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第1話 戦士カルロス
勇者ジャンのパーティは、王都から東の魔物の巣窟へ向かう途中、小さな宿場町に立ち寄った。
夕暮れ時、市場は一日の終わりを告げる喧騒に包まれていた。
戦士カルロスは、鍛え上げられた巨体に似つかわしくないほどの繊細な表情で、路地の奥をじっと見つめていた。
「またか……」
彼のつぶやきに、魔法使いのリナが眉をひそめる。
「カルロス、どうしたの?早く宿屋に行かないと、いい部屋がなくなっちゃうわよ」
しかしカルロスは動かなかった。
彼の目には、誰にも見えない「何か」が見えていた。路地の暗がりにたたずむ、半透明の老婆の霊。
彼女は彷徨い、通りかかる旅人一人ひとりに何かを訴えようとしていた。
「ちょっと待ってくれ。すぐ戻る」
カルロスはそう言うと、重い鎧を着たまま、驚くほど軽やかに路地へと駆け出した。
これが、すべての始まりだった。




