恋愛対象の回
社内結婚
読み方:しゃないけっこん
別表記:職場結婚
同じ会社内の男女が婚姻関係になること。
実用日本語表現辞典より
証券マンの朝は早い。支店がどこにあるか、寮・借り上げ社宅がどこかにあるかにもよるが、住む場所と、配属先の運が悪ければ始発。色々と噛み合い、余裕がある人でも6時半には家を出る必要がある。
証券マンの夜は遅い。支店のノルマの出来不出来や、相場状況などにもよるが、運が悪ければ22時、普通なら20時の帰宅で早いとされ、大体は21時くらいまでは帰宅は出来ないところがほとんどだった。
証券マンに休日はない。運悪く、支店のランキングが下位、もしくはノルマの達成が無理目な支店に配属されている時は、平日だけではもう取り返しがつかないからと、ほぼ強制で休日出勤が課される。まとめて睡眠の取れる貴重な時間が消滅する。もう、なんの為に生きているのか分からなくなる。これが続いた時、世の中の流行や話題な物などは記憶から無くなる。てか、最初から知らない。
大体において、数字の進捗次第ではあるが、毎日のように色々な締め切りがあるので、やることは山盛りであり、拘束時間はめちゃめちゃ長い。もちろん、手ぎわのよい優秀な社員はいるが、大抵は出来ない人に合わせることなる。
「終わってる人が早く帰りたかったら、終わってない人の分までやってくれよ」
このような、駆け引きみたいな、なすり付けあいみたいな、何の生産性もない時間が夜にはある。出来ない人に、夜に絞り出させようとしたってやる気も気力も見込みもないんだ。無理だって。仕事のできない人のほとんどは、追い詰められてやっとやる気になる。それがみんな分かってるから、できる人もいちいち助けない。くせになるからね。
私は、基本的には自分の仕事はさっさと終わらせる方だったので、夕方に商談と称して外出しては、仮眠を取っていた。その時代は、クルマで寝ることに慣れたもんだった。でもさ、寝れるは寝れるけど、ちゃんと疲れなんて取れないよね。中途半端に起きて、少し寝て、電話が来れば出て対応するし。今じゃ、車内で寝ることは無理かもしれん。硬いもん。
その行動自体は、れっきとしたサボりではある。でも、朝から晩まで頑張れるわけないって。集中だって続かねえって。
そもそも、朝から晩まで支店に監禁される環境で、正味の睡眠時間も少ない状況で、数字に追われる激務で、間違えられない緊張感もあり、上司たちは、常にガミガミと五月蝿く詰めてくる。……洗脳だったのかな? ……もうこれは洗脳だよね? 怖っ。
話が逸れた。朝は朝で会議。夜は夜で、ダラダラと終わりのない苦痛な時間。こういう生活していると、自由な時間がなくて、出会いがないんですよ。男女ともに、出会う機会が圧倒的に少ない。
合コンとかいう、陽キャイベントは私たちがドロドロに疲れすぎていて、開催不可になることがある。もしくは、たまたま募集物が終わらずに、支店から解放されないバッドデーになってしまい、予約していた開催時間を大いに超過しドン冷えの空気で開催とかもあった。こんなんじゃ、まともな出会いに巡り合わない。こちらの気持ちがスパークしない。
例外として、就職する前から付き合っているならね。まあ彼氏、彼女がいるのもわかる。けど、支店配属組になると、どこに配属されるかわからんし、大概はそのカップルは遠距離ばかりにはなるよね。ざまあ。
で、どうなるか。社内でくっつく可能性が高まる。社内恋愛、社内結婚、社内不倫、すげぇ見た。そんばんばっか。
私も社内恋愛の経験はある。でも、そんなに長くは続かなかったな。まさかの、遠距離社内恋愛……無理やて。あっ、まったく関係ない話だった。
そもそも、ある程度の学歴の男女が集まり、同じ境遇で苦楽を共にし、同じ釜の飯を食う仲だ。毎日顔を合わせ、たまには歓送迎会等でお酒を共にすることもある。もう、しょうがないよね。しょうがない。もうその選択でいいのか、悪いのか、本人たちも分からんくなっちゃってる。
無事に結婚しても、証券業界は離婚率が激高っつう話なわけ。
そりゃ、家にいないし、何も出来ないし、寝るだけだし。子供がいても、寝てる間に出社し、寝てる時間に帰宅し、学校の行事には出れず、重要行事である入学式や卒業式にも休みは取れず、有給なんて言葉も忘れ、ただただ働きアリのような日々。
証券マンって、世の中のイメージと違い、残念な人たちだよね……