「ボンバーマン」と黒い知恵
「ボンバーマン」に最初に触れたのは近所の級友Y宅だった。彼は仲間内で新作カセットを買うのが早く、その日も「ボンバーマン」を買ったYに呼ばれたのだが、もう夕方だった。息せき切って彼の家に行くと、薄暗い居間の家具調テレビに映った鮮やかな緑色が焼き付いた。ぼかんばかんと爆発する爆弾。Yは見せてくれるだけで遊べなかったけれど、コロコロコミックとファミマガでみたとおりのゲームが目の前にあることに興奮した。
でもその熱はすぐに冷めた。変な画面、変な音楽、変な敵、弱い自分。とことん変なゲームだった。正月が過ぎたころには貸してもらえたのも、その変さからかもしれなかった。
やっと遊んでみると、やっぱり変なゲームだった。まずはファミマガの記事の通り1面で爆風強化を取ってはゲームオーバーを繰り返して強くする。時間が切れるときらきら光る強い敵が現れる。なんだこれ? 疑問ばかりが募る。アイテムで次第に強くなる。爆弾が置ける数が増える。リモコンが使える。爆弾をすり抜けられる。爆風に当たっても平気になる。でも一回死ぬとほとんどのアイテムを失ってしまう。そうなると急につまらない。むしろ強くなった爆風が自分を襲うので難易度が上がって仕方がなかった。
とにかく変なゲームだった。そしてこのゲームでひとつ黒い知恵を手に入れる。
このゲーム、パスワードを適当に入れ替えても遊べたのだ。しかもありえないほど強いボンバーマンで。死んだら手放すアイテムを最初から持っていたり、アイテムの位置が色違いブロックで表示されたり。もうどうしようもなく変なゲームになった。
今なら一言で終わる。バグ、だ。
自分で発見したのが、ファミマガで見たのか。もうむちゃくちゃだった。変なゲームどころの騒ぎではなかった。ゲーム自体が爆発四散してしまった。Aボタン押しっぱなしで爆弾を置く→即爆発→爆風で誘爆→すぐ爆弾を置く→誘爆で歩きながらぼぼぼぼぼぼぼぼと連続爆発。敵なんて木端微塵。次の面にいくドアを爆破すると最強の敵が出てくるのだけれど、それすら敵ではない。
ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼーーーーん。壊れたゲームの世界でただただ爆風を炸裂させて遊び続けた。
そんな小6の冬だった。このパスワード入れ替えの知恵はその後、いろんなゲームで火を噴くのだが、まだ知らなかった冬だった。




