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ある日覚醒した聖女の力、殺すしか能が無い!  作者: 村右衛門
第二章 緊戦前線の入学式
23/37

――即戦――

お久しぶりです。また投稿を再開します。と言っても、もうすぐこの章も完結しますので、あまり長くは投稿できないと思いますが、ご了承ください。

今日から、毎週投稿となります。毎週月曜日の夜七時を予定しています。是非、毎週ご覧いただければと思います。



「何故、お前がここに立っている……」


「教えて欲しいのか?」


 ここに、王国最強が降臨する。

 スーディアは確かにここに立っていた。


「お前は確かに古代魔術で動きを封じたはずだ!」

「その通り。しかし、その対抗策を用意しない私ではない」


 そう言って、スーディアは自分の胸を軽く叩く。

 スーディアは、自らの身体に魔術を刻み込んでいる。体が一定時間の間魔力を帯びたままであった場合、その魔力を強制的に排除する術式を。


「古代魔術であっても、結局は魔力を使用する。その時点で私の動きを封じることは出来ない」

 そう言いながら、スーディアは革靴のかかとで地面を叩き、錬金魔方陣が生きていることを確認する。いつでも魔術を行使できる状況だ。


「ヴェニータ君、改めて状況を」

「はい―――これは宣戦布告だそうです。彼は自らを〝聖女〟を信奉する者、と」

「成程」

「それから、彼は()()()()()()()()

「ほお、そういうことか」


 スーディアはヴェニータの説明を聞いて、全てを理解する。

 スーディアは、一を聞いて十を知る。そして、千を行う。



「委細承知した。宣戦布告を受諾しよう」

「なっ!! お父様!?」


 スーディアが宣戦布告を受諾する、との返事を返したことにチトリスは驚きの声を上げる。他の生徒会役員も同様だった。

 この状況で、宣戦布告を受諾できる、というのが王国最強である証左でもある。宣戦布告をされようが、全く動じない。何故なら、王国最強はどのような戦いでも負けないからである。



「こちらの思惑も何も知らないで、受諾するとは……」

「では、思惑を馬鹿正直にここで話せばいい」

「するわけがないだろう」


 言葉を交わすだけだ。

 それだけで、威圧感が場を占拠した。生徒会役員として選ばれ、学生の頂点に座する者たちでさえ、不可侵を保たざるを得ない。この状況に干渉できるものはいない。




「はぁ……問答は無駄だ。宣戦布告を受諾するのだろう? ならば、私はここに用事がない。一刻も早くこの場を発たせてもらおう」

 フルグルカが一歩後退る。その瞬間に、声が響いた。


炎斧(帰すとでも?)―――」


 魔力構築は一瞬だ。

 その一瞬で、炎で形成された斧が、フルグルカを圧し潰した。

 グシャリと嫌な音がして、フルグルカが紙くず同然に吹き飛ぶ。


「ガッ……宣戦布告を受諾する、んじゃ……なかったのか!!」

 


―――フルグルカの身体が、再生していない!!



 チトリスが異変に気付く。

 先程まで、ヴェニータの魔術をいくら受けてもその体が再生し、実質的な無効化を果たしていたフルグルカの身体が、スーディアの魔術を受けてなお、再生せずに損壊しているのだ。


「ああ、言った。であるから―――、」

 スーディアは次の魔術の準備をしながら、言葉を紡ぐ。それは最早、一人の魔術師の言葉ではなかった。それは、神の裁定の言葉だ。



「ここで、戦いを始めよう」


 その言葉が合図となるように、スーディアの周りで魔素が蠢動し出す。

 たしか、チトリスはミティの魔力量に恐れをなした。しかし、スーディアは更に上だ。人間が本来なら到達できないはずの、圧倒的な極地。それが、スーディア・クラディエルである。



「―――炎鎧」

 フルグルカとの距離を詰めながら、スーディアは詠唱を述べる。

 同時に、炎がスーディアを覆った。スーディアに害成すことなくスーディアを護る、炎の鎧だ。スーディアの周りの空気が熱で歪み、拉げた。



「クソッ、こんなはずじゃ……条件設定・動作停止(STOP)!!」


 はじめにフルグルカが使ったものと同じ、古代魔術。

 しかも、スーディアのみを対象とすることで、大きな負荷の代償にその効果の精密性を上げた詠唱。本来なら、スーディアの全身の筋肉だけではなく、心臓などの臓腑までもが動作を止め、死に絶えるはずだった。それほどの魔術だ。


「効かないな」

 一言だけだった。

 スーディアの一言が、フルグルカの魔術の破綻を示す証左となった。

 魔術が発動してなお、スーディアは生きている。その口は動いている。


「何なんだ、さっきから!!」

 フルグルカが、目の前の理不尽に声を上げる。

 本来なら絶対的な効果を発揮するための古代魔術が、スーディアには二回も破られているのだ。


 ここは、スーディアの独壇場となり果てていた。

 学生の中の精鋭である生徒会役員でさえ、その中の最強であるヴェニータでさえ、スーディアの戦いには参加することが出来ない。

 自分たちが入っても何もできないことが、分かるほどには能力が卓越しているからだ。



形型設定・焔矢射出(BLAZE)ッ!」

「碧流―――」


 古代魔術は、その圧倒的な負荷を代償に、現代的魔術に対する優越性を持っている。

 魔術が魔術であるからこその圧倒的な違いだ。

 しかし、スーディアとフルグルカの間には、魔術同士の差を埋めて余りあるほどの、大きな差があった。


 焔で形成された矢がスーディアに迫る―――前に大いなる碧い川流がそれらを洗い流した。

 陳腐が過ぎるが、圧倒的というほかなかった。

 フルグルカは、スーディアに勝つことが出来ない。



破砕確定(BREAK)ッッ!!!」

「―――現実への干渉が足りないな、バランスが悪い」


 先程まで、スーディアがいた地面が、爆轟音を上げて砕け散る。

 破片の陰で、スーディアはフルグルカに迫っていた。

 フルグルカの腹に、打突が食い込む。


 これは、魔術ではなかった。純粋な体術だ。

 フルグルカは常にスーディアの魔術を警戒していた。だからこそ、この体術は避け切ることが出来なかった。

 

 空気が一気に外に押し出される感覚。

 同時に、口から空気が溢れ出る。



「宣戦布告をするには戦力不足だな」


「何も、お前に布告したわけではないッッ!!」


 この瞬間にも、フルグルカの古代魔術とスーディアの炎魔術がそれぞれ拮抗を見せている。


 フルグルカは確かに強い。

 純粋に戦うなら、チトリス一人では難しい。ヴェニータ一人で対応できるぎりぎりのラインと言ったところだろう。


 だが、フルグルカ一人にならばヴェニータ一人で勝てるということだ。

 スーディアなどを封じ込めるだけの策があったとはいえ、生徒会役員全員を相手取ることはほぼ確定している状況でフルグルカ一人が駆り出されるだろうか。

 


「成程、お前は捨て駒か」

 ふと、炎を操り、打突を繰り返すスーディアが言った。

 フルグルカの表情が歪む。


「なっ……! そんなはずが―――」



 確かに、フルグルカは死なないための手札を持っている。それも、確立された手札だ。

 しかし、そうだとしても生徒会役員を相手取るには不足だ。どうやっても、勝てない。


 ならば、フルグルカが捨て駒だと考えるのが妥当だろう。宣戦布告のためだけの捨て駒。と言っても、捨てきれない捨て駒である。



「なら、そうか……方策を変えよう」

 スーディアは一瞬の逡巡の後にそう言って一歩後ずさった。

 猛攻から一時的にでも逃れられたフルグルカは受けたダメージを少しでも回復するため、肩で息をしながら態勢を整える。



「二人共、こちらへ」

 そう言って、スーディアはチトリスとヴェニータに対して手招きをする。

 生徒会役員が誰も動けていない中、声を掛けられた二人はハッとしたようにスーディアのところへと駆ける。


「お父様」「スーディア師匠(せんせい)

 二人がスーディアに声を掛ける。

 スーディアが頷きを返した。



「ヴェニータ君、あれを頼めるか?」

「ええ、お任せください」



「■よ、その慟哭を呑み込み、■を時空に祝福として押し付けよ―――」


 ヴェニータの詠唱が紡がれる。

 前回の濃密な殺気とは打って変わって、怖いほどの静謐だった。



■の権能を我が手に(詠唱完了)―――時■空■」



 その瞬間、空間が切り取られた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。


知り合いなどに勧めていただけると、広報苦手な作者が泣いて喜びます。


いいねや評価、ブックマークなどもあります。是非、気が向いたらボタンを押すなりクリックなり、していってください。


次回はちょうど新年の投稿になりますので、新年と共に投稿するため、午前零時に予約投稿してあります。午後七時、というように先話で書いておきながら午前零時になるのですが、新年なのでその日ばかりはお許しください。

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