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「所詮、人間なんてそんなものよ! 私は知っておるぞ、その瞬間移動も精霊術であろう? 下等な人間が使う術。 使うためには精霊の力を借りる必要があり、力を借りるためには呪文を唱える必要がある。 何とも面倒な魔法じゃ」
「詳しいな」
「つまり、いつ術を使うのか手に取るように解るわ!」
今度はルーマが先に攻撃を仕掛ける。
レイヴァンに接近しながら、鞭を振るった。
彼は攻撃を横にかわすと相手へと接近を試みる。
「何度やっても同じ事よ!」
彼女が眼を見開いて声を上げると再び衝撃波がレイヴァンを襲う。
しかし、衝撃波を受ける瞬間に彼の身体は輝き姿を消していた。
「こっちだ」
レイヴァンは目を見開いて驚くルーマの側面に現れると、剣を真横に斬り払って彼女を捕えた。
ルーマの悲鳴が室内に響く。
「何故だ! 何故、術を使わずに移動できる!」
「術は使ったさ。 ただ世の中には例外が存在する。 それだけのことだ」
よろめきながら後ずさりする彼女にレイヴァンは追い打ちをかけた。
「それから、もう少し人間について学んでおくべきだったな」
腹部に攻撃を受けた彼女の動きは鈍い。
簡単に間合い詰めるとレイヴァンは力いっぱい剣を斬り上げた。
剣が再び彼女を捕えて吹き飛ばす。
ルーマは腹部に二つ目の傷を追って血飛沫と共に宙に舞うと、背中から床に倒れ込んだ。
「お、おのれ!」
「終わりだな」
レイヴァンがふらふらと立ちあがるルーマとの距離を詰めた瞬間、室内に声が響いた。
「そこまでにして頂きましょう!」
大きな声に、剣を振り抜こうとしたレイヴァンの動きが止まる。
振り返れば、タキシードを着た白髪の老人とブライトが居た。
見ればブライトは老人に捕まり鋭い爪を背中に突きつけられている。
「そこの方、この人間を助けたくば、その場を動かず、剣を捨てて頂きましょうか?」
「レイヴァンすまねぇ。 犬どもは何とかしたんだが、この爺さんに捕まっちまった。 やけに怪力でさ、抜け出せないんだ」
二人はゆっくりとレイヴァンたちの所へと歩いてきた。