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彼女の愚痴を聞いたからか、しばらくすると今度はもう一人の男がぼやき始めた。
彼は茶色い短髪で、背丈は主人と呼ばれる男よりも高く身体も一回り大きかった。
ゆったりとしたシャツとズボンを着込んだ彼は、たくましいその腕で大きな荷物袋を担いでいる。
「リルの言うとおり、俺も早く町に着きたいぜ。 久々に腹いっぱい飯を食って、酒を飲んで、そして可愛い女の子たちと楽しい夜を過ごしたいからな!
……レイヴァンだってそう思うだろ?」
「そうだな」
リルに主人と呼ばれ、体格良い男にも素っ気無い言葉を返した男の名はレイヴァンと言うらしい。
ロングコートをはじめ服装の全ては黒系統でまとめられており、金色の髪と瞳が一層際立って見える。
目鼻は整っていて結構な美男子だ。
三人の中で彼だけが腰に剣を携えていた。
「お前って奴は相変わらず返事が冷たいな。 気持ちがこもってない、気持ちが!」
「相変わらずなのはお前も一緒だ、ブライト。 たまに言葉を発したかと思えば、飯か酒か女。 それしか言えないのか? よもや旅の目的を忘れた訳ではないだろうな?」
「誰が忘れるか。 だがな、俺はその三つの楽しみがあってこそ頑張れんだよ!」
二人は一瞬で剣呑な雰囲気を醸し出したが、幼なじみとして長年行動を共にしているのでお互いの考えは良く解っていた。
「レイヴァン、お前は真面目すぎる」
「お前は不真面目すぎる」
絶妙の間合いでレイヴァンが言葉を返すと、鋭く睨み合った視線は直ぐに柔らかくなる。
ブライトと呼ばれる茶髪男の笑い声が大きくなると、レイヴァンは笑いを堪えるように小さく肩を揺らした。