

といっても俺もそろそろ孤児院を出ないとだしなー。


マリアナ孤児院は17歳までには院を出るようにと決まりがある。

お手伝いさんの話では、他の孤児院は大体ステータス解除したら出ないと駄目らしいが、先生が“新しい自分”に慣れるまではと17歳までは居て良いと決めてくれたそう。本当に優しい人だ。


ちなみにハワードは今年で17歳だ。

やたらと自分のステータスを気にしてたけどそんなに良かったのか。


そんな事を考えてるうちに目的地に着いた。

小高い丘の上、森も海も両方を眺めることの出来る場所に建つ、こじんまりとした教会。


中に入ると数人の子供と司祭様の姿がある。

何人かは親も来てるようだ。

司祭様は祭壇の上に、子供達は列を作って順番に並んでいる。

俺も最後尾に並ぶ。そんなに居ないから以外とすぐ終わりそうだなぁ…。自分の番が来るまでボーッとした。


気づいたら前の子供が祭壇から降りてきた。

そして司祭様と目が合い「君が最後みたいだね」と言われ、振り返ると誰も居なかった。帰るの早いな、少しは余韻に浸るとか無いの?そう思いながら祭壇に足を進める。


「よろしくお願いします」お世話になる人には必ず挨拶をすること。先生の教えだ、当たり前のことだけど大切なこと。


司祭様はにっこり微笑んで「では名前を教えて下さい」と。


「ヴィンセントです」


「ヴィンセントだね。ではこの水晶に手を触れて体に流れる魔力を想像してごらん」


言われた通りに水晶に手を置き目を瞑って魔力を想像する。

何だかポカポカしてきた。


「ヴィンセント、今度はその魔力を目に集中してごらん」


集中、集中。

不思議な感じだ、暖かくて眠たくなってきた…寝そう。

「ヴィンセント寝ないでね」司祭様の勘は侮れない。


「うん、ではそのまま目を開けて」


ポカポカしたままの目を開けると「…!?」これがステータス。


ーーーーー


ヴィンセント(16)


種 族:ハイヒューマン

職 業:孤児院の畑担当

ギルド:無

配偶者:無

スキル:土魔法 鑑定 上級農作業

補 足:ゾーラの加護【健康 幸運】


ーーーーー


此れがステータスか……ジーっと見つめる。

俺ってハイヒューマン?ヒューマンじゃないのか?

司祭様に聞こうと思って顔を上げると、先に司祭様が口を開いた。

「ヴィンセント、ステータスは人に見せたりしないようにね、もし分からないことがあれば一番は自分で調べることだよ」と。


司祭様に聞くのは無理か、先生に聞いてみよう、先生なら見せても大丈夫だと思うし。


そうと決まれば早く戻ろう。

俺も余韻に浸るとか出来なかったな、なんせ分からないことは聞けないんだもんな。


司祭様に「ありがとうございました」とお礼を述べ教会を後にする。


亀更新ですがよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ