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パンドラ奇譚

作者: 山方 翁学
掲載日:2017/02/12

眩しい。


……ああ、君は開けてしまったんだね。


今まで決して開くことのなかった箱。


それを君が開けてしまった。


……いや、開いてしまったと言うのがいいかもね。


どんなに鋭い剣や、どんなに火薬を詰めた爆弾でも壊すことができない。


ついさっきまで開くことのなかった箱。


それが、君という存在に触れて、ひとりでに開いた。


僕はそれを責めるつもりはないよ。


いつかは、誰かがその役目を果たしただろうからね。


ともかく、君はそれに驚いて、急いで箱を閉めたんだ。


でも、長い永い、永遠とも悠久とも言えるような時間が流れた。


その間、ずっと閉じ込められていた、この世を形作るもの。


箱が開くのに伴って、溢れて、出ていっちゃった。


楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、それに、辛いこと。


ありとあらゆる災禍が放たれていったね。


みんなみんな、溢れていった。


……ねぇ、どうして謝るの?


僕は今とっても幸せだよ?


君に感謝しているくらいさ。


ようやく、息苦しい思いをしなくて済むからね。


……でもやっぱり、間違いだったかも。


だって、この中には僕しかいない。


世界には僕しかいないんだ。


それになんの意味があるだろう。


居たら居たで疎ましく思っていたことも、居ないなら居ないで物寂しく思うんだ。


我ながら、わがままな奴だと思うよ。


……うん、やっぱりみんなが必要だ。


みんなが居たからこそ、僕がいる意味が生まれる。


そんな気がするんだ。


そこで、君にお願いがある。


なに、心配することはないよ。


とても単純明快で複雑怪奇な頼みだからさ。


君は必ず僕の頼みを聞いてくれる。


ずっと昔からそう決まってるんだ。


この箱を開けた君だからね。


それじゃあ、僕を連れて一緒にみんなを取り戻そうよ。


君の一生を僕にちょうだい。


僕が君を支えてあげる。


……僕の名前が知りたいって?


そうだね、これからずっと一緒にいることになるだろうから。


僕の名前は、『 』。


ちゃんと聴き取れたかな。


君が閉めた箱の中に、唯一残った僕だから、きっと君と上手くやれると思うよ。


さあ、行こう。


僕が入った箱を、懐に入れて。


これは、君の運命の物語だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、こんばんは。 ギリシャ神話好きの者です。 災禍も希望も不幸も幸福も、みんな大切な要素ですね。 唯一残った『 』を胸に、「この世を形作るもの」を探して、ひとつひとつの感覚を大切に…
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