~ 8 ~
「いただきますです!」
物思いに耽っている隣で元気な声が響く。
気が付けばマスターの作った料理は既に目の前に運ばれており、横を見れば挨拶を済ませたリルが目を輝かし料理を見つめている。
彼女は我慢できないと言わんばかりに手にしたフォークを魚に突き刺すと、もう片方の手で葡萄酒のグラス持ち、物凄い勢いでその両方を口に運び舌鼓を打ち始めた。
「どうして若い女が居ないんだ?」
出された食事には手を着けずマスターに話しかけると、別の客へ酒を注いでいた彼は片方の眉をぴくりと動かして目線を静かに返してきた。
「まさか旦那もハンターかい?」
ハンター。
それは悪魔を精霊石に封じ込め、ギルドで換金することを生業としている者たちの一般的な呼称だった。
店内にいる鎧を纏った体格の良い男たちはハンターで間違いない。
「やっていることは同じだな」
「そうか。 なら、話は早い。 最近この町では若い女が行方不明になる事件が相次いでいるんだ。 で、その事件には何かしらの悪魔が絡んでいるっていう噂さ」
「それで若い働き手が居ないのか」
「そう言うことだ。 だが、全員が居なくなったって訳じゃない。 被害が広がらないよう用心の為に勤務を見合わせているんだ」
「賢明だな」
「……正直なところ、怯えて家から出てきてくれなくてね。 若い給仕目当てに来てくれる客もいるってのに、こんな状態が続いたんじゃ商売上がったりだよ」
「十分盛況に見えるが?」
「今この店に居る厳つい顔をした他の連中は皆、噂の悪魔を封じ込めようと躍起になっているのさ。 これだけの事件だ、精霊石に封じ込めてギルドにもっていけば、莫大な金が手に入るからな」
「たしかに、良い金になりそうだな」
「だが、事件解決前のハンターってのは金がなくて逆に羽振りが悪いの何の……」
「違いない」
彼の言葉にレイヴァンは思わず苦笑した。