~ 28 ~
レイヴァンは剣を構え直すと、相手を見据えた。
「殺される前に答えろ。 お前はメフィストフェレスが何処に居るか、知っているか?」
「メフィストフェレスだと? ……知らぬな」
「そうか、知らないか」
「知っていたとしても、お前如き人間に話す筋合いはない」
「確かにそうだ」
苦笑した後、彼は一つ息を吐く。
悪魔が素直に情報をくれる訳がない。
何より、悪魔が口にした話を鵜呑みにするつもりも毛頭無いのに、僅かに期待した自分は何とも滑稽だった。
自分を嘲笑したレイヴァンは目の前の相手を討つことに専念しようと意識を切り替えた。
息を止めた彼が力強い踏み込みで再び前に出て間合いを詰めると、彼女は壁に掛けてあった鞭を手に取って、すかさず振るう。
レイヴァンが身体をひねって鞭をかわすと、鞭は鋭い音を立てて床を打ちつけた。
「小癪な人間め!」
彼は走りながら体勢を整えると剣を振りかざした。
「カアァッ!」
剣がルーマを捕えようとした時、彼女は眼を見開いて奇声を上げた。
その瞬間、物凄い衝撃波がレイヴァンを襲った。
彼は衝撃にあおられて、大きく押し戻された。
「厄介な攻撃だな」
「さっきの勢いはどうした?」
ルーマは笑みを浮かべている。
「そうだな」
レイヴァンは剣を構えながら、先程と同じ言葉を紡いだ。
「刹那を煌く光の精霊よ、光の道を開きて我を導け」
「同じ手が通じるとでも思っているのか? ……甘いわ!」
彼の呪文に呼応するかのように彼女は叫ぶと、見計らったように鞭を振るった。
鋭くしなる鞭が側面に現れたレイヴァンの腹部を捕える。
彼は衝撃を受けて、大きく後方へ弾かれた。