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停滞前線  作者:
4/16

 朝、起きてきた僕に向かって母は「いつもより早いね」と言う。今日は学校でしょ、と言うと大して興味も示さず洗面所に入っていった。

 家を一番早く出る父は、既に玄関で靴を履いている。実は、父は少し遠い会社に勤務している。父が農業をしないことを、祖父母はなかなか承諾しなかったらしい。小学生の頃、「どうやってじーちゃん達を黙らせたの」と聞くと「息子が農家になると約束したら簡単だったよ」と言っていた。兄が上京すると言い出したときに家族全員がすぐに認めたのは、僕の存在があったからだそうだ。そういう意味で、兄は僕には良くしてくれる。

 いってらっしゃい、とかすれた声で言うと、父は右手を挙げて、いってきますと大声をあげた。

「兄貴、今日もプール行くわけ?」

「さすがに毎日、あんな遠いところまでは行けないよ」

「じゃあ何するの」

「ま、涼子の家に寄ってから、家の手伝いする」

「畑に行くの嫌なんじゃなかったっけ」

「仕方ねえじゃん。母さんに怒られたんだから」

 ご飯とみそ汁とたくあん。シンプルな朝食を急いで自分の口に放り込む。急ぐ必要もないが、朝食はとろとろ食べるものではない。それは、祖父母に何回も躾けられたことだった。

「じーちゃんとばーちゃんは?」

「もう畑に行ったよ」

 だったら兄貴はそこでぐーたらしてていいの、と言おうと思ったが目の前の食事に一生懸命で、言うのを忘れた。そんなものだ。

 付けっぱなしになっているテレビをちらりと見ると台風について話しているようだった。台風何号がなんちゃら島付近まで来てるだとかそういう話。かなり発達していて、なるほど今まで見た台風のどれよりも大きい気がする。まあ、気のせいなのだろう。

 台風の時期なのか。さっさとこんな時期は過ぎ去ってもらいたい。これさえなくなれば、夏はすぐそこに来る。そうしたらもっともっと暑くなって、アイスクリームが売れるようになるだろう。

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