~ 17 ~
「シャァッ!」
奇妙な声と同時に老人の鋭く伸びた爪が胸元を目掛けて繰り出されると、レイヴァンは振りかざしていた剣をすかさず身体に引き寄せて刃で受け止める。
甲高い音が闇夜に響いた。
「これはこれは、やりますね」
老人は不敵な笑みを浮かべると続けて攻撃を繰り出そうとするが、今度はレイヴァンがわずかに早く攻撃を仕掛けた。
爪を払い退けると、剣を真横に薙ぎ払う。
鋭い一閃だったが、相手を捕えることはできなかった。
老人は後ろに跳躍して攻撃をかわすと、そのまま空中で静止したのだ。
一瞬呆気にとられるが、すぐに闇にまぎれて羽ばたく老人の翼に気が付いた。
「小賢しい真似を」
「おやおや、お気に召しませんでしたか?」
老人は不敵な笑みを浮かべ続けながら、空中を左右に移動する。
「本当に気に食わない存在だ」
「これはこれは、悪魔にとって最高の褒め言葉を頂き光栄ですね」
老人は腕を静かに胸の前にもってくると、再び深くお辞儀をした。
「そのふざけた口調と態度を取れるのは今のうちだけだ」
レイヴァンの剣を握る手に力が入る。
「面白いことをおっしゃる人間ですね。 ですが今まで私を倒そうとした皆さんも、そうおっしゃいましたよ? そして、無様に死んでいった」
「俺を今までの人間と同じだと考えないことだ」
「そうですか、それは楽しみです」
空中でほくそ笑んだ老人はおもむろに言葉を続ける。
「……しかし、空を自由に飛ぶことができない人間というのは、いつ見ても実に不便な生き物ですね」
「それがどうかしたか?」
「大問題だと思いませんか? それで、どうやって自由に空を飛び回るこの私を攻撃しようというのです? いっそのこと、その剣を私に向かって投げ付けてみますか?」
「それは良い考えだ」
レイヴァンは不敵な笑みを浮かべると剣を構えながら相手を見据えた。