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二十二話「復興へ」

 デナグとの戦いの後、捕らえられたルマロキが私の前に突き出された。彼女は私を見るなり呪詛の言葉を吐きデナグと自身が見据えていた未来は同じだと主張し特別軍事法廷では必ず地下帝国の正統性を訴え続けその正義を未来永劫記憶させると宣言した。しかし私はその必要はないとはっきり告げた。処罰の場が理念の宣伝と殉教の舞台にすり替えられてはならないからだ。ルマロキは一瞬驚いた表情を浮かべ、なおも言葉を続けようとするも私はそれ以上のやり取りに意味はないと判断し無駄な対話を断ち切るように軍刀を振るい首をはねた。和平合意の後に内乱を首謀し実行に移したテロリストの言葉に耳を傾ける価値はない。それにルマロキにとって“地上の悪鬼”である私の言葉が通じるはずもないのだから。


 こうしてハの国で繰り広げられた地上と地下の内乱は終息し統一後の戦闘も完全に終結した。しかし私には一息つく暇もなく次々と発生する復興活動の課題を一つひとつ解決していかなければならなかった。


 軍港に停泊する鹵獲された戦艦ヴラムシャプーはかつて恐怖の象徴の一部だった。それが今では旧ミレヤイハ王国軍の捕虜たちの帰国事業に用いられることになるなんて誰が想像しただろうか。


 東部の治安はほぼ回復し問題はほとんど解決したと言ってよい。しかし、新たな懸念も生じていた。人民平等党残党による襲撃は収束したもの組織自体は依然として存続している。そして穏健派が主導権を握ったことで戦いの場は武力闘争から政治の場へと移行した。


 地下世界では、ユウが率いる独立武装解除委員会の活動が再開された。この任務は極めて困難である。ハの国をはじめ地上と地下の双方で繰り広げられた血みどろの戦いによって相互の不信は根深く対話を重ねてお互いを理解していく以外に道はない。幸いなこと異世界から来たユウは地下世界の王たちから見れば完全な第三者であり誠実な人物として高く評価されている。さらにユウはデナグと一切交流がなかったため現地宗教勢力すら彼に対して好意的だった。もし私や他の人物がこの任務を担っていたら決してうまくはいかなかっただろう。なぜならハの国統一戦争では私自身も含めて誰もが加害者であり同時に被害者でもあるのからだ。


 そんなことを振り返りながら私は執務室で日々提出される復興書類に目を通し始め珈琲を口にしながら静かにこぼす。


ミコト

「相互理解を重ね、互いに妥協点を見出さなければ、待ち受けるのは果てしなき暴力と憎悪の連鎖だけでなく国家の崩壊ね」


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