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ある日覚醒した聖女の力、殺すしか能が無い!  作者: 村右衛門
第二章 緊戦前線の入学式
13/37

――学園――

この小説だけを読んでます、という方はお久しぶりです、村右衛門です。

サンチェスシリーズも一章を書き上げ、ひと段落つきましたので、絶死の権能シリーズの投稿を再開いたします。是非、両作ともお楽しみください。


※この話からはいわゆる神様視点でお送りします



―――王立魔術学園―――


 

 貴族の子息や令嬢が社会に出て行くに際して、必ず通らなければならないと言っても過言ではないのが、これである。

 王立魔術学園の学生であった時代を持つ、というのはマルティアル王国での貴族の証明でもあった。それほどに、マルティアル王国における王立魔術学園の存在は重要である。


 

 その王立魔術学園に、チトリス・クラディエルも入学することになっている。

 マルティアル王国の魔術界における頂点に位置していると認識されるクラディエル公爵家の令嬢ならば、王立魔術学園に入学しないなんてことはあり得ない。


 現当主であるスーディア・クラディエルも、少年期から青年期にかけては王立魔術学園に通っており、様々な伝説を打ち立てていた。




  ◇




「―――お嬢様、準備はお済になりましたか?」

 チトリスの専属侍女であるメアリがチトリスに尋ねる。

 今日は、一日を通して行われる王立魔術学園の入学式の当日であった。


 王立魔術学園は貴族の子息令嬢が通う学園であることも有り、入学式は一日を通して宴会のようにして行われる。

 そこには国王や王族も当たり前のように臨席し、国を挙げての一大行事として行うのだ。


「ええ、全て終わったはずよ」

 チトリスがふふん、と胸を張るが、もう少しお淑やかに、とメアリに窘められてしまった。


「では、王立魔術学園に参りましょうか」


「そうね」


「表に馬車を用意しております」



 チトリスが邸宅の外に出ると、ひゅうとから風が吹いた。

 うう寒い、とチトリスは体を震わせる。

 二週間ほど前、ダモニア王子の襲撃事件があってから、損壊した邸宅や焦げた庭などはすっかり綺麗になっていた。これが公爵家の力である。

 あの頃は寒くなかったのに、とチトリスはもうすでに過去になってしまったあの事件を思い出す。


「掛毛布を用意しておりますので、馬車に乗ってから用意しますね」


「お願い、思ったより寒かったみたいだわ」


 準備の良い侍女を持ってよかった、と思いながらチトリスは用意されていた馬車に乗り込んだ。



 馬車に揺られて一時間と少し、王立魔術学園に到着する。


 王立魔術学園は王都に存在する。

 クラディエル公爵家の領地からは近いとも遠いとも言いにくいような距離だった。



「では、私どもはここまでですので」

 そう言って、メアリと侍女はチトリスを送り出し、入学式後に宴会の行われる会場へと先に向かった。

 これから式典的な入学式が行われるのだ。

 しかし、王立魔術学園の入学式は式典的な入学式が全てではない。

 それどころか、その後に行われる宴会形式の入学式の方が時間を多く使い、注目されているのだ。



 式典的な入学式が恙無く進行されていく。


「―――国王陛下より、お言葉を頂戴します」


 国王が―――ヴァンハルト・ル・ヴィ・マルティアルが壇上へと上がる。

 それだけで、会場には拍手が満ちた。


「ここに集っているのは、将来貴族となり、魔法界を牽引するであろう人材ばかりだ。皆、同年代との関わりを以って研鑽を積み、これからの時代を担って行ってくれることを期待している」


「―――将来、貴族となる君たちがこの王立魔術学園に入学してきたことを国王として心から祝い、ここに祝辞として言葉を残す」


 歓声と拍手が、会場を満たす。

 国王が、降壇した。短い言葉だったが、その威厳からか、これでこそ国王の言葉だと感じさせる何かが、国王の言葉にはあった。


「では、次に――――――」



 式典的な入学式は着々と行われていった。

 そして、式典的な入学式は終わり、宴会形式で行われる入学式へと移行する。




  ◇




 チトリスを含め、新入生は全員、騎士の護衛の下で宴会場へと移動した。

 そこには既に新入生の保護者である貴族や給仕を行う侍女たちが揃っていた。他にも、在校生の一部も入学式の運営のために参加している。

 そして、王国最強の魔術師であるスーディア・クラディエルもその中にいた。


 新入生の生徒は、王国最強を一目でも見てみたいと視線を左右に泳がせている。

 

 

「では、ここからは立食形式のパーティーとなります。次の準備が終わりますまで、ご歓談ください」

 案内のアナウンスを聞いて、新入生たちがそれぞればらけはじめた。


 一旦は保護者と合流しようとする者。

 食べ物に向かって行く者。

 打算的にほかの貴族などと関わろうと話しかけに行く者。


 十人十色である。



 そんな中で、チトリスは多くの新入生に囲まれていた。

 

 クラディエル公爵家はその名の知れた、高位貴族である。クラディエル公爵家と少しばかり関わりを持っておくだけで箔がつく、とチトリスの周りに人だかりができるのも、当然と言えば当然であった。


「チトリス様、私ウェディ子爵家の―――」

「チトリス嬢、俺はレラティス男爵家の―――」

「チトリス様、僕はヴェニス侯爵家の―――」


 四方八方から声を掛けられ、チトリスは笑顔を振りまくだけで精いっぱいだった。

 耳がいくつあっても足りないほどだ。


「えぇっと、出来れば一人ずつ……」

 チトリスの訴えも虚しく、人だかりは消えることがない。

 どうにか、この場から脱出できれば、とチトリスは画策するが、四面楚歌のようだと少しして気付く。逃げ場など、あるようには見えなかった。



 しかし―――、

 突然、喧騒が二分された。



「―――私の娘は何やら人気者のようだ」


 整えられた金色の長髪を後ろで括り、クラディエル公爵家の象徴である深緑のコートを羽織った男が、喧騒の中央へと入ってきた。

 その胸には白いネクタイを結び、ワンポイントとしながら赤いルビーのネクタイピンがチトリスの胸につけられたルビーのブローチと共に光る。


 妻子持ちの年齢であるというのに、美青年という言葉が誰よりも似合う男、それでいて、王国最強の名を冠し、多くの伝説を打ち立てた、スーディア・クラディエルが、ここに居た。



 周りの令嬢からは黄色い悲鳴が上がる。一人か二人は眩暈を起こしたようにふらりと脱力していた。

 令息は王国最強を間近で見て、興奮を抑える事も出来ていなかった。



 ここに、クラディエル公爵家の親子が揃う。

 


 それだけで、周りからは歓声と拍手が上がった。

 それほどに、クラディエル公爵家は注目されている。次代の王国中枢部を担う、などという言葉では生ぬるい。総てを勝ち取っていくであろう、一族―――それがクラディエル公爵家だった。



「チトリス、もう少しで選抜試合が始まる。準備をした方が良いだろう」


「そうですね。では、行って参ります」


「ああ、期待しているよ」


 

 先ほどまで、チトリスを囲っていた人だかりが、いつの間にか少し距離をとっていた。

 チトリスが他の場所へと向かって行くが、人だかりはついて行かない。

 誰もが、チトリスなりスーディアなり、どちらでもいいから声を掛けたいと考えている。それでも、それは出来ない。チトリスとスーディアが揃ったことで、その不可侵性は上がってしまった。

 これこそが、聖域なのだと、未来の貴族は一様に理解した。

 この場に、自分たちは足を踏み込んではいけないのだと。



 次のイベントが始まる。



最後まで読んでいただきありがとうございます。


知り合いなどに勧めていただけると、広報苦手な作者が泣いて喜びます。


いいねや評価、ブックマークなどもあります。是非、気が向いたらボタンを押すなりクリックなり、していってください。


次回投稿

「――試合――」

11月30日午後七時投稿予定です。

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