表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

ストーカーされるの回


つきまとい等とは

「ストーカー規制法」では、恋愛・好意の感情やそれが満たされなかったことによる怨恨の感情から、特定の者に対して行う、次のような行為を「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」と規定し、規制しております。「つきまとい等」とは以下のような行為です。

つきまとい、持ち伏せし、進路に立ちふさがる、住居等付近において見張りをする、住居等に押しかける、住居等の付近をみだりにうろつく。

行動の監視をしていると思わせるような事項を告げる。

面会、交際その他の義務のないことを要求する。

粗野又は乱暴な言動をする。

無言電話をかける、拒まれているのに連続して電話等をかける、文書を送付する。

汚物、動物の死体その他不快な物を送付する。

名誉を害する事項を告げる。

性的羞恥心を害することを告げたり、これらの文書などを送付する。


栃木県警HPより



 唐突な話ではありますが、ポルノ映画館ってご存じ? 街に溶け込み、住宅街にいきなり現れるエロポスター。びびる。さらに特徴的なのは、そのポスターは「絵」なんだよね。現在、巷でよくある萌え的な可愛い感じではなくて、ハードボイルドタッチ? みたいな。劇画風? みたいな。


 この街にあったそれは、この地域で唯一のポルノ映画館であり、女装した方々の楽園であり、「ハッテン場」としても有名だった。ネットで検索しても、それはそれは刺激的な内容で、思わずむせ返るほど。


 当時の私は、そこまでの特殊エリアとは知らずに、異次元とは知らずに、ただのエロ映画館だと思っていた。ただのエロ映画館て何? て話だけどさ。そして、そこには仕事として訪問していた。


 そのポルノ映画館の受付には歳の頃40代~50代前半くらいの女性がいた。顔は今となっては記憶に乏しい。普通のおばさんくらいにしか記憶にない。その程度の認識だった。別に直接、話をすることもないし。


 その女性は、たまに顔を出す私に餌付けをしだした。どういうことかというと、たまに顔を出す私に売店で売っているパンや缶コーヒーなんかを渡してくるようになったんだ。ちなみに、同期の奴も用事があって訪問した際に、同じように貰ったと言ってたから、ただの気のいいおばちゃんかと思って何も気にはしていなかった。同期は怖くて、食べずに捨てたとは言っていたが。


 それだけで終わるなら、よくあるほのぼのエピソードではあるが、こんなんでは終わらない。


 ある日の夜、会社に戻ると事務方から伝言。「名乗りはしなかったが、緊急の用事があるとのことで電話をしてほしい 相手はそう言えばわかるからと言っていたぞ」と、携帯番号のメモを頂いた。何事かと思うよね。何も身に覚えがない。クレームでもないはず。何もあるはずはない。そして、知らない番号。


 気になった私は、すぐさま電話をかけた。この時に自分の携帯ではなく、会社の電話でかければ良かったと本当に後悔している。


「もしもし、私ですが。至急、お電話をするように申し伝えられました」


「私が誰か分かる?」


 えっ?何?怖い。女性だ。


「すいません、わかりません。緊急の用事とのことでしたが」


「そう、緊急 お話をしようと思って。声を聞いてもまだ分からない?」


 分かるわけない。いったい誰だ?


 そんな「私は誰でしょうクイズ」に付き合わされ、帰社後は特に忙しいのに、電話を切れない。


「そろそろ仕事がありまして、要件がないならお切りしますがよろしいでしょうか?」


「しょうがないから教えてあげる。あの映画館のね……受付の……」


 はい?意味が分からない。もうね、本当になぜこうなったのかが分からない。なぜ、あの受付のおばさんが緊急の用事があるといって電話をかけさせてるのか。なんでまともに話をしたこともないのに、どうしてこうもフレンドリーに会話をしてくるのか。


 そして、それからは一方的に相手のターン。


「私はいい家の生まれなの」

「本当はあんな映画館で働いているような人じゃないの」

「色々あって仕方なく働いているの」

「本当の私は違うの」


 大体、このような感じの話をずっとお話しされて40分。なんだろう、この感じ、まじで怖い。とりあえず、その日はなるべく穏便に、刺激せず、丁寧に電話を切ることに専念した。翌日から、電話がくる。電話がきまくる。勘弁して頂きたい。あの時の私、なぜ会社から電話をかけなかった。時間よ戻れ。もうそれからはお決まり?の着信の嵐に無言電話。着信拒否にすれば非通知でくるし、当然のように非通知拒否にしているので非通知の履歴だけが溜まりまくる。


「ああ、これがストーキングされるってことなんか……」


 幸いなのかどうなのか、家はバレてないし、おばさん個人での直接の取引もないから、最低限の身の安全性はあったけど。ただ、まあ、携帯を見るのがトラウマになるレベルでの着信履歴。


 最終的には、数カ月してから、きちんと電話に出て話をした。

タイミング的には集合研修で同期が集まって、研修所で泊りの日に、酔った勢いで。


「もうやめてくれませんか?」


「何を?」


 しらばっくれるおばさん。


「気持ち悪いんですけど」


 そういうと、突然ぶち切れた。


「なんであなたにそんなこと言われなきゃいけないの?」


 なにそのセリフ。ていうか私しか言うべき人いなくね?


「今は違う場所にいるから(今研修中で)」

「○○支店には今いません(明後日まで)」

「もうお会いすることもないでしょう(もう、それは絶対に)」


「プチッ、ツーツーツー」


 おいおいおい、こんなんでいいの?これで終わり? でも……、助かった。


 その後、着信も非通知もくることはなかった。あっけない幕切れ。何が正解だったかわかんないけど、こういう終わり方もあるんだと思った。会話をしたことで今回は良かったけど、会話をしたことで悪化することもあるよね。良くも悪くも、ドラマチックな展開も泥沼な展開もなかった。が、そういうドロドロは、また違うお話であるんですよ。


 別の修羅場のお話が。






次回予告、包丁の切っ先がこちらを向く!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ