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出逢い

 魅鬼姫と別れ、ようやく帰路についた俺は珍しくある少女が門前に立っていることに気がついた。

 夏の微風でもさらりと流れる短い髪が日光をうけ、美しく銀に輝いている。中学生くらいの身長だ。

 まだ幼さが残る顔立ちはとても可愛らしく、折れてしまいそうなほど華奢な体躯、紫外線ガン無視の白磁のような肌、全てにおいて俺の保護欲を掻き立ててしまう。

 一言で彼女を表現するならパーフェクト可愛いだ。異論は認めない。

 ってか白雪はなんであそこに立ってるんだ? 外なんて滅多に出ないのに。

「どうしたんだ白雪?」

 声をかけると、ほゎ~っと飛んでた意識が還ってきたようにビクンと肩を揺らし二、三度まばたきしてから俺に気付く。

「……あ、主さま」

「家に入らないのか?」

 白雪は俺の家……っと言っても死んだじいちゃんの家で訳ありの二人暮らしをしている。

「……人、寝てる………から」

 は?

 首をかしげるも白雪の目線をたどると、そこには確かにぐったりと横たわる人が。

 ……。

 …………。

 …………………………。

「あれは寝てるって言わねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 長い間をおいてしまったがすぐさま駆け寄り肩を揺する。

「おい、あんた大丈夫か!?」

 息はしてるが返事はない。

「熱にやられたのかもしれねぇな。白雪、とりあえず俺はこの人を居間に運ぶ。お前は冷やすものと水分補給できるものを頼む!」

 なぜ巫女の姿なのかは知らないが、とにかく意識のない女性を抱え居間まで運んだ。






「さて、どうしたものか」

 居間に寝かしたのはいいがそこから先を考えてなかった。一応首や大動脈が流れてる辺りを冷やすことはしているが目が覚めない以上詳しい事情も聞けない。

「やっぱここは救急車呼ぶべきかも……」

「うぅん…………」

 小さいうなり声とともに女性がゆっくりとまぶたをあげる。

「お、良かった目が覚めたみたいだな」

 声に反応し、目をこちらに向ける。

「あの、ここはいったい……」

「俺の家だ。あんたは玄関に倒れてたんだが、覚えてないか?」

 しばらく考えるしぐさをみせるが、やがて首をふった。

「まぁいいか。どうする? 必要なら救急車も呼ぶが」

「だ、大丈夫です! 倒れた理由も解ってますから」

 慌てて上体を起こし………きれずに重力に引かれ畳に張りつく。

「おい、救急車呼ぶぞ」

「うぅ、それだけは勘弁です」

 なぜか否定されたが、まぁなにやら事情持ちのようだし深く関わるのはよそう。

 何か言いたいことがあるのか巫女さんが先程からチラチラとこちらを見てくる。

「なんだ?」

「あのですね……大変恐縮なのですが…………あうぅ、やっぱりいいです!」

「俺に出来ることがあるなら聞くぞ?」

「えっと……でも………」

 言いよどむ巫女さんの変わりにクルルと可愛らしくお腹が鳴った。

「なんだ腹へってんのか。何か作るから待ってな」

「いいんですか!?」

 とたん元気に正座する巫女さん。

「あ、ああすぐ作る……」

 瞳をキラキラと輝かせ俺を見詰める巫女さんに若干ひいてしまったのは秘密である。


 飯は無難に焼きそばをチョイスした。

 まずは冷蔵庫にあった適当な野菜と豚肉を炒め、いい感じに野菜がしなると麺を投下しソースをぶっかける。

「いい匂いですね~」

 どうやら腹ペコが焼きそばの香りに我慢できず台所にやってきたようだ。

 俺は振り返らず質問を投げ掛ける。

「巫女さん、もしかしてあんた行き倒れか?」

「うー、お恥ずかしながらそのとおりなんです」

「なんでまた」

「仕事の都合でいろんな所に飛ばされるんですが、休暇がないほど忙しくて。まぁ、ぶっちゃけ逃げました」

「おい!」

 てへへと笑う巫女さんにツッコミを入れる。

「結果、迷子になってしまって……」

 このザマと。

「そういや名前がまだだったな。俺は秋人、まぁ平凡な高校生だ」

「秋人さんですね。あ、私の名前気になりますか? なりますよね!」

「いや全然」

「あー、ちょ、ちょっと待ってください! 溜めたりしませんから! すらっと名乗りますから!! むしろ名乗らせてぇぇぇぇ……」

 もしかすると俺って変な人助けちまったかもしれない。

「名前だけな、変な前置きとか要らないから」

「任せてください! 色々と呼ばれ方がありますが一番有名な名前でいいですよね?」

「いや、複数ある時点で本名とは言えないと思うんだが……」

 さて、そろそろか。

 ガスコンロの火を止め皿に盛る。

「細かいことは気にしたらダメです。

 ――私の名前は天照大神、日本の最高神にして太陽を神格化した存在です。気軽にあーちゃんと呼んで下さいね?」

 ん? こいつ今なんて言った? 神って言わなかったか?

 フライパンを持ったまま固まり、無言のまま五秒くらい過ぎた。

「ところで秋人さん、秋人さんは何の神様なんですか?」

「俺、人間なんだが……」

 思考が回復してきた俺は今の言葉が完全な失言だったことに気付く。

「またまたぁ、冗談が好きなんですね。人間には見えるはずないじゃないですか~」

 良かった、まだこいつに話を合わせれる。今下手に勘ぐられるのは色々とマズイからな。

「すまん最近人間から神になったばかりでさ、まだどこかで人間ってこと引きずってるのかもしれない」

「あー、あながち人間ってことはハズレてないんですね?」

 最近もと人間って多いんですよ~と笑う天照にこちらも愛想笑いを返すが、内心バレないかと気が気でない。

「まぁ続きは焼きそば食いながらにしよう、温かい方が美味いからな」

 さりげなく話題を逸らし一息つくが、まだまだ聞き出したいことがある。むしろここからが本番だ。

 人が相手ではないと気を引き締め直し焼きそばを居間に運んだ。



 文字数は少ないですが今後もお付き合いいただけたら幸いです!

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