~ 11 ~
レイヴァンはベッドに横たわりながら天井を見上げ物思いに耽っていたが、そこに風呂上がりのリルがやってきたことで状況が一変した。
「ご主人様、何を考えているですか〜?」
彼女は主人に許可を取ることなく開口と同時に彼目掛けて飛びかかる。
大きな音を立てベッドが軋むもののレイヴァンは表情を変えることなく彼女を受け止めると、何事もなかったかのように無言のまま自分の横へと退かした。
「どうしたんですか、ご主人様?」
嬉しそうに主人の顔を覗き込み尋ねた彼女だったが、視界に入った彼の厳しい表情を見て急に伏し目がちになった。
「……ご主人様は、いつもベッドの上で何かを考えて難しい顔をしているです。 たまにはブライトみたいに可愛い子とお酒を飲んで、楽しい夜を過ごせばいいのに。 そしたら……」
「俺の趣味じゃない」
レイヴァンが言葉を遮ると彼女は一層表情を曇らせたが、何を思いついたのか急に笑顔になった。
「なら、やっぱり、リルがご主人様を満足させるしかないです! リルは先日大人の女になったです!」
言い終わるや彼女の表情は笑顔から不敵な笑みに変わっている。
突拍子もない発言にレイヴァンも思わず表情を変え口数も多くなった。
「俺が一度でもお前の相手をしたことがあったか? どこから、そんな考えが生まれるんだ! まだ酔っているのだろう?」
「え? そんなことないですよ、ご主人様〜!ご主人様に助けられたあの時から、リルの全てはご主人様のモノです〜!」
彼女が再びレイヴァンに抱きついて頬ずりすると、葡萄酒の臭いが彼の鼻を刺激した。
「お風呂でちゃんと身体を洗ってきたです」
「いいから、もう寝ろ」
「えぇ〜! 嫌です〜! ご主人様はリルに興味がないんですか!?」
「無いね」
「酷いです〜! 酷すぎます〜! リルは大人の女です〜!」
彼女はしばらく駄々をこねていたがレイヴァンが相手にしないで放置していると、いつの間にか眠りについていた。
彼女が寝付いたのを見届けるとレイヴァンは再び天井を静かに見上げ、物思いに耽りながら眠りに着いた。