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誰もわたしをしらない

作者: きたぼん

わたしは たなかみのる。男性みたいな名まえだけど41歳の女性だ。

ずっと、ふつーに、地味に生きてきた。


親は農家で会社員。変哲のない善人だ。

子供のころは、適度にいじめていじめられての当たり前の、見栄っ張りしてて。

小さな会社の事務員になって。25で小さな恋をして結ばれた。円満退社した。


ずっとストーリーを創作していた。

趣味だけど「いつかはきっと」の思いを抱えていた。


でも。この歳になれば、才能ないとわかる。

いやほどわかる、が、あきらめきれない。

積み上げてきた過去の自分が浮かばれないから。


子供がうまれてからは、とても忙しくなった。

夫の給料じゃ足りない。食べるために働かないといけなく。

やめた会社に頼んで、パートで使ってもらう。

子供は手がかかった。夫も手がかかった。


忙しい。けど書くことだけは、手放さなかった。

寝る間を惜しんで、思いつくままに書く。

小説投降サイトを知ってからますます夢中になった。

子供のときノートだったのが、パソコンに変わった。

書いて投降。書いては投稿する日々だ。


「なのにどうして!!??」


アクセスが伸びない。くたくたになるまで頑張ってるのに。読んでくれる人が少ない。

なぜだろう。ウケない理由がわからない。

小説を書くための本もたくさん読んだ。

著名な作品は、図書館でかたっ端から借りて勉強した。


人生も中盤。うっすら終わりがみえて焦る。

何か、足跡を残したいと、切な思いがふつふつと湧い止まらない。

楽しかったストーリー書きが、だんだん辛くなる。


面白さには絶対の自信がある。

ランキング上位なんかに負けない自信だ。

なのにどうして読まれない。


考えて考えて。

考え抜いて。

ようやく、答えにたどり着いた。


「わたしのこと。みんな知らないからだ」


売れる小説書きは有名だ。有名だから売れる。

わたしは無名。だから売れない。


面白さでなく知名度。タレント本が売れるのと同じ理屈だ。

わかれば、かんたんなことだった。


有名になるのはどうするか。


動画配信でウケる。

SNSで有名になる。

ニュースになることをする。


こんなところがよくある方法。

動画配信か。ビジュアルに自信がない。編集に時間がかかると聞く。

時間はいまもギリギリ。夜の3時に寝て5時には起きる。

2時間も寝てない現状、加工技術を学ぶ時間がない。あきらめた。


SNSはどうか。すきま時間にぽつぽつ投降だ。

じつは、とっくにやってる。フォロワー数に伸び悩む。

興味を持たれてない感じ。小説とおなじに。


名前が知られるだけじゃダメなのだ。

わたしという人間を掘り下げて、調べたくなるようじゃなきゃ読まれない。


ニュース。

ニュースだ。


世間に波紋を投げかけ、名を知らしめるニュース。

ネットやテレビで名が拡散すれば、成功したときのインパクトは絶大。


誰も知らないわたしを、誰もが知ってくれるようになる。

有名になるには? 事件が必要だ。普通じゃないすごい事件。


万引き? ニュースになるわけない。バカじゃないの。

コンビニ強盗? ただの犯罪。ろくなもんじゃない。

殺人? 誰を殺すの。恨みを買うし、ありふれたミステリーは見向きもされない。


どうする。

華麗な泥棒はアニメのなか。

名画を盗るのも、少女の心を掴むのも、男にまかせる……なんてね。


じつは、わたしにはある特技がある。

特殊能力といっていい。高校も大学も。受験はこれで乗り切った。

人の名まえを書き換えられるのだ。

特殊すぎて使いどころが難しい。使うとすれば今しかない。


明日、芥川賞受賞が発表される。

ノミネートされてる最有力候補の名を、わたしの名まえにすり替える。


「わたしの作品が注目される。人生の足跡が残せる。えいっ!」


20年ぶりに能力を行使した。


翌朝。ニュースを見たわたしはがっかりする。


『本年の芥川賞はノミネート最有力候補はナタナカミノル氏でしたが。漢字を特定しない同盟の人物は全国に1万人以上とされます。大きな混乱を避けるため本年の受賞は見送られることになりました。「なぜこのような事態になったのか我々にはさっぱり」。選考委員会の責任が問われ……』


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