八話「交差する剣閃」
俺を護衛する兵士たちは何者かによって次々と切り伏せられていっているのか、後方には俺を護衛する兵士たちの断末魔がこだましているが振り向いている時間はない今まさに眼前の敵戦艦ヴラムシャプーの艦橋に一撃を放つのだ。意識を集中させている抜刀態勢に入る中、俺は背中に激しい衝撃を受ける完全に不意を突かれれ身体を甲板に叩きつけられる。
艦橋に振り下ろそうとしていた七式斬艦刀は俺の手から弾き飛ばされ甲板に突き刺さる。
さらに俺に一撃を加えた敵は逆手に構えた巨大なナイフで追撃し俺の顔面を貫かんと迫り言葉を発する。
???
「ヴラムシャプーをやらせるかよ!」
俺はそのナイフを必死で押さえ込み隙を見て奴の脇腹に蹴りを入れどうにかその場を逃れる。
お互いに距離を取り鋭い視線を交わす。
俺の目の前に立っていたのはハの国北部を切り離しミレヤイハ王国を築いた男、ミコトの宿敵にして、ハの国最大の敵ドミトリーだ。
空間推進機を身に着け背中には鋭いナイフのように尖った尾のような装備を備えている。
一目見ただけで分かる異様な体躯、そして先ほどの攻撃で明らかになった尋常ならざる力強さは今まで戦ってきた敵とは桁違いだ。
ドミトリーは飛翔し俺に向かって吶喊してくる。
俺は斬撃を放つがドミトリーはそれを弾き返す。
俺たちの攻防は激しく甲板上で斬撃が繰り広げられる。
幾度も続いた攻防の末、ついに俺の斬撃がドミトリーの防御を突破し隙を作ることに成功する。
一瞬の好機を逃さず一式軍刀の刃をドミトリーの首元に向けて突き出す。しかしドミトリーは首をのけぞらせてその攻撃を回避した。
ユウ
「っ!?」
次の瞬間ドミトリーの尾が動き出し俺の軍刀を弾く。思わず驚きの声が漏れる。
ドミトリーは素早く俺と距離を取り鋭い刃のように尖った尾を使い、超高速の斬撃を繰り出して俺に襲いかかる。
ドミトリー
「コイツは躱せまい!」
俺は即座にスキル〈身体強化S〉を発動させ常人を超えた反射速度で反応し一式軍刀でその全ての攻撃を正確に弾き返し続ける。
ドミトリー
「素晴らしい動きだ!なぜお前のような腕の立つ奴がまだミコトの下に残っている!?」
この距離では一方的に攻撃されるだけだ。俺は状況を打開するため一度距離を取り一気にドミトリーへ接近する決意を固める。
ドミトリー
「ハの国旧総裁政府の実力者は全て俺とデナグが殺したはずだ!」
ドミトリーは俺が尾の斬撃の射程外に入ったと判断し、素早く先ほど切り伏せたハの国の兵士の遺体に瞬時に近づき二式小銃を引き抜き俺に発砲する。
ユウ
「俺は転生者だよ!」
小銃から放たれる弾丸は尾の斬撃と比べれば簡単に弾ける。俺は一気にドミトリーの懐に入る。
ドミトリーは小銃を投げ捨てナイフを構え俺の斬撃を受け止める。再び俺たちの刃が交錯し火花を散らし鋼同士がぶつかり合う甲高い音が辺りに響く。
ドミトリー
「見え透いた政治的プロパガンダだな!」
命を刈り取る一閃の応酬が繰り広げられる中、俺の真っ向斬りをドミトリーはナイフを十字に構えて受け止める。しかし俺はその防御を突破するために即座に右回し蹴りを繰り出しドミトリーを甲板に叩きつける。
俺は即座に立ち上がろうとするドミトリーの背中を踏みつけ動きを封じる。逃すわけにはいかない。
ユウ
「お前が俺の言葉を信じる必要はない! だが、俺がここに立ちお前を倒す理由はミコトとの約束を果たすためだ!」
俺はドミトリーの尾を掴み力の限り引き抜く。
ドミトリーは俺の隙を見逃さず素早く首を目掛けてナイフの刃を向け反撃を試みる。
ドミトリー
「ミコトの目的は手段が違えど俺だけでなくデナグ、ゾンガも同じだろうよ!」
俺はその斬撃を辛うじて弾いたものの軍刀を振り上げすぎてしまい逆に新たな隙を生んでしまうが、それはドミトリーも同じだ。
俺は咄嗟に膝蹴りを放つが奴も応戦して脛蹴りを繰り出してくる。
俺と奴の膝の骨が砕け激しい音が響き渡るが、それでも互いの闘志は衰えず激痛すら感じることなく戦い続ける。
ドミトリーが再びナイフを振りかざし、俺の顔に向けて刺突を試みたが明らかに距離が足りない、しかし次の瞬間、ナイフの刃が突然射出され俺の顔をめがけて飛んでくる。ドミトリーはナイフの柄に仕込まれたスイッチを押し刃を射出する。
俺は回転してその刃を回避したが頬に浅い傷を負い頬を血がしたたる。
ドミトリー「!!!」
完全な不意を突きながらも俺に致命傷を与えられなかったドミトリーは一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐにもう片方の手に持ったナイフを俺の身体に向けて突き出してきた。
しかし俺は回転の勢いをそのまま活かしドミトリーの左鎖骨に踵落としを叩き込む。
ユウ「終わりだ!」
ドミトリーが怯んだ隙を逃さず、軍刀で逆袈裟斬りを放つ。両手に肉を断ち切る重い感触が伝わる。確実に仕留めた。
ドミトリー「俺が死ねば誰が調停者になるんだ…… 皆…… すまん……」
甲板を血の海で染めて倒れ込む中でドミトリーは最後に何か呟く。その言葉のすべてを聞き取ることはできなかった。しかし戦いの中で垣間見せた言葉の端々から確かなのはドミトリーはハの国南部を支配するミコト、地下世界を統治するデナグ、そして東部を支配するゾンガと複雑なつながりを持っていることだ。
俺はドミトリーが完全に息絶えたの確認した後、視線を戦艦〈あぎょう〉の方へ向けると敵の増援と思われる正体不明の艦から拡声器を通じて何かを要求する声が響いかせている。
俺は〈ヴラムシャプー〉の甲板に突き刺さった七式斬艦刀を引き抜き、空間推進機を起動させ、力強く足元を蹴り〈あぎょう〉へと跳び向かう。不本意ではあるが今は〈ヴラムシャプー〉よりもミコトの元へ向かうことが最優先だ。




