~ 31 ~
リルは顔を覆っていた指の隙間からゆっくりと主人の姿を覗いた。
すると彼は剣を身体に受けることなくその場に立っている。
レイヴァンは左胸に衝き刺さろうとしていた刃を光り輝く剣で受け止めていた。
「ば、ばかな!」
ルーマは目の前で何度も起こる予想外の動きに驚きを隠せない。
「何なのだ、その剣は! いったいどこから!」
レイヴァンが無言のまま輝く剣を振り抜くと、彼女の不気味な悲鳴と共に右腕が剣を握りしめたまま宙を舞って床に落ちた。
「ル、ルーマ様!?」
ブライトはその一瞬を見逃さなかった。
様子を見ていた老人が驚きの声を上げ自分への意識が薄れていると感じ取ると、すかさず相手の腕を振り解いて前方に転がった。
束縛から逃れた彼は小さく喜びの声を上げる。
老人は我に返ってブライトを襲おうとしたが、それよりも早くレイヴァンが目の前に現れた。
彼が輝く剣を薙ぎ払うと、老人の身体は真っ二つに斬り裂かれる。
「な、なぜ、一瞬で」
そう言い残すと、先程のガーゴイルと同じように石となり息絶えた。
「悪い、レイヴァン、お陰で助かった」
「気にするな、いつものことだ。 それより、もう一働きしてもらおうか」
ルーマの動きを警戒しながらレイヴァンが檻へと視線を移すと、その視線を追ったブライトは意を汲み取り大きく頷いた。
「女の子を守るのは俺の得意分野だ」