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897話 ご先祖様は最終確認をする 【シリア視点】

明日からは最終章開幕となります!

ここまで読み進めてくださった皆様に、深い感謝を……!!

どうぞ最後まで、シルヴィ達のお話にお付き合い下さい!

 レナをVRルームに送り込み、様子を見守りながら魔道具の調整に入っていた妾であったが、それもものの数分で中断することとなった。


「し、シリア……。終わった、わよ……」


「む? もう五十本終わったのか。ほんに異なる時間の流れという物は勝手がつかんな」


 回帰の魔法を受けているにもかかわらず、ふらふらとコントロールルームへ戻って来たレナは、まさしく疲労困憊と言ったところか。

 そのまま壁を背にずるりと座り込むレナに、妾特製の栄養ドリンクの入った水筒を放り投げ、レナのシミュレーション結果を開く。


「ふむ……。十三勝三七敗か、ちと芳しくないな」


「最初の方、全然思うように戦えなくてさ……。でも、終わりの方の五連勝は、感覚戻って来たのよ」


「くふふ! かなり無茶を強いたとは自覚しておったが、明日いきなり本番といかんで良かったな! 感覚も取り戻せずに挑もうものなら、初撃で死んでいた可能性すらあるぞ?」


「ほんとよ……。あの鎌が体の内側に刺さる感覚、トラウマになりそうだわ」


 レナはそう言いながら、やられたであろう横腹を軽く擦る。

 簡単なリプレイにさっと目を通すと、それはもう散々たる負け方であった。

 じゃが、これだけ手酷くやられ続けていたにもかかわらず、戦意を喪失しなかったと言うのは褒めてやるべきか。


「うむ。三カ月ぶりとは言え、良く戦えている方じゃ。先に飯にするか? すぐに用意させるぞ?」


「いや、もうちょっと休んだらまた戻るわ。忘れないうちに、体に勝ち方を覚えさせたいの」


「そうかそうか。向上心が高いことは良き事じゃ。ならば、セリをここに待機させておこう。何かあった時には、先に教えた中断で戻ってくるがよい」


「シリアはどこか行くの?」


「うむ。妾もこの後は、魔道具の最終調整と龍脈の乱れの確認、さらに王都を覆う結界の調査をせねばならんからな」


「え、時間足りるの? もう夕方でしょ?」


「明日の作戦開始までは、あと十六時間もある。それだけあれば回りきれようよ」


「それ、シリアが寝る時間含まれてる? すっごいクマだけど……」


 レナが妾の顔を見ながら、不安げに尋ねてくる。

 確かに当分寝てはいないが、まだ行動に支障が出るほどでは無いはずじゃ。魔力も温存しながら動いているつもりじゃから、あと半月はいけるじゃろう。


「なに、妾のことは気にするでない。今はお主自身のことだけを考えよ。明日の作戦の要となるのは、お主とエルフォニアなのじゃからな」


「それはそうかもしれないけど……。無理はしないでよ?」


「くふふ! 肝に銘じておこう」


 レナは諦めたように笑い、すくっと立ち上がる。

 そのまま妾に水筒を返しに来ると、その中身について感想を述べた。


「にしてもこれ、すっごい効き目ね。あたしの世界の栄養ドリンクなんて目じゃないくらいだわ」


「これは連日五十人以上の患者を捌き続けていたシルヴィが、一時期中毒になりかけるほどの代物でな。体内の疲労蓄積値をリセットし、活性化させるという効果じゃ。念のためもう一本用意はしておくが、これに頼りきりになるではないぞ?」


「あはは! そう言えば開院当初は休む暇が全くなかったってシルヴィが嘆いてたっけ。その時の栄養ドリンクってこれのことだったのね。ありがと、助かるわ」


 レナは「それじゃ、また行ってくる!」とVRルームへ戻っていった。

 前々から前向きな奴ではあったが、今のあ奴からは以前にも増して生きる気力が溢れておる。

 レナのいた世界で、何かいい経験でもあったのじゃろうな。と小さく笑い、妾も成すべきことを終わらせるために部屋を出る。


 ウィズナビでセリにメッセージを送りながら、指輪を通してメイナードを呼びだすと、メイナードは即座に召喚に応じて妾の前に姿を現した。


『ご出発されますか、シリア様』


「うむ。先に王都の結界から見に行くぞ。肩に乗れ」


『御意』


 メイナードはポンッと煙を出しながら体を縮小させ、妾の肩に飛び乗る。

 修道女服に着替えてから転移で王都近郊まで飛ぶと、妾の視線の先に見覚えのある連中が入って来た。


「うっし。これで明日は何とかなりそうだな」


「もうクタクタよ~……。でもこれを乗り越えた先の幸せを考えれば頑張れそうね!」


「あぁ。俺達もシルヴィには助けられてるんだ。その礼はきっちり返さないとな」


「囚われのお姫様を助ける、冒険者。おとぎ話みたい」


「まっ、元の姿だったら最高の絵面だったかもしれないけどね~。今じゃこーんな幼女になっちゃった変態だからねぇ」


「好きでなったんじゃねぇよ!!」


「あら? でもシルヴィちゃん達に看破されてたじゃない。一人えっちし過ぎて、もう戻れなくなったって……」


「やめろやめろ!! その話をこんな開けたところでするな!!」


「なんぞ騒がしいと思えば、やはり貴様らか」


 溜息交じりに声を掛けると、騒いでいた連中――ドリームチェイサーの面々は、若干嬉しそうな顔を浮かべながら振り向いた。


「あ、シリアちゃん! お疲れ様~……って、すっごい顔!? どうしたのそれ!? 何日寝てないの!?」


 テオドラまでに言われるとはな。そこまで酷い顔なのか?


「ひと月程になるかのぅ」


「ひと、え!? 一か月寝てないの!? 何で生きてるの!?」


 なんじゃこ奴は。いきなり不敬な奴じゃな。


「妾は神じゃぞ? ひと月程度不眠不休であろうと、問題なく動き続けることくらいできる」


「いやいや!? 当たり前ですみたいに言われても、私達から見たら異常だから!!」


「私は、四日が限界だった……。コツが知りたい」


「ユニカ、これは張り合ったらダメな奴だぞ?」


「くふふ! 望むなら寝ずに動くコツを教えてやらんでもないが、それはまた今度じゃな。して、お主らはここで何をしておったのじゃ」


「あぁ、俺達は明日のためにルートの最終確認をしてたんだ。明日、いざ決行! って時にあの兵士共がうろついてたら邪魔だろ?」


「うんうん。それで地下水路と王城への裏道までの雑魚処理をしてたってとこ!」


「ほぅ、殊勝なことじゃな。ならついでに尋ねるが、結界の方はどうじゃった?」


「結界も特に変わった様子は無かったよな?」


「変わってない。普通の人は触れないし、王都への門も兵士が守ってる」


 魔族のユニカがそう言うのであれば、恐らく造りに差異は無いのじゃろう。

 あとは中の兵共がどれほど待機しているかじゃが、こればかりは蓋を開けてみんことには分からんじゃろうな。


「うむ、それならば良い。では明日、朝九時に予定通り決行せよ。先鋒であるお主らの働き次第で、後続の妾達の動きが大きく左右されることを、ゆめゆめ忘れるでないぞ?」


「任せてよ! バッチリ陽動してみせるから!」


「あぁ! だからシリア、シルヴィのことを頼んだぞ?」


「くふふ! 言われずとも分かっておるわ、小童(こわっぱ)共め!」


 この様子ならば、王都の結界は見なくともよさそうじゃな。

 予定を変更して、龍脈の調整に入るとするか。


「メイナード、ちとひとっ飛びしてくれぬか?」


『王都はよろしいので?』


「うむ。仮に何かされたとしても、それを想定した上での火力調整は出来ておるからな。本番で多少困るのはレオノーラくらいじゃろうて」


『ククク。相変わらず、シリア様は魔王様へは容赦がございませんね』


「当然じゃ。あのような奴に手心を加える必要なぞ無いからな!」


 メイナードは小さく笑うと、肩から飛び降りて元の姿へと戻る。

 その背に飛び乗り、妾はドリームチェイサーの面々に別れを告げた。


「では、明日は頼んだぞ。成功した暁には、また何か見繕ってやろう!」


「本当かよ!? 流石だぜシリア!!」


「あ、私綺麗なアクセサリ系の魔道具がいいでーす!!」


「私も」


「なら俺は、衣装がいいな」


「え、シュウそれから着替えるの!?」


「気分で変えたい時もあるだろう」


「くふふ! 何でも言うが良い、大抵のものなら作ってやれるからな!」


 その言葉を最後に、妾はメイナードと共に空へと飛び立つ。

 レナも帰って来た。エルフォニアも目を覚ました。

 レオノーラの軍の準備も万全で、冒険者共のクーデターで王都の混乱は継続中。今のところ、全て順調じゃ。


 あとは明日、しくじらないように立ち回るだけじゃ。

 待っておれ、シルヴィ。ようやく迎えに行けるからな。

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